絶滅危惧ライチョウ 今年は人工繁殖なるか
国の特別天然記念物で絶滅危惧種にも指定されている「ライチョウ」を守るため、環境省などは去年に引き続き、今年も人工繁殖に取り組む考えだ。
【絶滅危惧種・ライチョウ】
ライチョウは、本州の北アルプスなど2000~3000メートルの高山帯に生息する鳥で、1980年代には約3000羽が生息していた。
しかし、温暖化に伴う環境の変化や外敵の増加などにより、その数は減少。2012年には、近い将来、野生での絶滅の危険性が高い「絶滅危惧ⅠB類」に指定された。
【始まった人工繁殖】
今後、生息数がさらに減り、絶滅が危ぶまれる事態に備え、環境省は日本動物園水族館協会や専門家らと連携し、2015年、ライチョウの人工繁殖の取り組みを始めた。
6月に北アルプスの乗鞍岳で、野生のライチョウの卵計10個を採取。親鳥が抱く前の卵5個は上野動物園に、親鳥が抱く時期を迎えた卵5個は富山市ファミリーパークに送られ、それぞれの動物園が孵卵器(ふらんき)を用いて人工孵化に取り組んだ。
上野動物園では5つの卵からヒナが孵化したが、孵化後2か月あまりで全てのヒナが死んだ。
一方、富山市ファミリーパークでは1つの卵がかえらず、また1羽死んだものの、孵化した3羽は今も元気に育っている。しかし、この3羽はいずれもオスのため、人工繁殖活動は行えない状況だ。
【2016年も繁殖継続】
丸川珠代環境相は2015年最後の会見で、「種を絶滅させないことは生態系を維持するために大変重要な取り組みだ」とした上で、去年の反省を踏まえた改善策を検討しながら、今年も引き続きライチョウの人工繁殖に取り組む考えを示した。
国内ではかつてトキやコウノトリが、残り数十羽になってから、国はようやく保護に力を入れたが、いずれもうまく行かず、絶滅した経験がある。
ライチョウを絶滅させないためには、こうした苦い経験を生かし、生息地域での保護のみならず、動物園などで引き続き人工繁殖を進める努力が求められている。