ネット犯罪から子どもを守る「ミカタ」
中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」29日のテーマは「ネット犯罪から子どもを守る」。
総務省で今月11日、スマートフォンの普及に伴い、子どもたちが安全にインターネットを利用できる環境づくりについて会議が開かれた。この背景には、インターネットを利用する子どもが犯罪に巻き込まれるケースが増えていることが言える。
■年々増える子どもの“ネット犯罪”被害
警察庁によると、去年1年間でインターネットの交流サイトを利用して犯罪被害に遭った18歳未満の子どもの数は前年より増えて1652人に上っており、統計を取り始めた2008年以降、最多となった。
総務省などが運営を支援するマルチメディア振興センターでは、子どもたちがネット犯罪に巻き込まれないよう啓蒙(けいもう)ビデオを制作している。
小学生の女の子がスマートフォンを母親から譲り受けた。女の子はそのスマートフォンを使って、自分の好きな音楽グループのファンが集まるサイトにアクセスする。すると、そのサイトの中で「同世代だ」という女の子と意気投合し、交流が始まった。
ただ、その相手の正体は小学生になりすました中年の男だった。そうとは知らない女の子は「チケットを譲ってあげる」という誘い文句に引っかかり、待ち合わせ場所に行ったところ、危険な目に遭ってしまった。
■対応策は「フィルタリング」
よく知られている対応策は「フィルタリングをかけることだ」と言われる。フィルタリングとは、有害なサイトや不特定多数の人とつながるサイトへの接続をブロックする機能だ。上記の例は元々、母親が使っていたスマートフォンだったため、フィルタリングがかかっていなかった点に問題があった。
実は、2015年に被害に遭った子どものうち764人を調査したところ、約95%がフィルタリングをかけていなかった。また、2015年度の内閣府の調査によると、スマートフォンを使っている子どものフィルタリングの利用率は45.2%と半数に満たない。
また、同じ調査によると、高校生では93.6%が、中学生では45.8%がスマートフォンを持っていて、その多くがインターネットを利用していると言えるので、危険な数字だ。
■フィルタリングを義務付けた「環境整備法」
2009年4月に施行された「青少年インターネット環境整備法」では、18歳未満の子どもがスマートフォンを購入する際、携帯電話会社にフィルタリングの提供を義務付けた。
しかし、フィルタリングを利用するかの最終的な判断は保護者に委ねられているため、フィルタリングをかけていない保護者も多いという。
フィルタリングを利用しない保護者に理由を聞くと、「フィルタリングの設定が難しい」「フィルタリングを利用しなくても子どものインターネット利用を管理できる」「子どもがフィルタリングを不便と感じた」といった声が聞かれる。
確かにフィルタリングはスマートフォンの機能を損なう面もあるが、それ以上に子どもの安全が大事なので、ぜひ使ってほしい。
■過信は禁物
フィルタリングをしていても、公衆のWi-Fiだとフィルタリングが十分に機能しなかったり、アプリなどを利用する場合にもフィルタリングがきかなかったりするケースもあるので注意が必要だ。
携帯電話会社によっては、公衆のWi-Fiを使った場合やアプリを利用する際にも機能するフィルタリングもあるので、調べてみてほしい。