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1年は再感染リスク低いか…追跡調査

2021年5月20日 20:45
1年は再感染リスク低いか…追跡調査

新型コロナウイルスへの感染を防ぐ役割を果たす「抗体」について、いつまで体内に残るのかを調べた研究結果が、日本で初めて発表されました。どのような研究なのか、分かりやすく解説します。

■“抗体”いつまで体内に? 日本初の研究結果

この研究は、横浜市立大学の研究チームが20日に発表したものです。去年2月から4月にかけて従来型のウイルスに感染して、その後、回復した250人について、再感染を防ぐ「中和抗体」が感染から1年後にどれくらい残っているかを追跡調査しました。これは、ワクチンの効果がいつまで続くかということにも関係する、重要な研究です。

まず、ポイントとなる「中和抗体」について簡単に説明します。コロナウイルスの表面にはトゲトゲの突起があり、これがヒトの細胞にくっついて侵入することで、感染します。中和抗体は、この突起にくっついて、ウイルスが細胞に侵入するのをブロックする役割があります。

ヒトの体はウイルスが入ってきたことを察知すると、この中和抗体を作ってウイルスと戦います。一度作られた中和抗体は、回復した後も一定期間、体内に残り、再びコロナウイルスが体内に入って来た場合にも、再感染を防ぐ役割をします。

ただ、新型コロナウイルスの場合、この中和抗体がどのくらいの期間、体内に残るのかについて、国内の研究では分かっていませんでした。そこで今回の研究では、感染から1年たった時点での中和抗体の量を調べました。

■1年間は再感染リスク低いか

具体的には、まず、本物の新型コロナウイルスを、実際には感染しないように無害化します。これを、感染して回復した人から採取した血液に混ぜることにより、ウイルスに反応してブロックする中和抗体がどれくらい残っているかを調べました。

その結果、半年後の時点では、従来型のウイルスに感染した人たちのうち、感染した時の症状が軽症・無症状だった人では「97%」、中等症・重症だった人では「100%」中和抗体が残っていたことが分かりました。

1年後の時点でも、軽症・無症状だった人で「96%」、中等症・重症だった人では「100%」抗体が残っていたことが分かりました。つまり、一度感染した人にできた中和抗体は、1年後もほとんど残っているということが分かったのです。あくまでも実験上のデータですが、少なくとも1年間は、再感染のリスクは低いと言えそうです。

■変異ウイルスでは?

今、世界中で猛威をふるっている「変異ウイルス」に対してはどうなのでしょうか。似たような方法で、従来型ウイルスに感染して回復した人から採取した血液に、人工的に作ったイギリス型やインド型の変異ウイルスを混ぜて、中和抗体がどれくらい残っているかを調べました。

その結果、まずイギリス型(N501Y)では、1年後の時点で、軽症・無症状だった人は「79%」、中等症だった人は「98%」、重症だった人は「95%」でした。従来型と比べると、やや低い数値となっています。

インド型(L452R)では、軽症・無症状の人で「69%」、中等症で「92%」、重症で「95%」でした。

どちらの変異ウイルスも、症状が重かった人ほど中和抗体が残っている傾向があり、再感染しにくくなるということが分かりました。

■ワクチン持続効果判断の参考にも

今回の研究結果は、ワクチンの持続効果を判断する上でも参考になるといいます。ワクチンとは、今回の実験のように、人工的に体内に中和抗体をつくり出す仕組みだからです。

研究チームは今後、ワクチンを接種した人の体内に、半年後、1年後の時点で抗体が残っているかも見ていきたいとしていて、実験を行った横浜市立大学の山中竹春教授は20日、私たちの取材に対して次のように話しました。

「ワクチンでも同様な結果になれば、ワクチンの接種回数が1年ごとという可能性も十分、出てくるのではないかなと思います」

つまり、1年に1回ワクチンを接種すれば、効果が続く可能性が出てきたということです。

今回の実験では、従来型ウイルスに感染した人たちの血液に様々な変異ウイルスを投入しても、中和抗体が残っているということが分かったことから、山中教授は「今後のワクチン開発に向けても参考になる」と話していました。

     ◇

感染によって得られた抗体と、ワクチンで作られた抗体とでは、一概に同じ効果があるとは言い切れませんが、今回の研究のように実際のデータを積み上げていくことで、私たちがこのウイルスと闘うための武器が少しずつ増えていくのです。今後は、実際のワクチンを接種した人についての研究結果にも期待したいと思います。

(2021年5月20日16時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)