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正殿が“全焼”火災から5年 「首里城」復元と継承 若き宮大工の思い【バンキシャ!】

2024年10月28日 10:00
正殿が“全焼”火災から5年 「首里城」復元と継承 若き宮大工の思い【バンキシャ!】
5年前の2019年10月31日、沖縄県の首里城で火災が発生し、正殿などが焼けてなくなりました。現在、全国から職人が集まって復元工事が進められています。バンキシャ!は、22歳の若手宮大工に密着。大きな木材に使ったことのない工具。悪戦苦闘する日々を支える存在とは。【バンキシャ!】

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琉球王国の歴史を伝えてきた首里城。沖縄戦で全焼しましたが、1992年(平成4年)に正殿などを復元。沖縄の歴史と文化を象徴する存在でした。

しかし、5年前の2019年10月31日、正殿で火災が発生。火は瞬く間に燃え広がりました。正殿を含め、合わせて7棟が全焼しました。

そして今、かつての姿をよみがえらせようと、「令和の復元」が進められています。その一大プロジェクトをバンキシャ!が取材。復元工事の現場を特別に見せてもらいました。正殿を復元するため、全国から集まった職人の数はおよそ70人。そのうちの1人が、沖縄生まれの宮大工・後藤亜和さん(22)。伝統の技術を受け継ぐ、若き宮大工に密着しました。

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まず向かったのは、正殿の復元工事が行われている建物の中。正殿は3階建てで、高さおよそ15メートル。中心にある御差床(うさすか)と呼ばれる場所に案内してもらいました。

正殿復元の総責任者の清水建設・川上広行さん
「ここが中央になっていて、王様が座る場所。一番1階で高貴な場所になります」

国王が座る格式ある場所。柱には金の龍や雲が描かれます。そして、最上階の3階へ行くと、首里城の代名詞の一つ、赤瓦。およそ6万枚が屋根に取り付けられ、火災で焼け残った瓦も再利用されています。

どんな作業が行われているのでしょうか。

正殿復元の総責任者・川上広行さん
「3回目の仕上げの目地漆喰(めじしっくい)」

目地漆喰とは、瓦が台風などで飛ばされないよう、隙間に漆喰を塗って固める技法です。赤瓦と白のコントラストが美しく、古くから用いられてきました。「令和の復元」では、こうした伝統的な技術を若い世代へ継承する目的もあるといいます。

職人「京都。23歳」

職人「神奈川県。24歳」

職人「長野県。27歳」

正殿に携わる職人の3分の1近くが30歳以下だといいます。

職人(26)
「後世に残る仕事なので、結構胸張ってやっていきたい」

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若手職人のひとり、後藤亜和さん。沖縄生まれの22歳。大工になってまだ4年目です。10人きょうだいの二女。建築士である父親の影響で大工になったという後藤さん。その父親に勧められて復元工事に携わることになりました。

宮大工・後藤亜和さん(22)
「たくさんの大工さんがいる機会は少ないので、学べることはたくさん学んでいけたらいいな」

この日は、木材の加工作業。普段使っているものより大きなのこぎりで木材を切っていきます。

宮大工・後藤亜和さん(22)
「首里城の柱は丸柱なので、丸柱のところに入ってくるので、丸く加工して」

作業を任されたのは、正殿の2階にある天井長押(てんじょうなげし)。柱を固定し、天井を支える役割があります。くぎを使わずに、丸い柱と組み合わせるため、つなぎ目を丸く加工します。

木材を削るノミも普段の倍以上の長さ。なかなかうまく扱えない。その様子を見つめていたのが、大工歴42年という竹山徹さん(59)です。

大工歴42年・竹山徹さん(59)
「半分ずつ、ゆっくり」

「ペタッとつけてよ、ほら。ここ当たるやん。こうやって順番にとる。半分か3分の1ずつ」

宮大工・後藤亜和さん(22)
「ありがとうございます」

後藤さんは、教えてもらったやり方で慎重に削ります。

大工歴42年・竹山徹さん(59)
「ちょっとずつ取ったらいい。あんまり取りすぎたらあかん」

ひとつひとつ、毎日が勉強です。ランチタイムは先輩たちとテーブルを囲みます。

宮大工・後藤亜和さん(22)
「竹山さんも(お弁当を)自分で作られているんですよ」

バンキシャ!
「毎日作ってるんですか?」

大工歴42年・竹山徹さん(59)
「毎日作るのはめんどい。冷凍しておいておく。休みの日に」

「ハム落ちたで、3秒ルール」

後藤さん、毎日持ち歩いているものがあります。作業の手順や注意点がびっしり書かれたノート。先輩職人から教わったことを書き留めているといいます。

宮大工・後藤亜和さん(22)
「初日にいろいろ学ぶことが多かった。竹山さんから教えてもらったことを書いてます」

若い世代に伝統技術を伝える場でもある「令和の復元」。

大工歴42年・竹山徹さん(59)
「すごいことやってきたんだなと、いつか思うときが絶対来る。すごいことやってきたんだと、いつかこの子たちの宝になる」

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若い世代の職人だけでなく、新たな技術もこの復元工事を支えています。

作られていたのは正殿の入り口に飾られる龍の柱、龍柱(りゅうちゅう)です。失われた龍柱を過去の文献や写真を基に3Dで再現。それをプロジェクターで石材に投影します。これで、龍の形を正確に彫ることができるといいます。

琉幸建設・伊計安さん
「平成の時はそういった手法ではなく、人間の目でうろこ一つ一つ。マッピングを用いた方がより早い」

「令和の復元」では、工事の作業手順や写真をデータで保存し、次の世代のために残していくといいます。

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首里城の復元に携わる後藤亜和さん。仕事終わり、この高台から見える街の景色が好きだといいます。

宮大工・後藤亜和さん(22)
「一つ一つの家庭があるんだなと、ほっとして見ちゃう」

正殿の復元工事が終わるまで、あと2年。

宮大工・後藤亜和さん(22)
「県民として、この仕事に携われるのはすごく意義深いもの。今後これからいろんな仕事をしていく上でも、すごく大きな大事な経験や思い出になってくると思うので、丁寧に大事に仕事をしていけたらいいなと」

(10月27日放送「真相報道バンキシャ!」より)
最終更新日:2024年10月28日 10:00