最後の戦没者追悼式 陛下が込められた思い
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「陛下が最後の全国戦没者追悼式に込められた思い」。20年にわたり皇室取材に関わり、天皇・皇后両陛下のお姿を間近に見続けてきた皇室担当・森浩一記者に聞く。
陛下は、3年前から用いている「先の大戦に対する深い反省」という言葉に加え、「長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」という新たな言葉を使って、戦争が繰り返されないことを願ったお言葉を述べられた。
――陛下はどのような思いでこの言葉を使われたのでしょうか。
陛下はかつて、幼少期をふり返って「私は戦争のない時を知らないで育ちました」と語られたんですけれども、その陛下が、戦後70数年間ずっと平和が続いているということを実感された、大変重い言葉だと思います。
平和であるということは簡単なことではなく、平和を真摯(しんし)に望んで、平和をつくっていくということだと思うんですね。そこで、「平和がある」ではなく「平和を守る」というキーワードを書きました。
陛下は最後のお言葉で、これまで73年間、平和を守ってきた日本国民に対する感謝の気持ちも表されたのではないかと思います。それと、未来にわたって努力して、平和を守らなければいけないというメッセージを残されたのではないかと、私は感じました。
この追悼式で1つ印象に残った場面があるんですけれども、様々な方が追悼の辞を述べられる時、陛下は体をそちらのほうに向けて、じっと見つめられていましたが、1か所表情が変わった場面があったんです。
戦没者遺族代表の鈴木喜美男さんという方が、「自分の父はマリアナ諸島のテニアン島で亡くなった」というくだりを話されているとき、陛下がふっと正面を向き、少し上の方をじっと見つめながら、その情景を思い浮かべられているような表情に変わりました。
このときにハッと思ったのが、戦没者に心を寄せるということは、共感するということだと改めて実感しました。こういった共感という作業をずっと繰り返して、戦没者に心を寄せてこられた両陛下のこれまでの道のりを思うと、「本当に長い間おつかれさまでした」という気持ちになった最後の戦没者追悼式でした。
――陛下が表情を変えられるというのは、よほどのことですよね。
ずっと厳しい表情で聞いておられましたので、その時だけふっと遠くに思いを寄せられているような感じでした。
――森さんも万感の思いがありますよね。
そうですね。本当に大切にされてきた8月15日ですから、感じるものがありました。
■森浩一記者プロフィル
日本テレビ報道局の皇室担当。足かけ20年にわたって皇室取材に関わり、天皇・皇后両陛下のお姿を間近に見続けてきた。2019年の天皇陛下退位に向け、大きく動く皇室の取材を続けている。
【the SOCIAL opinionsより】