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【解説】“オミクロン対応ワクチン”…ファイザー製・モデルナ製の違いは? ワクチン接種どう変わる?

2022年8月11日 10:34
【解説】“オミクロン対応ワクチン”…ファイザー製・モデルナ製の違いは? ワクチン接種どう変わる?

今週、厚生労働省は、10月半ば以降の新型コロナワクチンの追加接種について、“オミクロン対応ワクチン”に切り替えることを決めた。ファイザーとモデルナがそれぞれ開発した新たなワクチンは、これまでのワクチンとどう違うのか?新しいワクチンと、新たなワクチン戦略を解説する。

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■“オミクロン対応ワクチン”ファイザー製、モデルナ製 違いは?

厚生労働省の予防接種ワクチン分科会は、今月8日、今年10月半ば以降の追加接種で使用するワクチンを、従来株とオミクロン株の両方に対応するよう改良した「2価ワクチン」に切り替えることを決めた。どのようなワクチンなのか。

開発は、ファイザーとモデルナがそれぞれ行っている。ファイザーは今月8日、早速、厚労省に承認内容の一部変更を申請し、10日、モデルナも同様に承認申請を行った。両社の新しいワクチンは、いずれも、従来株とオミクロン株のBA.1に対応したタイプだ。

ファイザー製の2価ワクチンの臨床試験では、4回目接種で、従来ワクチンを使用した際と比較して、オミクロン株のBA.1への中和抗体の量が約1.56~1.97倍に上昇することが確認されているという。また、オミクロン株のBA.5とBA.4の中和抗体についても、BA.1の中和抗体よりは低いものの、従来のワクチンよりも一定の上昇はみられ、有効性は確認されているという。

一方、モデルナ製の2価ワクチンは、4回目接種で従来ワクチンを使用した際と比較して、オミクロン株のBA.1の中和抗体の量は約1.75倍に増え、さらにオミクロン株のBA.5とBA.4の中和抗体について、約1.69倍の量に増えることが確認されているという。

いずれのワクチンも薬事承認されれば、9月には日本に十分な量が供給されることになっていると厚労省は説明しており、自治体の接種体制が整う10月半ば以降に、接種が始まる予定だ。

■新たなワクチンを待つ?今のワクチンすぐ打つべき?見解は

オミクロン株に有効なワクチンがまもなく接種できると聞くと、いま3回目や4回目のワクチン接種を検討している人は「待ちたい」と思うものだ。実際にどうすべきなのか。

厚労省の予防接種ワクチン分科会では、「いま4回目接種の対象となっている人は、いまの従来ワクチンの接種時期がきたら、新しいワクチンを待たずに打つ方がいい」との意見が出た。

そもそも4回目接種は、60歳以上や重症化リスクのある人や、そうした人と接する医療従事者などに対象を絞っているため、すぐにでも接種して重症化や死亡リスクを下げることが、オミクロン株が感染拡大するいま、望ましいという。

一方で、オミクロン対応ワクチンの接種対象者は、追加接種のすべての対象者に拡大する方向で、若い世代や小児など重症化リスクが低い人の3回目や4回目接種などでも使用することが念頭にある。

ワクチンの選定にあたった国立感染症研究所の専門家は、今後のオミクロン対応ワクチンでのワクチン戦略について、「短期と中長期の戦略で、まず高齢者と若い世代はある程度切り分けて考える必要がある」と指摘する。この専門家によると、高齢者は、重症化と死亡を抑えることを考えるため、当面はいまの4回目接種を進めるべきだという。

一方、若い世代については、重症化予防に加えて「限定的でも感染予防効果があるなら、それに期待したい」と指摘する。活発に動く若い世代で多少でも感染予防効果が得られるとすれば、オミクロン株による感染拡大を抑えられるのではという狙いだ。

■秋以降は“集団免疫”のため新ワクチンの接種を

また、専門家の調査では、今後、第7波が収まると、感染によって得られた自然の免疫などが減弱していくと指摘されている。

これをうけて、予防接種・ワクチン分科会の委員からも、次にくる“第8波”に備えるためには、国民の中で一定程度、免疫を保有するいわゆる「集団免疫」が重要で、オミクロン対応ワクチンの接種が始まる秋には、「若い世代への接種は一定程度していく必要がある」といった意見が出された。

今後、4回目接種の対象拡大や、5回目接種をどのように進めていくか、さらに調整が行われる。

■各国で分かれるワクチン戦略…アメリカは別ワクチンを

今後の新たなワクチンについて、従来株とBA.1の2価ワクチンを使うことを決めた日本。実は、新たなワクチンは様々なタイプの開発が進められていた。例えば、オミクロン株のみに対応する「オミクロン株対応単価ワクチン」や、オミクロン株BA.4とBA.5に対応する別のタイプの2価ワクチンなどだ。

日本は、臨床試験の進み具合などから、「利用可能なオミクロン株対応ワクチンに、なるべく早く切り替えることが妥当」と判断した。

日本と同じタイプのワクチンについて、モデルナがすでに承認を申請しているのは、EU、英国、オーストラリア、カナダだ。特に、現在、冬で感染の再拡大を懸念している南半球のオーストラリアでは、新しいタイプのワクチンへの切り替えを急いでいる。

一方、アメリカは、BA.4とBA.5に対応する別のタイプの2価ワクチンを製造するよう、FDA(=食品医薬品局)が勧告しており、流通のタイミングはやや遅れる見通しだが、より流行している株に対応したワクチンを選んだ。

国によって流行の波が異なる中、いつ、どのタイプのワクチンを選ぶのか?今後、それぞれの国のワクチン戦略が分かれることになる。