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【解説】「違法」判断のポイントは? 「大川原化工機」裁判で賠償命令

2023年12月27日 19:32
【解説】「違法」判断のポイントは? 「大川原化工機」裁判で賠償命令

軍事転用可能な機械を不正に輸出したとして警視庁公安部に逮捕され、その後、起訴を取り消された「大川原化工機」の社長らが国と都を訴えた裁判。27日、東京地裁は国と都に、あわせて1億6200万円あまりの賠償を命じる判決を言い渡しました。

この事件の取材を続けている雨宮千華記者に聞きました。

――判決では、捜査のどういった所が違法とされたのか?

日本テレビ 雨宮千華記者
「都、つまり警視庁公安部による捜査については、犯罪が成立するかの判断に必要な実験をせずに逮捕したことが違法だと、まず指摘しました」

「さらに、元役員への取り調べをめぐっては、元役員の意思に反したウソの内容の調書が作られたと認めて、それも違法だと判断しました」

「また、国、つまり検察側については、有罪立証に必要な捜査を尽くさずに起訴や勾留をしたことを違法だとしました」

――裁判の中では、現職の警察官が「事件はねつ造だった」と証言するなど、異例の展開となりましたが、この点については判決で触れられたのでしょうか?

日本テレビ 雨宮千華記者
「このねつ造だという証言は衝撃的だったのですが、判決の中で、事件自体が「ねつ造」とまで言及する内容ではありませんでした」

「ただ、その後の取材で、実はこの証言だけではなく、大川原化工機側には警察内部とみられる人物から会社側は無実だとする内容の手紙や電話が寄せられていたことがわかっています」

「また、日本テレビの取材に応じたある捜査員は、苦しい表情で「あのとき踏みとどまっていれば」とも語っていました。当時、複数の捜査員が捜査に疑念を抱いていたことは確かだったと言えます」

――3人が逮捕されてから3年半がたち、ようやく捜査の違法性が認められたわけですが、これまで大川原社長らはどのような思いで裁判を闘ってきたのでしょうか?

日本テレビ 雨宮千華記者
「取材で社長がよく話していたのは、「無罪よりも無実がほしい」との言葉でした。起訴取り消しになったものの、世間からは「証拠が足りず立件できなかった」と思われてしまう状況にあったといいます」

「大川原社長は、裁判で勝訴することで初めて、世の中に「大川原化工機は潔白だ」と証明できると話していました」

――裁判を通してみなさんが一番求めていたものはなんだったのでしょうか?

日本テレビ 雨宮千華記者
「それは「謝罪」です。社長は、二度と同じようなことが起きないようにするために、まずは過ちを認めることが始まりだと話していました」

「また、勾留中に胃がんが判明し、起訴が取り消される前に亡くなった相嶋静夫さんの遺族は、捜査の違法性はもちろん、体調が悪くなってからも保釈が認められなかったことに疑問を感じています」

「今回の裁判を通して、「人質司法」と呼ばれる捜査のあり方についても、見直されるきっかけになってほしいと話していました」

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