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徹底調査「コメ争奪戦」新たな動き 価格高騰が続くワケとは?【バンキシャ!】

2025年2月17日 9:12
徹底調査「コメ争奪戦」新たな動き 価格高騰が続くワケとは?【バンキシャ!】

政府が備蓄米の放出を決めるほど、なぜいまコメの価格高騰が続いているのか。バンキシャ!が徹底調査。全国のコメの卸売業者に行ったアンケートからは、当事者ならではの様々な答えが寄せられました。誰がコメを買い、誰が確保しているのか。「コメ争奪戦」の新たな動きが見えてきました。(真相報道バンキシャ!)

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バンキシャ!が中国のSNSで見つけたのは、日本のコメの写真。コメの写真と共に中国語で「残りわずか10袋」などと書かれていた。

バンキシャ!はこうした投稿を見て、実際にコメを買ったという中華料理店を訪ねた。2024年の秋頃、コメが手に入らなくなり、見つけたのがこの画像。積み上げられたコメ袋の画像と共に「東京配達」「三日に大量入荷」などと、購入者を募っていた。

この店は60キロを2万9160円で購入。5キロあたり2430円と比較的安かったが、届いたコメは店で出せる品質ではなかったという。

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米どころ、新潟県長岡市のコメ生産者にも異変が。2024年9月以降、これまでになかった依頼が相次いだという。

ほそかわ農場・細川寿和代表取締役
「今まできたことない方から連絡が」

「アジア系だと思うんですけど、チャイナ系だと思います」

「いくらでもいいから買うと言われるので」

価格高騰で激しさを増すコメの争奪戦。その要因はコメの流通量が減っていることだ。コメの流通に何が起きているのか。バンキシャ!は「卸売業者」に緊急アンケートを実施した。

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土鍋で炊いたごはん。都内にある飲食店「土鍋ご飯いくしか中目黒店」もコメの値上げに悩まされていた。仕入れ価格がどれくらい上がったのか、みせてもらうと…。

店長
「これが昨年2月のお米の金額、(30キロ)1万710円」

それが今年は、「(今年)2月10日に価格改定された。(30キロ)2万4000円」と話す。1年でコメの価格は、2倍以上に跳ね上がっていた。

主なコメの流通ルートは、まず生産者から農協などの集荷業者へ。そこから卸売業者へ渡り、小売業者や飲食店へ。そして、私たちの食卓に届く流れだ。去年の生産量は前の年に比べ、およそ18万トン増えているにもかかわらず、農協など大手集荷業者の集荷量は21万トン少なくなっているという。これが価格高騰が続いている要因とみられている。

では、コメはどこにあるのか。バンキシャ!はコメの生産者を訪ねた。田んぼを見せてもらうと、いまは全て雪で覆われているが、まんま農場・小林達樹会長は「鉄塔が真ん中にある。見える範囲はほぼうちが作っている」と話す。

広大な田んぼで毎年170トン前後のコメを生産している。倉庫にはその一部が残っていた。ほぼ全て売却先が決まっているという。ただ、その売却先は農協ではなく、卸売業者や小売店、消費者に直接販売しているという。

バンキシャ!がコメ袋の数を数えてみると、1袋30キロが633袋で1万8990キロ、およそ19トンだ。

なぜ、安定した価格で買い取ってくれる農協を通さないのか。

まんま農場・小林達樹会長
「自分でお米の価格を決定できる」

「(農協だと)当然、買い取り価格は向こうからの提示どおりになる」

「会社を永続的にやっていくために自社で売り抜く方法がベスト」

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バンキシャ!は全国の卸売業者にもアンケートを実施。48の業者・団体が回答を寄せてくれた。

中身を見てみると、卸売業者の危機感がにじみでていた。

「地元産の米は自身で買い集めなければ十分に数量を確保できない」

「よって地元の米を農家から農協より好条件で買い集めた」

「農家の直売が増している」

農水省によると、コメ不足となった2024年夏以降、農協などを通さない取引がさらに増加し、全体の流通の把握が難しくなっているという。

コメの争奪戦に拍車がかかる中、新潟県魚沼市の生産者には、「玄米を高く売るなら今がチャンス!」と書かれたFAXが届いたという。

米を高値で買い取るという見知らぬ業者からのチラシ。農協に出荷すると30キロでおよそ1万2000円のところ、この業者は2万円で買い取るとうたっていた。業者の住所は大阪市。2025年に入り、すでに2回届いたという。

どんな業者なのか電話してみると、生産者と小売業者を結びつける「仲介業者」とのことだった。これまでは、生産者の依頼で小売業者を紹介していたというこの業者。いまは、逆に、小売業者から「買いたい」との声が相次ぎ、これまで取引がなかった農家にも2024年の倍以上の価格を提示して買い集めているという。

価格高騰がつづくコメ。一部の卸売業者からはこんな証言も。

「投機目的の新規参入プレイヤーが保有していた」

「既存の民間業者でない異業種の参入が有り」

これまで、コメを扱ってこなかった業種が参入しているとの指摘も。

さらに、バンキシャ!が各地の農協に取材をすると、「ホームセンター」や「土木業者」などから農家に直接問い合わせが相次いだ、との報告もあったという。

コメ争奪戦が過熱する中、農水省は14日、21万トンの備蓄米を放出すると発表。今後、コメの価格は下がるのか。専門家に小売価格の見通しを書いてもらった。

日本総研チーフスペシャリスト・三輪泰史氏
「備蓄米がさっそく流れ始めます。それが在庫を押しのけて店頭に出ていくという形。3月の下旬くらいから『お米が安くなったかもしれない』というのを実感されて、かなり急ピッチで値段を下げる」

三輪氏は5月ごろには、5キロあたり3000円前後に落ち着くと分析する。ただ、不安心理が解消されず、買いだめが続くなどした場合は値段が下がらないおそれもあるという。

「騒ぐとまた値段が上がってしまう。落ち着いて米を待って、値段が下がったものをおいしく食べるということを徹底する」

(2月16日放送『真相報道バンキシャ!』より)

最終更新日:2025年2月17日 9:40