400年ぶり「火葬」両陛下の思いとは…
天皇・皇后両陛下の葬儀やお墓の在り方が大きく変更されることになった。宮内庁は14日、江戸時代から続いてきた「土葬」での埋葬を見直し、400年ぶりに「火葬」にすることを決めたと発表した。歴史的な転換の背景には、両陛下のある思いがあった。
1989年に87歳で崩御された昭和天皇のご遺体は、皇居から東京・八王子にある武蔵野陵に運ばれて埋葬された。昭和天皇の時もそうだったが、これまで葬儀と埋葬の詳細は、亡くなられた後にならなければ公表されなかった。
しかし、14日、両陛下の葬儀と埋葬に関して異例の発表が行われた。宮内庁が会見で明らかにしたのは、実に400年ぶりとなる「火葬の復活」と両陛下のお墓に当たる「御陵の縮小」だった。
大正天皇と貞明皇后、昭和天皇と香淳皇后は、武蔵陵墓地に埋葬されていて、天皇・皇后両陛下も亡くなられた後はここに埋葬される。
大正天皇と貞明皇后、昭和天皇と香淳皇后の御陵は、森林を切り開いてテニスコート16面分ほどの敷地に造られた。これらの天皇と皇后の御陵は別々の敷地に造られていたが、14日の発表で、両陛下の御陵は同じ敷地の中に寄り添う形で造り、大きさも2割ほど小さくすると明らかにされた。
御陵の縮小は、天皇陛下のご意向だという。
土地の問題で平行に造ることができなかった昭和天皇と香淳皇后の御陵をご覧になり、「用地に余裕がなくなっているのではないか」と感想を述べられていたという天皇陛下。御陵を小さくすることで、これから何代かは御陵を造ることができるのではないかと考えられたという。
実は、天皇陛下は今回、同じ御陵に皇后さまも埋葬する「合葬」の意向も示されていたということだが、「畏れ多い」と皇后さまが遠慮されたことを踏まえ、同じ敷地に寄り添う形で御陵を造ることになったという。
また、今回発表されたもう一つの大きな変更点は、両陛下の埋葬方法を「土葬」から「火葬」に変更することだった。
江戸時代初期から昭和天皇まで代々、ご遺体は火葬にされず、土の中に埋葬する「土葬」が続いてきた。しかし、両陛下は、実に約400年ぶりに火葬にすることを決められた。今の社会では火葬が一般化していることや、江戸時代以前は火葬も行われていたことなどから、火葬を望まれたという両陛下。御陵を簡素化する観点からも、火葬にすれば規模や形式をより弾力的に検討できるとのお気持ちもあったという。
火葬になることで、昭和天皇が亡くなられた時とは儀式の流れも変わる。昭和天皇の場合、新宿御苑で皇室行事である「葬場殿の儀」と国の儀式である「大喪の礼」が行われた後、ご遺体は武蔵陵墓地に運ばれ、「陵所の儀」で土葬された。一方、今回発表された内容では、小規模な儀式を行った上で、武蔵陵墓地に専用の火葬場を造り、火葬。ご遺骨となって宮殿に戻られ、その後の「葬場殿の儀」や「大喪の礼」は、ご遺骨の状態で執り行われることになる。
宮内庁は、この基本的な方針を基に今後、葬儀などの細部を決めていくと説明している。