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「生産性」発言にみる日本の人権意識とは

2018年8月1日 17:05
「生産性」発言にみる日本の人権意識とは

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「LGBTは生産性ない」。LGBTが前向きに自分らしく生きられる社会作りを目指している“グッド・エイジング・エールズ”代表・松中権氏に聞く。

自民党の杉田水脈衆議院議員が、7月発売された月刊誌のコラムに最近のLGBT支援の広がりを批判した上で、こんな主張を載せた。

「LGBTのカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子どもを作らない、つまり『生産性』がないのです」

こうした主張に対し、各方面から批判の声が上がっている。


――松中さんは、この主張に対してどう思われますか?

人を生産性があるかないかというかたちで、ある意味ランク付けをしている。そのこと自体が、人としてどうなのかと思います。

そして、それに政策をひも付けて「この人にはするけど、あの人はしない」という発想自体が、国会議員としてどういうことなのかなと本当に疑問に思っています。

僕自身ゲイの当事者ですが、1人の当事者としては「いまだにこういう方がいらっしゃるんだ」と思ってしまいました。すごく悲しい思いをしております。

日本全国には、当事者である子どもたちがたくさんいらっしゃいます。そういう子たちがニュースを見て本当に悲しい思いをしたり、それを聞いた周りの子にいじめられたりなどがないか、不安でいっぱいです。


――世界が向こうとしている方向と逆行しているような発想という印象を受けます。キーワードをお願いいたします。

キーワードは「ジョグジャカルタ原則」です。2006年にインドネシアのジョグジャカルタ市で国際会議が開かれ、いろいろな国から集まった専門家が一緒に決めた原則です。

性的指向、性自認(SOGI)に関する差別を、いかなる人も受けてはならないということが原則として認められ、それを保障するために国家としては必ず守らなければいけない国際法規として発表されました。


――本来、ありのままの自分やその姿などは、認められたり受け入れられたりするのが当然のような気もしますが。

いわゆる“人権”は、誰しもが持っている“人として生きる権利”なんですが、どうしても日本では、人権意識というものはなかなか浸透していない、あるいは低いという部分もあります。

今回の一連の騒動も、もしかしたら人権に関して議員さん自身にすごく落ち度があったのか…。よく人権というと、左だなんだと言われちゃいますけど、実は右の方も左の方も皆さん持っているのがこの人権です。これをきっかけにして今一度、多くの方々がひとりひとりの人権について考えていただく場にしていただきたいと思います。


■松中権氏プロフィル
NPO法人グッド・エイジング・エールズ代表。LGBTが前向きに自分らしく生きられる社会作りを目指している。その中で、2015年から1万人のセクシュアル・マイノリティーを撮影し、公開するプロジェクトも続けている。


【the SOCIAL opinionsより】


※放送内容に一部間違いがありましたので、修正しています。修正内容は以下の通りです。

誤1)性的指向、性自認(SOGI)に関する差別を、いかなる人も受けてはならないということが原則として認められ、それを保障するために国家としては必ず守らなければいけない国際法規として承認されました。その翌年、2007年には国連の人権理事会でも承認されました。

正1)修正済み
性的指向、性自認(SOGI)に関する差別を、いかなる人も受けてはならないということが原則として認められ、それを保障するために国家としては必ず守らなければいけない国際法規として発表されました。


誤2)
キーワードは「ジョグジャカルタ原則」です。2006年にインドネシアのジョグジャカルタ市で国際会議が開かれ、そこに集まった国々の方々や専門家と一緒に決まった原則です。

正2)修正済み
キーワードは「ジョグジャカルタ原則」です。2006年にインドネシアのジョグジャカルタ市で国際会議が開かれ、いろいろな国から集まった専門家が一緒に決めた原則です。


※ジョグジャカルタ原則自体は、その後、国連の人権理事会では承認されていません。2011年、国連の人権理事会では、別途、性的指向・性自認に基づく人権侵害に焦点をあてた初の決議が採択されています。