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誰がどう賄う?「原発事故の費用負担」

2016年10月14日 17:10
誰がどう賄う?「原発事故の費用負担」

 東京電力・福島第一原発では、今も廃炉に向けて数千人の作業員が働いている。廃炉にはこの先、あと40年はかかるとも言われている。中央大学法科大学院・野村修也教授が解説する「会議のミカタ」。14日のテーマは「原発事故の費用負担」。


――事故処理の費用はどれくらいかかるのか。

 政府や東京電力は、被害者に対する損害賠償に約9兆円、廃炉や汚染水対策などに約2兆円を見込んでいるが、それをはるかに上回ると懸念されている。

 先週、経済産業省で開催された「東京電力改革・1F(福島第一原発)問題委員会」でも、原発事故の費用負担がテーマになった。委員会の初会合では、原発事故をめぐる損害賠償や廃炉費用などの負担の在り方や、東京電力の今後の経営の在り方などについて議論された。


――原発事故に関する費用が膨らんだ場合、誰がどう負担することになっているのか。

 まず、損害賠償については東京電力が支払うが、それを国や他の大手電力事業者が支援する仕組みになっている。国の支援分は、将来的には東京電力などから回収する予定だが、東京電力や他の電力事業者の負担分は、電気料金に上乗せして消費者に転嫁される仕組みになっている。

 一方、廃炉や除染に要する費用は東京電力が負担するほか、国も一部負担している。この分は東京電力の株式の売却などで賄う予定だが、足りない部分は私たちの税金が使われている。


――今後、膨らむことが予想される費用はどのように賄っていくのか。

 まず、損害賠償の仕組みとの関係では、他の電力事業者に「新電力」を加えるかどうかが問題になる。新電力というのは「電力自由化」によって新規に参入した事業者で、その中には再生可能エネルギーで発電をしている会社なども含まれている。

 もし、これらの事業者にも賠償負担を求めると、そこに切り替えた消費者も電力料金に上乗せされ、賠償資金を負担する形になる。東京電力から別の事業者に切り替えた消費者からすると、ちょっと納得しづらい部分もある。

 一方、廃炉や除染の費用については、東京電力がどこまで賄えるかがポイントになる。会議の中で、東京電力の広瀬直己社長は「国の救済措置を受けることなく、福島の責任を全うしたい」と表明はしている。

 ただ、「電力自由化」によって新規事業者の参入が相次ぎ、経営環境は厳しくなっていると指摘されている。そうなると、税金投入といった形で、私たち国民が負担するという議論になるかもしれない。東京電力改革・1F問題委員会・伊藤邦雄委員長も国民負担について「最後の最後の手段としてはあるかもしれない」などと含みを持たせている。

 こうした議論を深めていくためには、廃炉費用がどこまで膨らむのか、その規模感を明らかにすることが必要だ。


――仮に廃炉費用の一部を税金で賄うということになった場合、国民の納得感は得られるのか。

 今回のポイントは「非連続の東電改革」。国民負担を求める前に、何より東京電力の経営改革が必要だ。しかも、非連続の、つまり、これまでの延長線上ではない抜本的な改革が求められる。

 東京電力は去年、中部電力と火力発電事業などを行う新会社を設立した。燃料の調達コスト引き下げを狙った取り組みだ。さらに今年4月には「発電」「送配電」「小売り」の3つの事業会社に分社化した。これも経営の効率化を狙ったものだ。

 今回の会議では、さらに他の企業との「提携」や「再編」といった経営改革が求められている。国民に負担をお願いする前に、まずは東京電力が、こうした改革の動きをさらに加速させることが必要だ。