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持続可能な八重山の発展を目指す『僕らの未来は、八重山は、僕らがつくる』【ちゃれんじ探究クラブ】

2022年8月21日 14:17
持続可能な八重山の発展を目指す『僕らの未来は、八重山は、僕らがつくる』【ちゃれんじ探究クラブ】
日テレNEWS
――生徒が自ら課題を設定し、情報を集めて分析して答えを導き出す。いわゆる「探究学習」が高校の授業で本格的に導入されています。このコーナーでは、その探究学習に取り組む高校生にお話を伺います。2回目のゲストは、沖縄石垣島から当銘由羅(とうめ・ゆら)くんです。当銘くん、よろしくお願いします。

沖縄県立八重山高校3年生の当銘由羅です。よろしくお願いします。

――当銘くんが取り組んでいるプロジェクト名を教えてください。

『僕らの未来は、八重山は、僕らがつくる』というプロジェクトです。

――力強いタイトルでしたが、どんな活動を具体的にしているんでしょうか。

八重山の魅力の発見や発信を通じて、持続可能な八重山の発展を目指す活動をしています。

――八重山の地域おこしにつながるような取り組みだということですが、具体的にどのような取り組みですか。

去年開かれた「やいまSDGsシンポジウム」というシンポジウムの実行委員長を務めたり、「Get The Point」というSDGs学習ゲームがあるんですが、その八重山版を作成、普及を目指して八重山の小中学校に配布したりしています。

――「やいまSDGsシンポジウム」というのが去年、開催されたということですが、どんなシンポジウムなのでしょう。

やいまSDGsシンポジウム実行委員会には、経営者の方や経済アナリストだったり、僕の様な学生だったり、さまざまな職業や年齢の人が集まっています。じつは、実行委員会にも島の人もいるんですが、移住者の方が比率的に多かったりするんです。島の人たちももちろん自分たちの島が好きで、魅力を感じられている方もとても多いんですけど、移住者の方々は、違う場所から八重山を違う視点で見ることによって、島の人たちが気づかない良さに気づいてくれていたりするので、島の人もそうですけど、移住者の方いろんな視点が混ざって、八重山の将来について見つめようということを実行委員会では行いました。

――実際にそのシンポジウムを開催してみていかがでしたか。

当日は1500人以上の方が会場に足を運んでくれて、僕の知り合いであったり、島の人たちがいっぱい会場に足を運んでくれているのを見て、僕自身、とてもうれしい気持ちになりました。

――何か変化っていうのは実感としてありますか。

たぶん、これから変化っていうのは起きていくかなって僕自身は思っていて、去年はスタートダッシュを切るために「島にはこういう話題がある、みんなで考えよう」っていうことを最初に言い始めたんですが、今年のシンポジウムは4カ月後に開かれる第2回のシンポジウムから、もっと島の人と移住者の方だったり、いろんなものを超えた話し合いができたらいいなと、僕自身、課題に感じていて、変化っていうのはこれから2、3年起こしていきたいなと思っています。

――そうした中で、もう1つの取り組みとしておっしゃっていた「Get The Point」八重山版をつくる、そして普及させるという取り組みですが、この取り組みはどんな取り組みなんでしょうか。

「Get The Point」というSDGs学習ボードゲームがあるんです。SDGsとかって学校だったら勉強するっていうイメージで、ちょっと硬いなって僕自身は思っていたんですけど、それをこのゲームで遊ぶことによって、自分の体で感じることができるという体験をして、これをもっと八重山の友達たち――僕の同世代だったり、後輩の子どもたちに遊んでもらいたいなと思ったのす。このゲームのオリジナル版は全国で販売されているんですが、もっと身近に感じてもらうために八重山バージョンを作ろうと思い、このシンポジウムに合わせてクラウドファンディングをして、地域の方々から支援をいただいて、ボードゲームの八重山バージョンを作成しました。

――具体的に八重山版は普通の全国バージョンと何が違うんですか。

このゲームでは「資源カード」というのがあって、それを使って「アイテム」をつくろうというゲームなんですけど、「資源」=「ものを作るのに使われる材料」が、八重山の独自の八重山ならではの、例えばサトウキビだったり、八重山で有名な海産物、貝だったり魚だったりがイラストとして描かれていたり――ボードゲームの中でアクシデントが起こったりするんですけど、離島なので台風が来たら物が止まったりとか、そうやってオリジナルバージョンとは違うアクシデントが起こったりします。

――使った子どもたちからの反響や声は、何か届いていますか。

このゲームは、やっている途中にものすごく盛り上がるように設計されていて、すごい教室が盛り上がるし、印象に残っているひと言は「これ観光でさ、お魚さんとか見に来るはずなのに、これがいなくなったら、観光客の人も来なくなるよね」って言ってくれた子がいて、そこまで感じてくれているのかと思って、そこはとてもうれしかったです。

――そもそも、プロジェクトをやろうと思ったきっかけは何だったのでしょう?

