“小池塾に4000人”政治塾の意義とは?
7日、小池都知事が主宰する政治塾「希望の塾」で、夏の都議選に向け、候補者を絞り込むためなどの試験が行われ、約1600人の塾生が挑んだ。そもそもこの「政治塾」とはなんだろうか。意義と歴史からひもといてみる。
■“小池政治塾”に約4000人
小池都知事の政治塾の塾生は18~82歳まで約4000人。政治家志望の人だけではなく、単に政治に関心があって政治を学びたい、という人もいて幅広い人が入塾している。
授業は、都政改革や待機児童問題などをテーマに専門家の講演があわせて6回。受講料は男性5万円、女性4万円、学生3万円で、試験に通った人の中には実際の政策立案に関わる機会も予定されている。
政治塾ならではの経験が得られそうだが、小池都知事からすると、やはり都議選を見据えていることになる。小池都知事としては塾生の中から都議選でたくさん当選者を出し、都議会での運営を有利に進めたいという狙いがあり、塾生から40人以上の候補者擁立を目指すとしている。
■政治家を志せるチャンスに
実は、こうした“選挙戦略”ともいえる政治塾は、小池塾に限ったことではない。例えば、当時大阪市の市長だった橋下徹氏率いる大阪維新の会が開いた「維新政治塾」や名古屋市長の河村たかし氏が開いた政治塾は、いずれも政界に自分と同じ考えの仲間を送り出そう、という狙いだった。
特に2012年に開講した「維新政治塾」は2000人規模が受講し、その年の衆院選で塾生16人を当選させた。では、政治塾とは、政治家が自分の勢力を広げるために作るものだろうか。確かにそうとも聞こえるが、政治システムに詳しい飯尾潤教授は「特に、地方では、政党法上、地方政党を簡単に作れないため、状況を変えたい、政治勢力を作りたい、という場合に有効だ」と指摘する。
さらに、政治塾には、大事な役割もある。それは、政治家に必要だといわれる地盤(組織力)、看板(知名度)、カバン(資金力)を持たない、でも政治家になりたいという人にとって、政治塾は有効なルートになる。つまり、官僚だったり、二世、三世でなくても政治家を志せるチャンスになる。
■多くの政治家を輩出した「松下政治塾」
そうして実際、多くの政治家を生み出したのが現在のパナソニック創業者・松下幸之助氏が設立した松下政経塾だ。1980年入塾の第1期生には、野田佳彦前首相もいた。当時の映像をみても若かりし野田前首相の姿が映っている。他にも、原口一博元総務相や前原誠司元外相、玄葉光一郎元外相などを政界に送り出すなど、民進党の中枢を担う政治家を多く輩出している。
松下氏が塾を設立した頃といえば、ロッキード事件などで、政財界が信頼を大きく失っていた時代。そんな中、日本の将来を憂えた松下氏が、世界に通用し「国家百年の計を創り、実践する人材を」育成せねばと、84歳のとき私財をなげうって、松下政経塾を作った。
ただ、今では、卒業生から、「松下氏と直接話すことに意味があった。松下氏亡き今となっては、設立当時の松下氏が掲げた理念は薄れた」といった意見も聞かれる。
■未来に活きる人材を―
確かに政治塾といえば、知名度の高い政治家が立ち上げることが多いが、塾の魅力を保ち続けるのは、なかなか簡単ではないのかもしれない。
今回のポイントは「未来に活きる人材を」。政治塾の塾生は、主宰者の“人気”や“勢い”を利用して、選挙に当選することだけがゴールではない。主宰側も、政治や選挙のノウハウを教えるだけでなく、「人材を育てる」というより広い視野にたって政治塾を運営してほしいものだ。