冬の入浴「ヒートショック」に注意
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。17日は、「ヒートショック」をテーマに諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。
■命の危険も
ヒートショックとは、入浴時などの急激な温度差が原因となって、血圧が急激に変動する事をいう。場合によっては、脳卒中や意識障害など、命の危険にさらされる場合がある。
東京都健康長寿医療センターによると、2011年の1年間で入浴中に死亡した人は、全国で約1万7000人と推定されていて、その多くがヒートショックによるものだとみられている。同じ年の交通事故の死亡者数は4663人なので、比べてみても3倍以上にもなる計算だ。
■時期による違いは?
時期によってどのくらい違いがあるのだろうか。2011年に入浴中に心肺機能が停止した人を月別に表したグラフでは、最も多い1月には1759人で、その次に多い12月でも1562人。東京都健康長寿医療センターでは、この寒い時期に増加しているのはヒートショックが原因だとみている。亡くなっているのは高齢者が中心だが、若い人でも注意しなければならない。特に12月、1月は要注意という事になる。
■ヒートショックが起きるメカニズム
(1)まず、脱衣所が寒いと血圧が上昇する。(2)また、浴室が寒いとさらに血圧は上昇。(3)そして浴槽に入ると、熱さのために交感神経が緊張して、さらに血圧は上昇する。(4)その後、浴槽内で体が温まると血管が広がって、血圧が急激に下がる。この変動が大きな問題を起こす。
■若い人も注意を
若い人も注意が必要という事で、20代の女性の入浴時の血圧の変化を表したグラフによると、脱衣所から10℃の浴室に入ると、血圧は95から115まで上昇し、お湯につかると120を超えた。さらに入浴を続けると95まで下がり始めた。
■血圧が下がる時も注意が必要
これは大変な変動で、血圧が激しく上がると脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす可能性があるのは有名な話だ。そして今回強調したいのは、浴槽に入って急激に下がる時に意識障害や失神が起き、命に関わっているのではないだろうかという事だ。血圧が下がっている時にも注意が必要となる。
東京都健康長寿医療センターの高橋龍太郎前副所長によると、「日頃元気な方でも、高齢者は血圧が上下しやすい。高血圧の人の場合は、血圧が下がりやすく、意識を失う可能性が高い」と話している。
■ヒートショックを防ぐには?
では、ヒートショックを防ぐにはどうすればいいのだろうか?何よりも大切なのは「温度差をなるべく小さくする事」。
まず脱衣所では、ぜひ暖房器具を入れ、暖めて着替えてほしい。さらに浴槽にお湯を張る時はシャワーのある家ではシャワーからお湯を張ると、浴室全体が温まるので血圧の変動を小さくする事ができる。
さらにお湯に入る時、国立循環器病研究センターによると、40℃以下だと血圧の変動が減るとみられるという事で推奨している。ぬるめのお湯の方がいいという事になる。
■食事直後や飲酒時の入浴は避ける
そのほかに気をつける事は、入浴する時間にも注意したい方がいい。食後1時間以内や飲酒している時は、血圧が下がりやすくなる。食事直後や飲酒時の入浴は避け、時間をおいてからの入浴がよい。
■お風呂で健康に
きょうのポイントは「お風呂で健康に」。今回は「お風呂は恐い」という話を多くしてしまったが、実はお風呂は体にとてもいい。体を温める事で、新陳代謝もよくなる。少しぬるめのお湯にゆっくりつかる事で、副交感神経が働き、血管が拡張して循環がよくなる。そしてリラックス効果も期待できて、疲労回復にもなる。寒さで緊張した体をお風呂で上手にリラックスさせて、冬だからこそ注意して上手にお風呂を利用していただきたい。