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皇太子さま56歳の誕生日 会見全文(1)

2016年2月23日 9:54
皇太子さま56歳の誕生日 会見全文(1)

 皇太子さまが23日、56歳の誕生日を迎えられた。誕生日に先立って19日、東宮御所檜の間で行われた記者会見の全文(1)は以下の通り。


(問1)
 この1年を振り返り,印象に残った公務や社会,皇室の出来事についてお聞かせください。


(皇太子さま)
 この1年を振り返ると,5月の口永良部島新岳での噴火や,9月の台風18号等による茨城県,栃木県,宮城県での豪雨など,引き続き数多くの自然災害が発生しました。海外に目を向けても,史上最大規模と言われたエル・ニーニョ現象の影響もあり,世界各地で多くの洪水や干ばつが発生したほか,ネパールや台湾では大地震が起こるなど,人々に甚大な被害を及ぼしました。このような自然災害によって被害に遭われた方々のご苦労はいかばかりかと思うと,大変心が痛みます。犠牲になられた方々のご冥福をお祈りするとともに,被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。 今年の3月には,東日本大震災が発生して5年になります。昨年10月,雅子とともに,福島県を2年ぶりに訪問し,復興の進捗状況を見る機会を得ましたが,復興の道のりはまだ長く続いていると改めて実感いたしました。一方で,風評に負けず質の高い野菜を生産し販売網を拡大しているいわき市の農産品会社の方や,震災発生後,故郷を離れ,住む場所を転々とするなど苦労した若い人たちを中心に,震災前よりも一層輝く福島県を創り出そうとしている人々の姿を実際にこの目で見て,大変うれしく,そして心強く思いました。引き続き,雅子とともに,被災者お一人一人の悲しみやご苦労に思いを寄せ,厳しい環境の下で暮らす被災者の健康とお幸せを祈りながら,被災地の復興に永く心を寄せていきたいと思っております。

 また,昨年は先の大戦終結後70年という節目の年でした。1年を通して,国内外で先の大戦に関する様々な事業が催され,戦争を経験した人も,そうでない人も,改めて戦争の悲惨さと平和の尊さを考える機会になったものと思います。

 天皇皇后両陛下には,昨年4月のパラオ共和国ご訪問に引き続き,先月はフィリピン共和国をご訪問になり,先の戦争で命を落とされた方々を,心を込めて慰霊なさいました。そうしたお姿を,雅子と愛子とともに拝見し,両陛下の平和を思うお気持ちの深さに改めて感銘を受けるとともに,そのお心を私たち次の世代がしっかり受け継いでいかなければならないということについての心構えを新たに致しました。 私自身も,雅子と愛子と一緒に,7月そして8月に,戦後70年に関連した特別企画展などを訪れました。そこでは,戦争の記憶を風化させることなく,次の世代,さらにその次の世代に語り継いでいくべく,様々な展示や講演などが行われておりましたが,改めて過去の歴史を学び,戦争に至った背景や,戦時中の惨禍,戦後の荒廃から立ち直る上での人々の並々ならぬ努力についての理解を深め,そして平和の意義について真摯に考えるよい機会となりました。

 そのほか,この1年の国内外の動きの中で印象に残ったことをお話しいたしますと,国内では,少子高齢化など社会の構造変化が進む中で,様々な社会問題が報じられるのを見るたびに,心が痛みます。他方で,昨年8月に,山口県で開催された第23回世界スカウトジャンボリーに参加し,155か国・地域から集まった3万4千名余りの若者たちが国籍や信仰を越えて交流する姿を見て,心強く思いました。こうした未来を担う青少年をはじめ,すべての人々が安心して暮らせる社会を,一人一人が協力して作っていくことが,とても重要な時代になっていると思います。

 また,海外の出来事に関しては,テロや貧困,難民の増加などの問題が大きな影を落としており,このような問題の解決に向けて,国際社会が協力していくことが求められていると思います。そうした中で,昨年9月に国連で2030年を見据えた「持続可能な開発目標」が,また,12月には,テロに見舞われた後のパリにおいて,2020年以降の地球温暖化対策の枠組みをまとめた「パリ協定」が採択されたことを喜ばしく思います。気候変動対策や環境保全,貧困の問題などは,引き続き人類が一致して取り組むべき課題であり,今後,持続可能な社会の実現に向けて,各国が協力していくことが求められていると思います。

 一方で,うれしい出来事もございました。学術関係では,大村智博士が生理学・医学部門で,また,梶田隆章博士が物理学部門で,それぞれノーベル賞を受賞されました。また,それに先立つ11月には,国産初のジェット旅客機が初飛行を遂げました。ちなみに,私自身,小学校6年生の時に,生まれて初めて乗った飛行機が戦後初の国産のYS11機でした。12月には,理化学研究所のチームが,113番目となる新たな元素を発見したことが,国際学会によって認定されました。これらは,日本の科学技術が,基礎研究から応用に至るまで,引き続き世界の第一線にあるということの証であり,これから学術の道に進もうと考えている若い人たちにとって大きな励みになったと思います。 また,スポーツの分野で,日本の男子ラグビーチームのワールドカップでの活躍や女子のラグビーも見事にオリンピックの出場権を獲得したことも本当によかったと思いますし,今後の活躍を楽しみにしています。 皇室の出来事では,昨年は三笠宮殿下が百寿を,また,常陸宮殿下が傘寿を,ともにお健やかにお迎えになられましたことを,心よりお喜び申し上げております。これからも末永いご健康を心からお祈りいたします。

 最後に,私が,近年かかわっている水問題について,一言触れておきたいと思います。 私は,ご縁があって,2007年から国連水と衛生に関する諮問委員会(UNSGAB)の名誉総裁を務めており,同諮問委員会の会合をはじめ世界水フォーラムなどの国際会議に出席し講演するなどの活動をしてまいりました。昨年末,同諮問委員会が,その最終報告書を国連事務総長に提出する機会に,私もニューヨークを訪れ,国連本部で開かれた第2回国連水と災害特別会合において基調講演を行うとともに,同諮問委員会の最終会合に出席し,名誉総裁としての任期を終えました。昨年,国連は新たな開発目標,「持続可能な開発目標」を採択しましたが,この目標に従って,国際社会が協調して,すべての人々の安全な水と衛生施設へのアクセスが実現されるよう,取組が進められることを期待しておりますし,私自身,そのために可能な貢献を引き続き行ってまいりたいと思います。

 あわせて,近年頻発している,異常気象に伴う豪雨災害や将来も起こりうる地震津波災害に備える意味でも,防災の観点から,水災害の問題へも引き続き取り組んでいきたいと思っております。