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“働きすぎ”先生の1日…過労死ライン超え

2017年5月11日 20:00
“働きすぎ”先生の1日…過労死ライン超え

 学校の先生の「働き過ぎ」が問題になっている。特に公立中学校教師はその6割近くが過労死の目安を超えた長さの時間外労働をしていることも明らかになった。その実態を取材した。


■部活指導は学校外の経験者

 東京・杉並区立の中学校。バスケットボール部の生徒たちを指導しているのは、先生ではない。大学まで14年間、バスケットボールの経験がある23歳の男性だ。杉並区では4年前から教師の負担を減らすため、中学の部活指導を学校外の経験者に依頼している。

 普段は佐川急便で働いて、今までの経験を生かしたいので部活動の活性化に参加したという。今年度からは、大会への引率などもできるようになった。これまで部活動をみていたのは、バスケ経験のない校長先生。いまは部活の時間を使って校長の業務ができるようになったという。


■先生の1日を取材

 働き過ぎが問題となっている先生の仕事とはどのようなものなのだろうか。東京・世田谷区の中学校の先生の1日を取材させてもらった。

 保健体育が専門の古矢優希子先生(28)は毎朝5時に起きて、7時過ぎに出勤。職員室には、すでに他の先生たちの姿があった。まずは前回の授業の後、生徒に感想を書かせたカードに目を通す。

 生徒たちが登校する前に、校庭で授業の準備をするのも日課だ。体育の授業のほかに、総合学習の時間には、専門外の授業で教壇にも立つこともある。休憩時間はほとんどない。

 授業の合間は先生同士の会議。今月末に控えた運動会について打ち合わせだ。給食準備の合間にも出席簿を付けたり、生徒たちに囲まれ、行事に向けた相談にも乗る。

 古矢先生「頑張れないって思ったら、もう一回先生の所おいで。そしたらみんなでもう一回話し合おうよ」

 10分ほどで給食を食べると、すぐに次の仕事へ。この日の昼休みは全くなかった。生徒たちの下校時刻を過ぎても。多くの先生たちが職員室に残って仕事をしている。

 古矢先生「学習カードをチェックしたりとか、日本語のプリントのチェックとか、クラス掲示の確認とか、日曜日とか土曜日に来てやることもあります」

 給食以降、何も食べないまま、夜8時過ぎまで学校に残って仕事をする日も多いという。


■教師は時間外労働の手当は支給されない

 実は、教師は残業をしても時間外労働の手当は支給されない。その代わり、基本給の4パーセントが給料に上乗せされるのだが、この金額は、51年前の1966年の時間外労働の平均時間、月8時間をもとにした割合だ。今は6割近い中学校教師がその10倍にあたる月80時間以上の時間外労働をしているのだが、4パーセントの上乗せ分は見直されていない。しかもこの時間外労働は、いわゆる“過労死ライン”を超えているのだ。


■命の危険すら感じた

 別の公立中学校の現役教師は、サッカー部の顧問を務めていた去年夏、練習や試合の引率などでほとんど休みがなく、命の危険すら感じたと話す。

 サッカー部顧問をしていた現役の中学教師「8月の半ば過ぎた辺りから、朝起きて動悸(どうき)と冷や汗がしてしまって、無理をして行っていたら入院か過労死していましたね。非常に苦しい時期でした」

 部活のやり方について、先輩教師や保護者からのプレッシャーを感じていたという。

 「(先輩教師からは)『若いからやれ』みたいな風潮なんですよ。『体力もあるし、独身で男性だから大丈夫だろう、やれ』と」

 「(保護者からは)『先生、何でもっと長くやらないんですか』と。『日曜日もやってくださいよ、練習試合もやってくださいよ、駄目じゃないですか』と」


■外部指導員を導入

 東京・世田谷区の古矢先生の中学校でも、少しでも教師の負担を軽くしようと外部指導員を導入。指導員には、1時間800円の謝礼が区から渡される。卓球部を指導するのは、かつて少年野球の監督を務め、卓球経験もある地元の82歳の男性。

 部活動は平日の夕方や土日の予定が多いため、外部指導員を務めるのは退職した人や学生などが多いのだ。この中学校でも、18ある部活のうち、外部指導員がいるのは半分だけで、人材集めに苦労している学校も多いのだ。


■部活動以外に保護者が…

 さらに校長は、部活動以外にも、教師の負担となる原因はあるという。校務で大変だと感じるところについて聞いてみると―

 校長「保護者対応ですね。保護者の方と話そうと思ったら、仕事が終わった後になるから夜7時とかに設定しますよね」「学校もサービス業というか(保護者から)もっとサービスしてほしいとか、サービスできないのかと(言われる)」


■子どもたちひとりひとりと向き合いたい

 夜8時過ぎ。ようやく仕事を終えた古矢先生は「もうちょっと、子どもと一緒にゆっくりする時間がほしいんですけどね」と話す。子どもたちひとりひとりと向き合う時間をもっと持ちたいと感じているという。世界的に見ても勤務時間が長い、日本の先生たち。その働き方の改革が急がれている。