不登校と向き合う親子 環境を変えて「少しずつ…」見守り続け生まれた気持ちの変化『every.特集』
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平日の昼、カフェに集まっていた3人のお母さん。話していたのは、
「行ったら楽しいけど…」
「(家を)出るまでがねぇ」
桐谷美玲キャスター
「どういった集まりなんですか?」
「不登校のお子さんがいるママと、それを支援してる方の集まり」と話す。集まっていたのは、主に不登校の子どもと向き合う親。このランチ会はおよそ3年前から月に2回ほど開いており、不安を相談したり、情報共有をしたりしているといいます。進学の仕方や学校に行かない時間をどう過ごすのかなど、話題は様々です。
このお母さんは、小学5年生の子どもが月に数回、放課後に登校しているといいます。
桐谷キャスター
「学校についての話をする?」
小5の子どもが不登校 母親
「放課後の登校をしているので、その時の話はちらっとしたりはする。それ以外はしないですね」
桐谷キャスター
「それは、あえてしないんですか?」
母親
「私からはあまりしないですね」
桐谷キャスター
「(不登校の)きっかけみたいなものはあった?」
母親
「きっかけはわからないけど、たぶん、集団が少し苦手」
学校に行けない理由がわからない。不登校にはそんな子が多いといいます。実は、全国の小中学生の不登校人数は年々増加していて昨年度は34万人を超え、11年連続過去最多を更新。今や誰がいつ不登校になってもおかしくありません。
この会をつくった廣瀬ひろみさん。これまで市と連携しながら子育て支援の活動などをしていて、このランチ会でも、多くの親子から不登校についての相談を受けてきました。そんな会の名前は、「不登校でもだいじょう部」。
不登校でもだいじょう部・廣瀬ひろみさん
「大丈夫かも、“かも”でも思ってもらえたら、お母さんが元気になれる」
ひろみさん自身、およそ3年前から学校に行きにくくなっている息子、満太朗くんと向き合っています。
まずは打ち解けるため、満太朗くんがすきなゲームを一緒にやってみることに。
小学5年生・満太朗くん
「超苦手」
桐谷キャスター
「わかる。これ難しいよね」
満太朗くん
「うまっ」
桐谷キャスター
「うまいでしょ」
「こうやってゲームしている時が一番好き?」
満太朗くん
「一番じゃないけど好き」
満太朗くんは徐々に、学校のことも話してくれました。「好きで言ったら、計算は得意じゃないけど算数、音楽、図工、道徳」。
桐谷キャスター
「好きな授業いっぱいあるね」
好きな授業はたくさんあるといいますが、なぜ、学校に行きたくないのでしょうか。
桐谷キャスター
「学校に行きたくなくなったのは、これが嫌だったからとかあるの?」
満太朗くん
「理由はほぼない。ただ行きたくなくなったから行ってない」
理由はないと話した満太朗くん。それでも話をしていくと、「昔は本当に大嫌いだった」という。
桐谷キャスター
「昔は嫌いだったんだ」
満太朗くん
「人の多いところが本当に苦手で。一気に関わろうとすると嫌になっちゃう」
子ども自身、複雑な思いを抱えながら「行きたくない」と伝えています。親はまず、その言葉に寄り添うことが大事だとひろみさんは考えています。
廣瀬ひろみさん
「行きたくないって子どもが言うのも、すごく勇気がいること」
「言えたのもすごいことだし、自分の気持ちを言っていいんだよ、という環境をつくれたから、『お母さんの子育てがうまくいってる証拠』と、初めて来た方には必ず伝える」
それは、ひろみさん自身も不登校の子どもと向き合ったことで行きついた思いでした。
廣瀬ひろみさん
「4人子どもがいるんですけど、みんな学校が苦手だった。三女が小4から全く学校に行かなくなりまして」
実は末っ子の満太朗くんだけでなく、3人の姉たちも学校が苦手でした。中でも三女は、小学4年生から中学3年生までの6年間、不登校に。当時はなんとか学校に行かせたいと奮闘するも、三女とは気持ちがすれ違う日々…。その中で、自分のある思いに気づきました。
廣瀬ひろみさん
「子どもを学校に行かせなきゃ、ちゃんとした大人に育てなきゃ。友達に『そう思ってるのは誰なの?』と聞かれたときに、全部私じゃんって」
それからは、無理矢理学校に行かせることをやめてみたといいます。ある日、三女をお菓子作り教室に連れて行くと、その魅力にのめり込み、猛勉強。それをきっかけに、学校に行けるように。
廣瀬ひろみさん
「好きなこと見つけるって、そのために勉強・学びについてくる」
桐谷キャスター
「好きなことを見つけて、それだけ熱中できるものがあれば、座学だけが勉強じゃない」
“好きなこと”を見つけた三女。高3になった今、毎日学校に通い続けています。ひろみさんはこうした経験から「大丈夫」と思えるヒントを得ていました。
■見守り続けて生まれた気持ちの変化
別の日。満太朗くんは今、主に給食の時間だけでも、と学校に行くようにしています。去年から、児童や生徒の状態に合わせて教育を受けられるクラスに通い始めました。
不登校でもだいじょう部・廣瀬ひろみさん
「(児童が)4人しかいないので、居心地がいいんだろうな。だから行けてるんだろうなって」
人と関わるのが苦手と言っていた満太朗くんには、人数が少ないクラスで過ごす方が合っていました。登校して一時間。
満太朗くん
「ただいまです」
「ボールとろうとしたら、勢いで壁にどーんって」
環境を変えたことで、少しずつ学校に行ける時間が長くなっているといいます。
満太朗くん
「自分含めて4人いるけど、その中の1人の男の子と結構仲いい」
また、ひろみさんは、学校以外の時間も外出を増やそうとしています。この日来たのはファミレス。ひろみさんは仕事を、満太朗くんは学校の宿題をしたり、ゲームをしたりなど、二人で好きなことをする時間をとっているといいます。
──家でやるのとファミレスは違う?
廣瀬ひろみさん
「違いますか?」
満太朗くん
「全然違う」
「環境音で集中できるっていうのと」
廣瀬ひろみさん
「好きな飲み物飲めるしね。ママも洗濯物が…洗い物が…ってしなくていい」
近場でもこうした外出を増やし、2人で何気なく話す時間を大切にしているといいます。
不登校への対応については専門家の明治大学・諸富祥彦教授も、子どもが話をするきっかけにつながるよう、習慣的に外出をすることは大事だと話します。
満太朗くんの気持ちを見守ってきた日々。こうした生活を続け、満太朗くんには気持ちの変化が。
満太朗くん
「『学校が嫌い』が『少し楽しい』と思えるくらいに」
「少しずつ授業を受けられるようになりたい。ちゃんと、みんなと同じ時間に行きたい」
「そうすれば、お母さんの負担も減るし、自分が成長したなと思えるからそれが目標に」
「目標をたてると頑張れるから、できなくてもいいからやってみよう」
桐谷キャスター
「その前向きな気持ちがすごいなって思うし、見習わなきゃっていう気持ちになるよ」
満太朗くん
「よかったです」
廣瀬ひろみさん
「親が思ってるより、子どもって考えてるんだって。不登校を経験したことですごく感じたので、『子どもだから』とかそういうふうに考えないで、ぐっと我慢して待ちの姿勢をとるように」
桐谷キャスター
「子どもを信じて待つ力も、大切になるんですね」
「親しかできないので、そこらへんは」と話す廣瀬ひろみさん。不登校に向き合いながら、親子の歩みは続きます。
(2月20日放送『news every.』より)