豆腐を常温で? 進化する食品保存技術
豆腐は冷蔵庫で保存するものだと思っていたが、常温で保存できるようにしようという厚生労働省の方針が示された。海外ではすでに市販されている常温保存の豆腐。進化する食品の保存技術を取材した。
■“常温豆腐”登場へ
冷蔵保存で早めに食べる必要がある豆腐。いま、この豆腐の保存方法をめぐり、新たな動きが出ている。
11月29日、厚生労働省の専門家会議は、豆腐の常温販売を認める方針を示した。豆腐は現在、冷蔵で保存することが義務づけられているが、早ければ来年にも常温保存が認められる見通しとなった。
豆腐の常温保存についてネットでは――
「常温豆腐食べてみたい」
「ちょっと違和感を覚える」
「添加物とか入っていたら嫌だな」
という声があがった。
■進化する食品の保存技術
豆腐は本当に常温保存ができるのだろうか。静岡・御殿場市にある豆腐工場を訪ねた。
実はこの会社は、賞味期限が約半年という長期保存ができる豆腐を製造している。そして、この技術に常温保存の秘密がある。豆乳を殺菌し、パッケージに詰めるまでの工程を全て無菌状態にした機械の中で行っている。そのため、半年間保存しても菌が繁殖せずに長期間の保存ができるのだという。
パックに詰めたばかりのものを空けてみると、まだ液状だった。豆腐を紙パックに詰めたのではなく、紙パックの中で豆腐を作っている。入っているのは豆乳とにがりだけで、長期保存のための添加剤を一切入れていないという。
実際に、このメーカーの豆腐は、すでにイギリスやドイツなどで、常温で販売されているという。
■豆腐以外にも
技術の発達で可能になった常温保存や長期保存。スーパーやコンビニでも長期間保存ができる食品が数多く販売されている。
冷蔵で1か月半以上も保存できるサラダや、常温でも保存できる牛乳。冷蔵での長期保存を意味するロングライフチルドという名前の商品もあった。
■包装に使うのは…
静岡県にある総菜を製造している会社では、真空パックで冷蔵で約30日保存できる総菜を販売しているが、11月に新たな商品を発売した。
包装に使っていたのは、空気中にある窒素だ。従来の真空パックと異なり、中身がつぶれにくい包装を開発し、食感なども追求したとのことだ。
■安全性は大丈夫?
気になる安全性について、食品の安全性に詳しい専門家の垣田さんはこう語る。
Q.保存期間が長い食品の安全性は問題ないのか?
「安全性をクリアして販売されている物ですから、安全性ということでは心配ない」
「1つは添加物が気になると思うが、包装技術など色んな技術によって日持ちを長くすることができるので、そういった添加物に頼る必要性はない。一般の加工品と比べ添加物は少なくて済むという利点はある」
共働きや高齢者世帯の増加に伴って、今後も需要の増加が見込まれるということだ。
■食品廃棄対策に?
保存方法が進化する一方で、家庭で気づいたら期限が切れて捨ててしまうこともある。実は、食品の廃棄は大きな問題になっている。
農林水産省によると、食べられるのに捨てられてしまう量は、日本で年間632万トン。国民1人あたり、毎日、茶碗1杯分を捨てている計算だ。このうち約半分の302万トンが家庭で捨てられている。
その理由としては――
1.鮮度の低下、腐敗、カビの発生
2.消費・賞味期限が過ぎた
という答えが多かった。
国や食品メーカーには、長期保存できる商品が広がることで食品の廃棄を減らせるという期待もあるようだ。
保存技術も進化しているが、冷蔵庫もインターネットにつながることで進化している。冷蔵庫が保存期限切れになる食品を教えてくれてたり、ネットショップに自動で発注をしてくれたりするのが当たり前になる社会もそう遠くないかもしれない。