皇太子さま56歳の誕生日 会見全文(3)
皇太子さまが23日、56歳の誕生日を迎えられた。誕生日に先立って19日、東宮御所檜の間で行われた記者会見の全文(3)は以下の通り。
(問5)
昨年は戦後70年の節目の年でした。両陛下は国内外で慰霊の旅を重ねられ,殿下は雅子さまや愛子さまとともに戦争に関する展示に足を運び,戦争体験者の話に耳を傾けられました。これらのことを通じて,改めて感じられたことをお聞かせください。ご家族で戦争についてどのような話をされ,両陛下の平和への思いをどのように引き継いでいきたいとお考えでしょうか。ご覧になった御文庫附属庫やお聞きになった玉音放送の原盤の感想も併せてお聞かせください。
(皇太子さま)
戦後70年という節目の年に,先の大戦に関する様々な展示やお話を見聞きし,戦争によって日本を含む世界の各国で多くの尊い人命が失われ,さらに多くの方々が大変つらく悲しい思いをされたことを再認識し,大変痛ましく思うとともに,改めて戦争の悲惨さと平和の尊さに深く思いを致しました。そして,歴史の教訓に学び,このような痛ましい戦争が二度と起こらないようにしなければならないとの思いを強く致しました。
天皇皇后両陛下には,昨年4月には,ご訪問になったパラオ共和国で,また,先月はフィリピン共和国において,国籍を問わず先の戦争で命を落とされた方々に対して,心を込めて慰霊をなさるとともに,平和への強い思いをそのお姿で世界にお示しになりました。私たちも,そうした両陛下の平和を思うお気持ちをしっかりと受け継いでまいりたいと思っておりますし,また,私たちのみならず,多くの方々が両陛下のご訪問を通じて,先の戦争についての理解を深められたのではないかと思います。私自身,昭和40年以降,毎年のように,夏の軽井沢で,両陛下とご一緒に沖縄豆記者の皆さんにお会いしたり,戦後引き揚げてきた方々が入植した軽井沢にほど近い大日向の開拓地を両陛下とご一緒に何度か訪れるなど,戦争の歴史を学び,そして,両陛下のお気持ちに直接触れてきております。また,両陛下からは折に触れて,私たち家族そろって,疎開のお話など,戦時中のことについてうかがう機会があり,愛子にとってもとても有り難いことと思っております。
御文庫附属庫や玉音放送録音原盤の話については,その場所を実際に拝見したり,玉音放送録音原盤で昭和天皇の肉声をはっきりうかがうことが出来,深い感慨を覚えました。戦争を知らずに,平和の恩恵を生まれたときから享受してきた私たちの世代としては,各種の展示や講演,書物,映像など,過去の経験に少しでも触れる機会を通じて,戦争の悲惨さ,非人道性を常に記憶にとどめ,戦争で亡くなられた方々への慰霊に努めるとともに,戦争の惨禍を再び繰り返すことなく,平和を愛する心を育んでいくことが大切だと思います。そして,そうした努力を次世代にも受け継いでいくことが重要だと思います。
同時に,世界では,いまだに紛争が続いている地域がいくつもあります。そのような紛争の惨禍が終結し,いつの日か世界全体に平和が訪れることを願っております。
【関連質問】
(問1)
先ほどのお話の中で御文庫附属庫の中に入られたときのこと,また,玉音放送をお聞きになったときのことについて触れられていました。実際に御文庫附属庫に入られたときのですね,第一印象,どのようなものをご覧になって,どうお感じになったのかという点と,あと昭和天皇のお声をお聞きになったときのですね,実際にどのようなお気持ちになったのか,その点についてお尋ねしたいと思います。
(皇太子さま)
私は御文庫附属庫に入ったのは初めての機会で,本当に貴重な機会を与えていただいたと,感謝しております。まず入りまして,ここが非常に重要な役割を果たした場所であるということを改めて実感し,そしていろいろ絵などに描かれ,頭の脳裏にあるその情景と,今自分が見ている情景とを重ね合わせて,その当時は一体どのような感じであったのだろうかと,あれこれ想像を巡らせました。昭和天皇がここに座っておられたことなどを伺って,その当時にタイムスリップしたような深い感慨を覚えました。録音原盤については,例えばニュースなどでは度々うかがっておりますけれども,今回本当に原盤を実際に拝見して,そしてその原盤からの音を,昭和天皇の声をうかがうことができたということに本当に深い感慨を覚えた次第です。
(問2)
愛子さまのことでお尋ねします。先ほど愛子さまに関連して,ご自身の幅を広げていってほしいということを聞きました。殿下は,今の愛子さまと同じ14歳だった昭和49年にオーストラリアにホームステイをされました。ご自身の体験を踏まえながら,愛子さまの海外体験についてのお考えをお聞かせ願えればと思います。
(皇太子さま)
私自身,愛子と同い年に,オーストラリアを訪問し,そこでホームステイなども経験し,オーストラリア人の家族の方とご一緒にしばらく過ごすことができたことは,私自身にとっても大変貴重な財産となっております。やはり中学生の頃に海外に行くことができたということは,私自身も大変有り難いことであったと思っておりますし,また短期間ではありますけれども,海外から日本という国を見る機会にもなったのではないかと思います。愛子については,小さいときにオランダに行ってはおりますけれども,今後も何らかの形で海外に行く機会があれば,自分自身の視野を広めることにもなりますし,やはり若いときにそういったことを体験しておくことはとても大切なのではないかと思っております。今,具体的にいつという計画は特にございませんけれども。