農業にもIT!?“スマート農業”とは─
先端技術を駆使した新しい農業、“スマート農業”。様々な技術を駆使することで、気候の変化や災害などによる農業の不安定さや、農家の人手不足の解消にも役立つと注目されている。「私たちの食卓と“スマート農業”」を考える。
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今週、都内で開催されている農業技術の見本市『アグリビジネス創出フェア アグロ・イノベーション2017』は、農林水産省主催のイベント。200以上のブースが出展され、6日までの3日間で延べ1万2000人の来場が見込まれている。
中でも特に注目されているのが、先端技術を駆使した新しい農業、“スマート農業”。
農業女子PJ井関農機・的場朱里さん「機体につけたQRコードを、お手持ちのスマートフォンで読み取っていただくことで、耕うんの仕方のちょっとしたコツなどを詳しく説明しております」
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■“スマート農業”とは?
スマートフォンならぬ“スマート農業”とは、インターネットやロボットなどの新しい技術を活用する「新しい農業」のこと。
農作物は気候の変化や災害に大きく左右され、値段もかわっていく。そこで、様々な技術を駆使することでこうした農業の不安定さを解消していこうと注目し、国がすすめているのが、「スマート農業」だ。
“スマート農業”の先進国といえばオランダ。その成功例が、2段にして空間を有効活用し、LED照明で光を与える水耕栽培の農場。
こうした“スマート農業”は日本でも成長産業として期待されている。
■日本での工夫は
例えば、農園の位置情報と気象データを連動させ、細かな天候のリスクを農家に自動的に知らせるシステム。
岩手県立大学ソフトウェア情報学部・南野謙一さん「(天候の異常で)警戒が発生したときにはメールで生産者に情報を伝達する。気候変動に対応する栽培管理ができるようになる」
さらに、作物ごとに必要な太陽光の量をセンサーで感知し、パネルの角度が自動で変わることで余分な太陽光を遮断し、作物を高温障害から守ることが期待できるという発電システムも。
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■人手不足の解消にも
さらに、“スマート農業”は農家の人手不足の解消にも役立つと期待されている。
農業従事者数はこの7年で3割も減るなど、急速に“農業離れ”がすすんでいる。背景には、農業従事者数の高齢化や後継者の不足といった問題もある。
そこで国のすすめる“スマート農業”で、例えばロボットの活用で人手不足を解消することが期待できる。また、熟練の人たちの“ノウハウ”をデータ化して他の人が活用することで、人手不足を解消する。
さらに、ノウハウがデータ化されていると、自分たちにも農業ができるのではないかということで、若い人たちの新規参入も期待されている。
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■農家側の受け止めは
積極的に取り入れる農家ばかりではないのが現状。
東京・西東京市で家族4人が経営する比較的小規模な農園「野菜屋 やすだ」の安田加奈子さん(32)は、4年前に家業を継いだあと、野菜の品種を増やすなど農業に意欲的だが、“スマート農業”は現状では「導入できていない」という。
安田加奈子さん「野菜にかける時間が減れば自分の子供をたくさん見る時間が増えますし、便利なもの(技術)があればやってみたいと思うけど、ご覧のように、ちょっとずつ(野菜の栽培を)やっているので、全部オールマイティーに合うもの(技術)は少ない気がして、なかなか手を出せない」
この他にも、フェアの参加者からは「経済的に導入が難しい」「投資に見合う利益が見込めない」などの声も聞かれた。
■導入コストの問題に、対策は
今回のポイントは、「グローバル農業の“担い手”作り」。“スマート農業”は規模の大小にかかわらず活用できるものだが、特にお金がたくさんかかる最先端の技術は、かなり大きな規模でなければできない。
グローバルに輸出をしていくような会社をつくっていく、制度的な“担い手”作りが必要だ。