26歳医師「過労死」 時間外労働で…母語る“息子の異変” 院長ら書類送検「目を背けないで」
26歳の医師の男性が違法な時間外労働により去年、自ら命を絶ちました。男性の母親は亡くなる直前の息子の異変を明かし、20日、改めて医師の働き方改革を強く訴えました。
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過労で死亡した医師・高島晨伍さんの母・淳子さん
「本当に感謝しています。26歳で一生分の親孝行をしてくれたかなって、今になって思います」
亡くなった医師の高島晨伍さんの母・淳子さんが、私たちに見せてくれたのは、まだ幼いころの写真です。
高島晨伍さんの母・淳子さん
「動物や子ども、赤ちゃんとか柔らかくて小さいものが大好きだった」
動物好きで、飼っていたカブトムシの死に大泣きしたこともあったという晨伍さんは、「優しい医者になりたい」と医療の道へ。
研修を受けながら診察にあたる「専攻医」として、神戸市の甲南医療センターで勤務していましたが、去年亡くなりました。違法な時間外労働による過労自殺とみられています。
亡くなる数日前の様子について…
高島晨伍さんの母・淳子さん
「病院の玄関から出てくる時は普通だったんですけど、(迎えの車の)扉を開けて入ってくるなり、もう足首に頭をドーンとつけるような感じで『もう何もできひんかったからな、きょう』『もう何もできひんかったから』『もうあかん、もう何にも頭が回らへん』って言ってわんわん泣き出したので」
「(晨伍さんが)論文(学会用スライドのチェック日)を出すのが金曜日だった、締め切りが。木曜日の晩が当直なので『できるわけがない』ってわめいて」
晨伍さんが亡くなる直前1か月の時間外労働は、先輩からまかされた仕事や学会での研究発表の準備などもあり、200時間以上に。
淳子さんは息子の異変に気づいたといいますが…
高島晨伍さんの母・淳子さん
「私が一番痛恨のミスだったのは『病院にいるからいいだろう』と思ったんです。病院の先生方がもし(様子が)変だったら、つかまえてくれるだろうと思って」
亡くなる当日について…
「(朝に自殺)未遂をしていたので、ここ(首)に赤い痕跡があったみたいなので、それを上級医の先生方が見て『君これどうしたん』って。『どうしたんこれ』って聞いたら『寝ている時にひっかいたと彼(晨伍さん)は言っていた』と。やっぱり誰も分かってくださらなかったんやって」
この日の夕方、自ら命を絶ちました。
高島晨伍さんの母・淳子さん
「死ぬ日を探していたと思うんですけど。みんなが(他の)お母さま方が『お母さんがそんな姿を見つけたのはすごいかわいそうだったね』って。私が実際に入って私が実際に抱きしめられたので、最初に来たのが私でよかったと思いますし、私は他の方に見つかるよりも、私が見つけておろしてやれて、本当よかったなと思います」
病院側は本人が申告した時間外労働は約30時間で、”自己研さん”の時間も含まれていたと主張していましたが、労基署は19日、具英成院長らを、晨伍さんに違法な時間外労働をさせたとして書類送検しました。甲南医療センターは取材に対し「特にコメントはない」としています。
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自身も医師である晨伍さんの兄は…
高島晨伍さんの兄(20日午後)
「本来的に研修医や専攻医は修練を積むことが仕事であり、業務に必須な訳です。弟は自己研さんする時間がなくて悩んでいました。医者はスーパーマンでもロボットでもなく生身の人間です」
遺族は来年4月の医師の働き方改革への懸念もあり20日、「医師の過労死家族会」を結成しました。
高島晨伍さんの母・淳子さん
「いまだ謝罪はおろか、晨伍の死に関する説明もない。甲南医療センターの対応に悲しみと怒りを感じています。晨伍が命をかけて示した過労死の問題から目を背けないでほしい」
(12月20日放送『news zero』より)