熊本地震5か月…鎌田實氏が見た厳しい現実
キーワードでニュースを読み解く「every.キーワード」。22日のテーマは「熊本…いまだ厳しい現実」。諏訪中央病院・鎌田實名誉院長が解説する。
鎌田さんは今月17日、今年4月に震度7を2回観測した熊本県益城町を訪れた。熊本地震の発生から5か月たった今、被災地でそれぞれの思いを聞いてきた。
まず、鎌田さんは被害の大きかった住宅街へ向かった。崩れた家を見た鎌田さんは「いやー、すごいですよね。自分の家は大丈夫かと思い続けて、精神的にもつらい5か月だったと思う」と語る。
■避難所閉鎖の前に“修理”を…
益城町では5か月たった今もなお、200人以上の方が体育館で避難所での生活を送っていた。
避難所で暮らす梅村勝さん(78)、政子さん(75)夫妻。自宅は大規模半壊の状態で住む事ができず、5か月間、避難所生活を続けてきた。
鎌田さん「どう、ここでの暮らしは?」
梅村さん「体は慣れましたけど、精神面はもうめちゃくちゃ」
取材前日の今月16日、避難所が10月31日で閉鎖する事が発表され、梅村さん夫妻は途方に暮れていた。
鎌田さん「どうするの、夫婦は?」
梅村さん「(家を)修理して大工さんが来て、間に合えば帰ります。(避難所が)閉鎖になれば、なんとか帰らないといけないでしょ。仮設(住宅)申し込んでないですから」
なぜ仮設住宅に入らないのか。梅村さんは「(家は)大規模半壊ですけど、その土地が好きなので(家を)修理して帰りたい」と語る。
ただ、避難所が閉鎖される日までに家の修理が終わるかどうかは今のところ、わからない。長引く避難生活で持病の腰痛が悪化したという政子さんが本音を話してくれた。
政子さん「やっぱり主人も、私が病気の事を言うとつらいですよね。言ったら涙が出るから。なるだけ主人とか子どもの前では言わないようにしていますけど、やっぱりつらいですね」
■田んぼが被害「泥が…」
避難所生活を送る人だけでなく、仮設住宅で暮らす人も問題を抱えていた。地震で家の地盤が下がってしまい、自宅で暮らす事ができない赤井仮設団地の自治会長・笠井浩之さん(53)。稲作中心の農業を営んでいるが、地震の影響で田んぼが被害を受けているという。
実は4月の地震で、田んぼの横を流れる木山川の堤防周辺の地盤が沈んでしまい、大型の土のうを積んでいたものの、6月の大雨で土のうの堤防が決壊。一気に泥が流れ込んでしまったという。田んぼが泥でぬかるんでいると手作業で刈り取るしかないため、手間と費用がかかる。
■子どもたちが買い物する場所を…
一方、仮設住宅の中で商売を再開させた人もいる。元々、益城町で「岡本商店」を営んでいた矢野好治さん(48)。地震でお店も自宅も全壊してしまったという。しかし、今月6日、仮設住宅で暮らす子どもたちのために益城町「テクノ団地」で小さなお店を再開させた。
矢野さん「子どもたちが買い物する場所がないんですよね。仮設住宅に入居していると、駄菓子とか持って来たら、ものすごく喜んでくれて。(喜んでもらえるのが)一番です。みんな被災したので、みんなが楽しく喜んで生きていければ」
矢野さんは、震災前から販売していた自家製のプリンを“益城プリン”と名付けて売っていた。「益城は元気ですよ」というのを県内外に発信したいという思いからだったようだ。
■他者に目を向ける
今回、取材に行った避難所では、高齢者にお弁当のおかずを分けている人の姿を見た。こういう時こそ自分の事だけではなく、他者に目を向ける事が大切だと感じた。
岡本商店の矢野さんも、もうけは少ない駄菓子だが、子どもたちが喜んでくれるからと、お菓子を通して子どもたちの心を癒やしていた。
笠井さんの田んぼでは、稲を手で刈らないといけないため、笠井さんは「ボランティアの方々の力を借りたい」と話していた。
私たちも他者に目を向けていかないといけないと思う。