大雪もたらす「JPCZ」とは…大雪による災害や立ち往生への備えを
冬になると毎年のように大雪によって大規模な車の立ち往生や、日常生活が困難になるほどの雪害が発生しています。この大雪の原因のひとつに、「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」というものがあります。
2022年12月中旬から下旬にかけて、日本付近では冬型の気圧配置が強まって上空には強い寒気が流れ込みました。この影響で、北日本から西日本の日本海側を中心とした広い範囲で大雪となり、特に北陸や東北南部では、除雪が追いつかないほどの強い雪が降り、短時間のうちに積雪が急増しました。
この大雪によって、新潟県内では大規模な車の立ち往生が発生したほか、各地で車のスリップ事故や除雪中の事故が相次ぎました。このような大雪をもたらした原因のひとつが「JPCZ」の存在です。
■大雪もたらす「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」とは
等圧線が縦縞模様の冬型の気圧配置が強まると、シベリア大陸から冷たい季節風が日本海に流れ込みます。この冷たい風は朝鮮半島北部に位置する白頭山(標高2744メートル)にぶつかり、いったんは二手にわかれますが、その風下にあたる日本海で再び合流します。
風が合流する所は「収束帯」といわれ、ここでは日本海をわたるうちに水蒸気をたっぷりと含んだ風と風がぶつかって上昇気流が発生し、上空に昇った水蒸気が冷えて雪雲が発生します。
この収束帯のことを「日本海寒帯気団収束帯」といい、日本海(Japan sea)寒帯気団(Polar airmass)収束(Covergence)帯(Zone)のそれぞれの頭文字をとって「JPCZ」と呼ばれています。
通常の雪雲は、湿った風が日本の陸地に達したあとに山地で持ち上げられて発生し、主に山沿いでの降雪が多くなりますが、JPCZでは雪雲が発生してから上陸するため、沿岸に近い平地でも降雪が多くなるという特徴があります。
また、JPCZでは雪雲が次々に発生・発達し、列を成すように日本海側の地域に流れ込むため、短時間で積雪が急増するおそれもあります。
■2018年にも大規模な立ち往生が…
2018年2月5日から8日にかけては、JPCZの停滞によって福井県の嶺北地方や石川県の加賀地方を中心に記録的な大雪となりました。特に福井市では、7日の最深積雪が147センチに達し、昭和56年豪雪以来37年ぶりに140センチを超えました。
この大雪の影響で、国道8号では一時、約1500台の車が立ち往生し、除雪によって全ての車両停滞が解消するまでに約3日間を要しました。物流が止まったため、店頭の商品が品薄になったり、ガソリンスタンドでも給油がストップするなど、食料品や日用品の供給に大きな影響を与えました。
■大雪や車の立ち往生への備えを
このように、除雪が追いつかないような大雪になったときには、大規模な車の立ち往生や交通機関の運休、停電や断水など、インフラだけでなくライフラインにも大きな影響が出る可能性があり、食べ物や水の備蓄、懐中電灯や電気が無くても使える暖房器具など、事前の備えが大切です。
また、車の立ち往生を防ぐために、車には必ずスタッドレスタイヤを装着し、それだけではスタックしてしまうこともあるので、念のためチェーンも装着または携帯するようにしましょう。毛布や厚手の上着などの防寒具や食料・飲料も積んでおき、万が一に備えてください。
そして、停滞中などにエンジンがかかっている状態で車のマフラーが雪で詰まってしまうと、車内に排ガスが逆流し、一酸化炭素中毒になるおそれがあります。雪かき用のスコップも車に常備しておくといいでしょう。
消防庁によると、昨シーズン(2021年11月1日~2022年3月31日)の雪による死者数は97人で、その約9割が65歳以上の高齢者となっています。特に屋根からの雪下ろしなど除雪作業中の事故が多くなっていて、毎年多くの死者やけが人が出ています。
普段から雪の降る地域にお住まいの方も決して油断はせず、除雪作業は必ず2人以上で声を掛け合いながら行うなど、安全の確保をした上での作業を心掛けてください。