死亡リスク高める「口の衰え」防ぐには?
先日、老化予防について、気になる研究結果が発表された。東京大学高齢社会総合研究機構による研究で、「口の衰えが死亡リスクを高める」ということが明らかになった。
東京大学高齢社会総合研究機構・飯島勝矢教授「特にささいな口の機能の衰えが複数積み重なると、最終的には要介護になってしまったり亡くなってしまったりって方が非常に多いということがわかってきました」
――果たしてそのワケとは?どうすれば口の衰えを防ぐことができるだろうか?
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■要介護や死亡リスクにつながる「口の衰え」
Q:口の衰えというのは、あまり意識しないが?
簡単に言うと、年をとると、かむ機能が衰えていくということだ。それは介護が必要になるリスクや死亡するリスクにまでつながっていることがわかってきた。ここでその研究結果を見ていこう。
調査は東京大学高齢社会総合研究機構によって行われた。介護を必要としない状態の65歳以上、約2000人にまず、この6項目のうち、いくつあてはまるかを調べた。
1:残っている歯が20本未満
2:かむ力が弱い
3:舌の力が弱い
4:舌を巧みに動かせない
5:硬い食品が食べづらい
6:むせやすい
このうち3つ以上あてはまる人は口の働きが衰えている、衰えを感じている、ということになるのだが、約4年間追跡調査をしたところ、死亡率を比べてみると、口の衰えを感じていないグループを1とすると、衰えを感じているグループは、2.09倍、死亡リスクが高いことがわかった。
また、介護が必要になった割合では、口の衰えを感じているグループは衰えを感じていないグループに比べて、2.35倍リスクが高いという結果だった。差が明らかに出ているが、なぜこのような結果が出たのだろうか?調査をした東京大学の飯島教授に聞いた。
飯島教授「(口が)衰えてきますと、例えば硬い物を避けるようになってくると、そうするとそしゃくの筋肉が鍛えられずに、もっともっとかめなくなっていくと、食事の偏りが出てきますと、全身の筋肉も少なくなってくるだけではなく、色んな全体の身体機能の低下につながる」
■肉を食べることの重要性
また、飯島教授によると、特に口の働きが衰えている人には、かみにくいという理由で、肉類などのかみ応えのある食品を避けている人が多い傾向にあったという。たしかに肉は歯でしっかりとかむ必要がある。肉を食べることの重要性を飯島教授は次のように話している。
飯島教授「お肉を食べることによって、タンパク質をとれるわけですけども、それが筋肉を維持していくことにつながります。お肉とお魚にはそれぞれタンパク質はしっかり入っているわけですが、やはりそこにかみ応え、(肉は)しっかりかんでいかなければならないということで、そしゃく能力も維持されますし、積極的に盛り込んでいくことが重要」
■「普通」か「太ってる」人の方が長生きする傾向
お年寄りの中には、肉のかみ応えを嫌うだけでなく、太ることやカロリーを気にして肉を食べるのを避けている人も多いと思う。65歳以上の高齢者1048人の体格と生存率の関係を8年間追跡調査したグラフでは、太い人に比べて赤い線で示した“細い人”の生存率が低くなっていることがわかる。
痩せていると長生きしにくいということになる。それぞれの人の状況もあるので一概には言えないが、中高年にとっては、太っていることが生活習慣病など病気につながるので気にした方がいいのはもちろんだ。ただ、高齢者にとっては、「普通」か「太っている」人の方が長生きしていることがわかる。つまり“ちょい太”でも大丈夫、ということになる。
■むやみに肉を避けず、なんでも「バランスよく」
このことから見ても、太ることを気にしてむやみに肉を避けるのではなく、なんでもバランスよく食べることを心がけて欲しいと思う。楽しんでいろいろなモノを好き嫌いせずに食べること。また、家族や友人とのおしゃべりも大切。口をよく動かして、少しでも口の衰えを防ぐことが健康の秘訣(ひけつ)だ。