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【解説】「車内置き去り」どう防ぐ? 子どもの命を守るために…

2022年9月6日 20:41
【解説】「車内置き去り」どう防ぐ? 子どもの命を守るために…

送迎バスに取り残され、幼い命が失われる事故がまた起きてしまいました。このような事故を繰り返さないためには、どうしたらいいのでしょうか。

「園バスでなぜ」
「5人に1人が“放置”」
「毎年“閉じ込め”も」

以上の3つのポイントについて、詳しく解説します。

■送迎バスで5時間“置き去り” 3歳女児死亡 

死亡したのは、静岡・牧之原市の川崎幼稚園に通う河本千奈ちゃん(3)です。送迎バスの中に置き去りにされたとみられています。警察は熱中症で死亡した可能性もあるとみて、調べています。

バスは5日午前8時50分ごろ、幼稚園に到着しました。他の園児を降ろした後、バスは近くの駐車場に止めてありましたが、5時間以上たった5日午後2時10分ごろ、送迎の準備をしていた職員によって、千奈ちゃんは意識のない状態で発見されました。

朝の送迎時、バスには運転していた男性理事長(70代)と女性の派遣職員(70代)、千奈ちゃんを含めた6人の園児が乗っていました。この日はいつも運転している運転手が休みで、理事長が代わりに運転していたということです。

警察は6日、業務上過失致死の疑いで園に家宅捜索に入りました。管理体制に関する資料などを確認するということです。

送迎バスでの置き去りは2021年、福岡・中間市の保育園でも発生しています。当時5歳の男の子が約9時間バスに取り残され、熱中症で死亡しました。これを受けて、福岡県では独自に安全管理の指針を作成しました。子どもが乗り降りする時には、名前や人数を確実に把握するために、「名簿の確認欄にチェックする」など、具体的な手順を定めることなどが記載されています。

■“子どもの置き去り”センサーで防ぐ動きも アメリカ

センサーを使って、子どもの置き去りを防ぐ動きも進んでいます。車の内装部品などを扱う三洋貿易が、2023年に国内販売の開始を目指しているのは、バスに取り付けるセンサーです。

エンジンを切った後に一定時間がたつと、呼吸する時の胸が上下する動きなどをセンサーが検知し、ショートメッセージで知らせてくれるというものですが、アメリカのスクールバスでは、既に使われているということです。

■子ども残し「離れたことある」

実は子どもを車内に置き去りにしてしまうケースは、一般のドライバーでも起きているのです。

三洋貿易は、全国の子どもを乗せて運転するドライバー2652人に調査したところ、約5人に1人にあたる583人が「直近1年間で車に子ども残したまま、車を離れたことがある」と回答しました。そのうち14人は車内に子どもがいることを認識せずに、置き去りにしていたということです。

2020年、茨城・つくば市では事件がありました。父親が子ども2人を車に乗せて長女を小学校に送った後、2歳の女の子を車に放置したまま在宅勤務をしていて、その女の子が亡くなりました。父親は約7時間後に女の子に気づき、「保育園に送っていったつもりだった」という趣旨の説明をしていたということです。

■「もしかしたら、やってしまうかも」大切なのは危機感

なぜ、子どもをうっかり車内に置き去りにしてしまうのでしょうか。社会心理学が専門の新潟青陵大学大学院・碓井真史教授は「人は普段ルーティンワークで動いている。しかし、いつもと違う行動でルーティンが崩れると、ミスを起こしやすい」としています

また、碓井教授は「いつもと同じルーティンで行動していても、疲労や焦りから子どもの存在を忘れてしまうことも起こりうる」とも話しています。その上で一番大切なのは、「私は絶対やらない」と思うのではなく、「私ももしかしたら、やってしまうかも」という危機感だと話していました。

碓井教授は2つの対策をあげています。

まず「車を離れる時、子どもの隣に必ず持ち出す物を置いておくこと」。

カバンなどはついつい助手席に置いてしまいがちですが、あえて子どもの隣に財布や書類などを置いておくと、車を降りる時に後部座席を見て、子どもの存在に気づくことができます。

そしてもう一つ、「家族にこまめに報告すること」。

子どもを保育園・幼稚園などに送り出したら、必ず家族と共有することを習慣化すれば、連絡がないことに家族が気づいて、防ぐことができるということです。

■“キー閉じ込み” JAFが警鐘「熱中症の危険」

車の鍵を子どもに渡すことが原因となる事故も起きています。JAF(日本自動車連盟)は「夏場に子どもと車の鍵を車内に残したまま外に出て、車の扉を開けられなくなってしまうケースが毎年起きている」と警鐘を鳴らしています。

例えば、車に乗り込む時、車内の子どもが鍵を触りたがるので、鍵を渡した状態でドアを閉めたら、自分が乗ろうとした時、子どもが車の中からロックをかけてしまって、ドアを開けられなくなるといったケースです。いわゆる「キー閉じ込み」と言われています。

2021年8月の1か月間、子どもを車内に残したままの「キー閉じ込み」でJAFが出動したケースは63件ありました。JAFでは「たとえ数分でも、熱中症の危険がある」と注意を呼びかけています。

     ◇

子どもの命を落としかねない危険は、私たちの身近に多く潜んでいます。「短時間だから大丈夫」、「自分はうっかり置き去りにするなんてしない」と過信するのではなく、大事な子どもの命を守るために、「自分にも起こりうることかもしれない」という危機感を持つことが、何より大切です。

(2022年9月6日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)