乳がん…5年生存率92% 増える通院治療
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。6日は、「ピンクリボン」をテーマに、日本テレビ・小栗泉解説委員が解説する。
10月は「乳がん月間」で、ピンクリボンのイベントが各地で行われていて、東京タワーや都庁などもピンクにライトアップされました。きょうはこの「乳がん」について考えてみたいと思います。
■乳がん…12人に1人
「ピンクリボン」は、乳がんの正しい知識を伝え、早期発見・早期治療を訴える世界的なキャンペーンです。北斗晶さんが乳がんを公表して闘病していますし、女性にとっては身近な病気です。いま、一生のうちで乳がんになる日本人女性は12人に1人とされています。
乳がんと診断されると、北斗晶さんが先日行ったような「手術」でがんを取り除いたり、「抗がん剤」でがんを小さくしたり、「放射線治療」でがんを消滅させたり、少なくしたり。また「ホルモン療法」で、がんの増殖を促すホルモンが働かないようにする治療などもあります。
実は、こうした乳がんの治療法と共に、副作用を抑えるための薬の開発なども進んでいるため、長く入院するのではなく、通院で治療できるケースが近年、増えているんです。
さらに、がんの一般的な完治の目安とされる「5年生存率」。これはがんと診断された人が5年後に生きている割合を同じ年齢・性別の人と比べた数字ですが、乳がんではおよそ92%、がん全体では64%。これは、今月、国立がん研究センターが出したデータなんですが、がんにかかっても、早期発見して適切な治療を行えば、“治るがん”も多いんです。
■「がんは社会復帰できる病気」
こうした中、働きながらがんの治療をする人は、すべての「がん」でおよそ33万人いるんですが、先月発表された調査では、がんと診断された後、30%の人が依願退職し、4%が解雇されていることがわかりました。
仕事を続けられなかった理由を見ると、「仕事を続ける自信がなくなった」という人が一番多く、2番目に、「会社や同僚などに迷惑をかけると思った」と続いています。
この調査をした静岡がんセンターの山口総長は、「がんは社会復帰できる病気。再就職の大変さを考えれば、可能な限り仕事を辞めないでほしい」と話しています。
■働きながら治療…国も支援
いま、国などはこうしたがん患者が働くための環境作りを積極的に行っています。大きくは、一度仕事を辞めた人への「再就職支援」と、がん患者が働き続けるための「治療と仕事の両立支援」の2つがあります。
まず「再就職支援」としては、例えば、静岡がんセンターではハローワークの相談員が週に一度病院を訪れ、がん患者に仕事を紹介しています。これまでのおよそ2年半で、230人が相談し、このうち39人が就職することができたそうです。
こうした病院とハローワークが連携する事業は、現在は15の都道府県でしか行っていないんですが、厚労省は来年度から全国で展開する方針を示しています。
一方、「治療と仕事の両立支援」としては、働きながら通院しやすい病院も出てきています。こちら宮城県立がんセンターでは去年12月から、毎週金曜日、午後9時まで抗がん剤治療を受けられる夜間外来を開いていて、これまでに、のべ60人が利用したそうです。
■きょうのポイント
きょうのポイントは「がんと共に」です。2人に1人ががんになる時代、がんという病気は決して他人事ではありません。仕事を続けたい人が体調と相談しながら続けられる仕組みがあれば、経済的にも助かるでしょうし、生きがいにもなるでしょう。“がんと共に”生きやすい社会のため、ピンクリボンをきっかけに私たちも考えていきたいです。