きっかけは多分、高校1年生のときで、パイロットを目指し、勉強をずっと一生懸命やっていたんですが、色覚異常という目の病気でパイロットになれないことがわかって…そこから自分の身の周りについて深く考えたときに、僕は、すごく自然が好きだったので、これを生かせるんじゃないかなって思ったんです。よく周りのことについて考えると、自分ってものすごく幸せだったんだなってことに高校1年生の時に急に気づいて、そこから八重山の自然であったり、身の周りの幸せっていうのを守るためには、それこそ次の世代に受け継ぐためにはどうしたらいいんだろうな…っていうのを考え始めたのが、こういう活動するきっかけかなと思っています。

――1つの挫折があったけれども、それをきっかけに周りに視野を広げていった時に、気づきがあって、活動につながっていった…ということなんですね。でも実際にその気づきがあっても、なかなか最初の一歩の行動を起こすってすごくエネルギーも要りますし、勇気も要ると思うんです。そういう中で当銘君の背中を押してくれたこととか、何かありましたか。

たぶん父親のおかげで、ものすごく話をしてくれるんですけど、すごく批判的思考が上手な人で、例えば「ある問題を解決したら、こっちの問題は失われ、こっちでも問題はどうするんだ?」というのを指摘してくれて、その議論が楽しいっていうのを感じていて、この楽しさもこの活動のエネルギーにつながっているかなって思います。楽しいからです。

答えになってないかもしれないので、追加で言うと、自分たちの地域の未来の形を描くっていうのはとても楽しいことで、自分たちは40年後をどういう生活をしているんだろうなとか、自分たちが将来、住むだろう社会を考えるということはとても楽しいことで、それこそ自分がデザインした社会に住むことができるというのは、それぞれに理想は違ったりするんですけど、その中でもいろいろな話し合いをして、理想に近づくような形を作っていくというのは、とても楽しいことだなと思います。

――「NPOカタリバ」が主催する全国高校生マインプロジェクトアワードで、当銘くんの取り組みが「ベストコ・クリエイション賞」という賞を受賞したということなのですが、反響はいかがでしたか。

僕が思っていたよりも反響がすごくて、地域紙の一面に掲載されたり、親戚や知り合いの方からものすごく声をかけていただくことも増えたし、学校の先生からも「おめでとう」って言われていて…「マイプロジェクトアワード」に参加した時点では、“同世代の友人たちがあまり活動に参加してもらえていない”という課題を言ったんですが、最近、その課題が解決しつつあって、同世代の子たちがすごく集まってくれていて、シンポジウムに関しても関心があるって言ってくれている子もいて、「マイプロジェクトアワード」の時からすごく進んでいるなと思っています。

――最後に、どんな八重山にしていきたいか、今の夢を聞かせてください。

このSDGsの達成自体、すごく難しくて、絵空事だって僕自身も思ったりすることもあるんですけど、そこで諦めるんじゃなくて、この地域全体のことを自分事として、より多くの視点から課題解決だったり、島になかった価値を生み出すことを僕自身ができたらなと思いますし、地域全体で島の将来を良くするためには、自分たちに何ができるんだろうかということを考える雰囲気――実行委員会でできていたような、お互いに認め合う、“あの人はこう考えている、じゃあ自分はどうしよう”というお互いを認め合って、さらに自分の考えを深めるということを地域全体でできていけるように、僕もそのひとりとして頑張っていけたらなと思います。

――ありがとうございました。とても力強いお話でした。これからも八重山の未来づくり、頑張ってください!


聞き手 鈴江奈々(日本テレビアナウンサー)
取材協力 認定NPO法人 カタリバ
     全国高校生マイプロジェクトアワード実行委員会