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コアラがいなくなる?大阪の動物園で何が…

2017年1月27日 20:09
コアラがいなくなる?大阪の動物園で何が…

 大阪の動物園で、今いる1頭を最後に、今後、コアラの飼育が中止されると報じられ話題になっている。動物園の中でも人気のコアラ。飼育中止の背景に一体、何があるのか。


■飼育中止にネットでは…

 大阪市の天王寺動物園は、将来的にコアラの飼育を中止することにした。コアラは大阪府でここでしか見られないという。このニュースに対してネットでの反応は―

 「寂しくなりますね」

 「コアラって動物園にいるイメージだった」

 「いなくなる前に見に行こうかな」


■飼育にかかる“コスト”

 オーストラリアからコアラが初めて日本にやってきたのは1984年。その姿をひとめ見ようと当時、コアラブームが起きた。30年以上たった今でも人気があるコアラ。天王寺動物園の園長はこう話す。

 「コアラの寿命から考えると、あと10年くらいは頑張ってくれると思ってまして、10年の間は、コアラの展示と飼育を頑張る」

 では、なぜ今後、飼育をやめることになったのだろうか。園長はこう答えてくれた。

 「繁殖の難しさが1つ。もう1つは、コアラを飼育するのに、コストがものすごくかかります」

 この動物園では、昨年度、全ての動物のエサ代にかかった費用は約1億5000万円。その内、コアラは約6000万円で、全体の4割ほどに当たる。総合的に考え、コアラの飼育を断念することを決めたということだ。園長によると、コアラはユーカリしか食べないので、特別に栽培を依頼しているそうだ。


■日本では自生しないユーカリ

 大阪のユーカリ生産者を訪ねた。日本では自生しないため、特別に栽培されている。天王寺動物園では自然災害などに備えて5か所に栽培を委託していて、その栽培費用はすべて園が負担している。

 最盛期には、全国に9園で96頭いたコアラ。繁殖の難しさやコストがかかることなどから、現在では8園で40頭と半分以下に減少している。


■ネットで募った“コアラ支援”

 そんな中、愛知県の東山動植物園では、インターネットで広く支援を募る取り組みが行われた。当初、100万円を目標にしていたということだが、450万円を超える支援金が集まるなど、大きな反響があった。集まった支援金は、コアラのエサ代として使われたということだ。

 エサのユーカリにも好みがあるとのことで、コアラは新芽の柔らかい部分を好み、残った部分は、ほとんどが捨てることになるという。

 東山動植物園では、今後もコアラの飼育を続け、繁殖にも力を入れていきたいとしている。


■本場“オーストラリア”でも…

 現状、日本の動物園のコアラが減っているが、実は、オーストラリアに生息する野生のコアラも減少している。国際自然保護連合によると、コアラはここ20年ほどの間に、約3割も減ったとみられていて、去年、絶滅危惧種に指定された。

 背景にあるのは、ユーカリの木の減少だ。オーストラリアでは、人間によるユーカリの伐採が問題となっている。また、干ばつや森林火災も起きていて、コアラの生息地であるユーカリの木が少なくなり、コアラの減少につながっている。

 取材した東山動植物園の園長は、絶滅に瀕している動物を動物園で展示して、皆さんに知ってもらうことは意義のあることだと話していた。

 私たちは、いなくなると聞くと急に注目してしまう。しかし、大事なことは、普段からどれだけ注目しているのかということではないかと思う。注目し、時々動物たちの様子を見に行く。それが動物園で暮らす動物たちを守っていく“秘けつ”になるのではないかと思う。