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いざ五輪へ 東京ボランティア戦略を考える

2017年1月6日 17:16
いざ五輪へ 東京ボランティア戦略を考える

 3年後の東京オリンピック・パラリンピックに向け、東京都と大会組織委員会はボランティアの在り方について戦略を練っている。先月13日に開催された組織委員会の理事会では、大会期間中に活動するボランティアの募集を来年にも開始することなどが話し合われた。


――2020年の東京大会では、どのようなボランティアが必要になってくるのか。

 オリンピック・パラリンピックでは一般に、選手村や競技会場の運営に携わる「大会ボランティア」と、観光や交通の案内を行う「都市ボランティア」が活動する。

 例えば、2012年のロンドン大会では約7万人が大会ボランティアとして、約8000人が都市ボランティアとして活躍した。2020年の東京大会では、これら2つのボランティアを合わせて9万人以上に参加してもらうことが計画されている。

 来年夏頃に募集を開始し、書類選考や面接などを実施した上で、2020年に入ったところで事前研修を行う予定。


――9万人というと、ものすごい人数だが、うまく集まるのか。

 ロンドン大会の時は定員の約3倍の応募があったが、昨年のリオ大会ではボランティアが不足したため、人を雇って都市ボランティアの役割を果たしてもらうことになってしまった。

 そこで、重要になるのが「すそ野を広げる」「参加しやすくする」という2点だ。

 「すそ野を広げる」という点では、東京都では既に観光ボランティアや語学ボランティアの制度を始めており、そうした経験が都市ボランティアへの参加を促すことになると期待されている。

 一方、「参加しやすさ」という点では、組織委員会が想定している応募条件は、2020年4月時点で満18歳以上、研修に参加可能、大会ボランティアは10日、都市ボランティアは5日以上、活動できる、などとなっている。しかし、「これでは参加しにくい」といった声も聞かれる。

 内閣府の調査によると、ボランティアに関心があるという人の割合は59.6%だが、実際に経験がある人は23.3%にすぎない。参加の妨げになる要因として最も多かったのは「活動に参加する時間がない」という回答だった。

 その意味では、徐々に広がりつつある企業でのボランティア休暇や、大学等でのボランティアの単位認定などを広げていくことが必要となる。


――2020年の東京大会では、どんなボランティア活動が目指されているのか。

 ポイントは「東京大会の3つの目標」。2020年の東京大会は「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」という3つの目標を掲げているので、ボランティア活動も、この3つにつながるものでなければならない。

※全員が自己ベスト

 ロンドン大会では、大会ボランティアを「ゲームズメーカー」、すなわち「大会を創る人」と呼び、ボランティアを“プロ”として扱ったことが成功につながったと言われている。東京大会でも、ボランティア全員がプロ意識を持って自分のベストを尽くして活動できるようにすることが大切だろう。

※多様性と調和

 働く世代や子育て世代も、児童や生徒も、障害のある方なども、それぞれの事情に合わせて参加できる多様なボランティア活動であることが必要だろう。

※未来への継承

 ロンドン大会では、オリンピックを契機にボランティアの機運が高まり、大会から1年以内に、実に7割のロンドン市民がボランティア活動に参加したという。オリンピック後も、その文化が継承された形となった。

 2020年の東京大会でも、日本のボランティア活動に素晴らしい遺産が残るとよいものだ。