働く人に合わせたアレンジを…転勤のミカタ
労働政策研究・研修機構が1852社5827人の働く男女に対し、「転勤」について聞いたアンケートによると、「転勤は家族に与える負担が大きい?」との質問に「大きい」と回答した人は85.8%いた。そして、39.6%は「できれば転勤したくない」と答えた。
働く本人だけではなく、その家族にとっても「転勤」は大きな問題のようだ。
こうした状況を改善するため、今月11日、厚生労働省で開かれたのが有識者による「転勤に関する雇用ポイント」策定に向けた研究会。
この研究会では、転勤が仕事と家庭生活の両立を妨げないようにするためには、企業がどのような取り組みをするべきか議論が交わされた。3月末までに課題を洗い出し、企業に対して、ワークライフバランスに配慮した転勤についての指針を示すとしている。
■転勤は多い年齢層は?
今回の会議ではまず、課題を把握するため、企業と働く男女に対して行ったアンケート結果が公表された。それによると、転勤が多い年齢層は国内・国外ともに30代、40代が多いということがわかった。
ただ、この世代は「子育て」や「親の介護」などで忙しいため、今回の会議で公表されたアンケートを見ても、転勤について「介護がしづらい」と答えた人は75%、「育児がしづらい」との回答は53%だった。
■転勤に見られる男女差
では、企業が社員を転勤させる目的は何か。その点について、66.4%の企業が「社員の人材育成」と答えた。つまり、企業側は転勤先で新たな経験を積ませることで、ひいては将来、幹部になるための管理能力も育てようとしているわけだ。
この点で興味深いのが、転勤に見られる男女差だ。「男性で転勤したことある人は、ほとんどいない」と答えた会社は7.8%にとどまるのに対し、女性については51.7%にも上った。
結果にはいろいろな見方があると思うが、このことは女性を幹部候補生として育成していないと見ることもできるし、女性のほうが出産や育児など転勤しづらい事情が多いために、結果として女性が管理職に昇進しづらくなっている可能性も指摘できるのではないか。
■転勤をアレンジする
では、どういった対策が必要なのか。そのポイントとなるのが「転勤をアレンジする」。何より重要なのは、若いうちは転勤するのが当たり前、経験を積んで幹部を目指すなら転勤すべきといった風潮を見直すことだ。転勤には大きな負担が伴うので、可能な限り社員の事情に合わせてアレンジできるようにすることが大事だ。
すでにそうした方向で動き出している企業もある。例えば「キリンビール」では、社員の事情に合わせ、最大5年間、転勤の対象とならない時期を作ることができる制度を設けた。このため、子どもが小さいうちは転勤をしなくてもすむという働き方もできる。
ソフトウエア開発の「ニコンシステム」では、別の会社で働く配偶者が転勤になった場合でも、業務内容によっては、転勤先の自宅から仕事を続けることも可能だという。
転勤が社員を振り回すのではなく、社員が転勤をアレンジできるようにすることが大事だろう。