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園遊会に羽生選手ら 陛下“声かけ”の秘密

2018年4月25日 19:44
園遊会に羽生選手ら 陛下“声かけ”の秘密

25日、東京・赤坂御苑で開かれた春の園遊会。今回は、フィギュアスケートの羽生結弦選手ら平昌オリンピックの金メダリストのほか、国民栄誉賞を受賞した将棋の羽生善治さん、囲碁の井山裕太さんらが招かれた。

天皇陛下「けがをした後の練習は、非常に気をつかっての練習だった?」

羽生結弦選手「はい、学ぶこともとても多く、ある意味ではいいきっかけになったかなと思っています」

招待客に声をかけて回られた天皇皇后両陛下。意外に知らない、園遊会の秘密とは―?

    ◇

【招待客はどう決まる?】
今回は、平昌オリンピックで活躍した選手らが招待された。一部の有名な人たちが来ているという印象があるが、全国から約2000人が集まり、料理も振る舞われる。あまり知られていない園遊会のエピソードを調べた。

25日の園遊会には、デザイナーのコシノジュンコさん、トヨタ自動車の豊田章男社長、作家の林真理子さんらも招かれたが、招待客は各省庁の推薦で決まる。例えば企業の経営者だと経済産業省、外交関係に尽くした人なら外務省というように各省庁が推薦する。

天皇陛下がこうした方々とどんなやりとりをされたのか改めて見てみる。

■将棋棋士・羽生善治氏

天皇陛下「ひと試合すると疲れる、どうですか?」
羽生氏「そうですね、2日間の試合ですと、体重が少し減ったりするときがあります」
天皇陛下「やはり、健康に気をつけて。夫人もそういう点は随分心配されるわけですよね」

■スピードスケート・高木菜那選手

天皇陛下「パシュートというのは、あまり知らなかったんですが」
高木選手「まだ何年か前からしか始まってないので」

■フィギュアスケート・羽生結弦選手

皇后さま「仙台でのパレードもすてきでしたね」
羽生選手「ありがとうございます」
皇后さま「みなさん、あんなに喜ばれて」

25日は午前中、雨が降っていたが、園遊会が雨で中止になったことはこれまでにない。招待客は全国から集まるので極力中止は避けたいという陛下の思いもある。

    ◇

【園遊会とは?その始まりは?】
そもそも園遊会とはどういったものなのか―。
・天皇皇后両陛下が主催
・春と秋の年2回
・赤坂御苑で開かれる
・招待客数は約2500人

もともとは明治13年、今から138年前に国際親善のため外交団を招いて「菊を見る会・観菊会」が行われたのが始まり。

大正時代に開かれた観菊会の様子を捉えた映像には、招待客の中に、ノーベル物理学賞を受賞したアインシュタインとみられる人の姿もある。現在のスタイルになったのは、今から65年前の昭和28年のことだという。

【会場の料理とドレスコードは?】
園遊会は両陛下がいらっしゃる約1時間前から招待客が集まるが、会場にはテントが設けられ、オードブルやサンドイッチなど、ビュッフェスタイルの料理も振る舞われている。

ちまき寿司や焼き鳥などがあるが、名物はジンギスカン。栃木県にある、御料牧場という宮内庁管轄の牧場で育てられた生後15か月ほどの羊を使用しているという。かつて食べたことがある記者に話を聞いたところ、「臭みがなく、やわらかい肉で秘伝のスパイスを使ったタレも絶品」と話していた。

服装については招待状に書かれている。
・男性は、モーニングコートや紋付羽織袴、制服または背広
・女性は、デイドレス、白襟紋付または訪問着など

カメラマンや記者もネクタイ、スーツを着用し、両陛下主催の場の雰囲気を壊さないようにしている。

    ◇

【“お声がけ”の秘密】
園遊会といえば、両陛下と招待客の間でどんなやりとりがされるのかが注目される。過去の映像を振り返ってみると―。

去年4月は、卓球の福原愛選手の結婚生活に触れられた。

■卓球・福原愛選手

天皇陛下「きょうはご主人は?」
福原選手「いま韓国で試合に出場しています」
皇后さま「お幸せにね」
福原選手「はい、ありがとうございます」
天皇陛下「じゃあ、お元気でね。幸せに」
福原選手「はい」

2014年には、歌手のイルカさんの着物に注目された。

■歌手・イルカさん

イルカさん「あのー私、イルカと申します」
皇后さま「まあ、イルカさん」
イルカさん「今日は自分で描いた着物でやってまいりました。陛下のご研究されているタヌキも」
皇后さま「ああここに、おりますね」「見えますね、見えました」

話が弾んだ場合、会話を続けてもいいのか?。明確な取り決めはないが、招待客は名札をつけていて宮内庁の職員が「どこどこの○○さんです」と両陛下に案内して回る仕組み。2000人以上が来るため、両陛下が全員とお話しすることは無理なため、招待客が自分から陛下に質問したり、声をかけたりしないようになっている。

両陛下は、事前に招待客の名簿を見て、その人がどういう人なのか調べてきておられ、それぞれの人に合わせた質問をされている。

そして陛下は園遊会をものすごく楽しみにしておられる。全国から自治体の長や議会の議長も招待しており、被災地も含め国民生活がうまくいっているのか、生の声を聞く機会となる。そういう意味で、大切な場と位置づけておられる。

園遊会ひとつとっても、両陛下の心がこもっている。陛下は退位されるまで園遊会は今年の秋と来年の春のあと2回となる。