皇太子さま56歳の誕生日 会見全文(2)
皇太子さまが23日、56歳の誕生日を迎えられた。誕生日に先立って19日、東宮御所檜の間で行われた記者会見の全文(2)は以下の通り。
(問2)
ご家族についてお伺いします。雅子さまはこの1年,トンガでの戴冠式出席や月に2度の地方訪問,12年ぶりの園遊会へのご出席など,着実に活動の幅を広げられました。殿下が感じられた雅子さまの変化や現在のご体調についてお聞かせください。4月に学習院女子中等科3年生となる愛子さまは今何に関心を持ち,高校進学やその先の将来に向けてご家族でどのような話をされていますでしょうか。成長を実感するエピソードや女性皇族としての今後に寄せられる思いについてもお聞かせください。
(皇太子さま)
雅子は,治療を続ける中で,体調に気を付けながら,公私にわたってできる限りの務めを果たそうと努力を続けてきております。かねてより公的活動に対して強い責任感を持っておりましたが,少しずつ活動の幅を広げていく中で,依然波はあるものの,体調についても,それに見合う形で少しずつ回復してきているように感じております。そして,その結果,トンガ国への訪問,福島県と鹿児島県への続けての地方訪問,秋の園遊会への出席など,活動の幅を一歩一歩広げられてきているものと受け止めております。また,東宮御所内での公的な行事にも可能な限り出席し,公私ともに,私を支えてくれるのと同時に,愛子の日々の生活やその成長に心を配ってくれていることをうれしく思っております。
このように,雅子は確かに快方に向かっておりますが,引き続き焦らず慎重に,少しずつ活動の幅を広げていってほしいと思っております。国民の皆様には,これまで温かいお気持ちを寄せていただいておりますことに改めて心より感謝の気持ちをお伝えいたしますとともに,引き続き雅子の回復を温かく見守っていただければ有り難く思います。
愛子については,中学2年生になって,交友関係も更に広がり,日々充実した学校生活を楽しんでおります。学業の方では,学年が進むにつれ,質的にも量的にも難しさを増しているようで,こちらの面でも忙しくしているように見受けられます。戦後70年に関しての様々な企画には,自ら大きな関心を持ち,関連の展示などを一緒に見学した後には,新聞記事やテレビの特集番組などを色々調べるなどして学校の課題にも熱心に取り組む姿を見て,中学生としての自覚がいっそう高まってきたように思います。また,沼津の臨海学校では,約3kmの遠泳を泳ぎ切るなど,水泳は目覚ましく上達したようです。少しずつではありますが,公的な場に出ることも増えてきていると思います。自分自身を振り返ってみても,その一回一回の機会を大切にして,自身の幅を広げていってほしいと思います。
高校進学を含め将来のことについては,愛子本人の希望をなるべく尊重してまいりたいと思っておりますが,今後周りの皆様から色々と教えていただきながら,様々な経験を積み,自分の望む道をしっかり歩んでいってほしいと思います。そして,その過程で皇族の務めについても理解を深めてくれればと願っております。
(問3)
天皇陛下は82歳の誕生日の記者会見で「年齢というものを感じることも多くなり,行事の時に間違えることもありました」と率直に明かされました。このご発言をどのように受け止められましたか。皇后さまは強いストレスが原因とみられる心筋虚血の症状が認められ,経過観察が続いています。こどもの日と敬老の日にちなんだ訪問はお子さま方が引き継がれましたが,お忙しい毎日を送られる両陛下の現在のご体調や今後のご活動のあり方についてのお考えをお聞かせください。
(皇太子さま)
両陛下におかれては,長きにわたり,国民の幸せを願い,国民と苦楽をともにされながら,様々なお務めを果たされ,毎日とてもお忙しく過ごしておられます。両陛下のご健康をご案じしつつ,どうかご無理をなさらず,末永くお元気でいらっしゃることを心から願っております。私としては,両陛下のお気持ちを十分踏まえながら,少しでもお役に立つことがあれば喜んでお力になりたいと思います。昨年から,こどもの日と敬老の日にちなんでの施設訪問を秋篠宮とともに受け継がせていただきましたが,両陛下は,こうしたお仕事の一つ一つを心から大切にされて取り組まれてきましたので,そうした両陛下のお気持ちに思いを致しながら,できる限りお手伝いをしてまいりたいと思います。
(問4)
東日本大震災から間もなく5年となります。殿下はこれまで雅子さまと共に何度も被災地に足を運び,昨年も福島県を訪問されました。被災者との触れ合いで感じられたことや復興の現状への思い,また今後どのような形で被災地と関わり続けていかれたいか,お聞かせください。
(皇太子さま)
東日本大震災から,今年の3月で5年になります。改めて震災で亡くなられた方々に深く哀悼の意を表しますとともに,被災された多くの方々に心からお見舞いを申し上げます。私も雅子とともに,これまで被災地を度々訪問しておりますが,多くの方々が依然として厳しい環境の中で暮らしておられることに心が痛みます。いまだ復興の道は半ばであり,一日も早く被災された方々の生活が改善し,安心できる暮らしを取り戻されることを願っております。
それと同時に,訪問するたびに,少しずつではありますが,復興が着実に進んでいるのを目の当たりにするのも事実です。特に,昨年も福島県広野町にあるふたば未来学園で高校生とお話をいたしましたが,若い世代の方々のお話を聞くたびに,自分たちが地域の復興とさらなる発展にどのように貢献できるかということについて,しっかりとした将来を見据えた考えを持ち,前向きに取り組んでいる姿が印象深く,とても心強く思いました。
私としても,雅子とともに,被災者一人一人の悲しみやご苦労に思いを寄せ,厳しい環境の下で暮らす被災者の健康と幸せを祈りながら,被災地の復興に永く心を寄せていきたいと思っておりますし,また折を見ながら被災地への訪問を続けてまいりたいと思っております。