辺野古賛否は…県民投票へ奔走する大学院生
「世界一危険」といわれる沖縄のアメリカ軍普天間基地。その移設先とされる、名護市辺野古の埋め立て工事への賛否を問う、沖縄県民投票が告示された。県民投票の実施を呼びかけたのは、基地の近くで育った大学院生の男性。どんな思いが、男性を駆り立てたのだろうか。
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14日、沖縄県名護市辺野古。エメラルドグリーンの海の一角では土砂を運ぶトラックが行き交い、埋め立てのための作業が進められていた。アメリカ軍普天間基地の移設先として、工事が続けられている辺野古の海の埋め立て。その賛否を問う県民投票が14日に告示された。
「どうぞよろしくお願いします」―街行く人に声をかけているのは大学院生の元山仁士郎さん(27)。県民投票実施にむけ、市民団体「『辺野古』県民投票の会」の代表として県内を駆け回ってきた。
元山さん「本当に基地が必要なのかどうか、意思を示していただければ」
「世界で一番危険な飛行場」といわれるアメリカ軍の普天間基地。2012年からはオスプレイが配備された。周囲は多くの住宅に囲まれていて、子どもたちが遊ぶ小学校の校庭のすぐ上をアメリカ軍の軍用機が飛んでいく。
元山さんは、この普天間基地のすぐそばで育った。
元山さん「(基地の)フェンスから300mぐらいしか離れていないので、フェンスの周りで生まれ育ったという感じですね」
生まれた時から当たり前のようにある基地という存在。しかし、大学進学をきっかけに東京で暮らす中で、基地と隣り合わせの生活が普通のものではないと気づいたという。
元山さん「なんで自分の地元はこんな環境に置かれているのかなと」
実際、インタビュー中にも―
元山さん「なんで県民投票をやるのかという大きな理由なんですけど…」
私たちの真上をアメリカ軍のオスプレイが飛んでいった。
元山さん「県民投票をやれば日本政府に対して、あるいは日本に住んでいる人たちに対して、沖縄の声をより明確に伝えることができるんじゃないかなと」
沖縄の声を届けたい。その思いから、元山さんたちは県民投票を実施するための9万人分を超える署名を集めた。その結果、去年10月の県議会で、辺野古の埋め立て工事に「賛成」か「反対」かを2択で問う、県民投票が実施されることが決まった。
しかし、去年12月…。
宜野湾市・松川市長「本市は(県民投票を)実施しないことと決断いたしました」
普天間基地を抱える宜野湾市が県民投票への不参加を表明した。
■「県民投票」なぜ不参加表明?
宜野湾市にある普天間基地。その移設先である辺野古の工事について、県民投票で「反対」が多数となった場合、普天間基地がそのまま残り、固定化されるのではないかと懸念しているのだ。
松川市長「宜野湾市民が置き去りにされているような気持ちになるということ」
また、他にも県内4つの市が「賛成」「反対」の2択だけでは多様な民意を反映できないなどとして、県民投票不参加を表明した。
そこで元山さんは、全県での投票実施を求め、ある行動に出る。宜野湾市役所の前でハンガーストライキを始めた。
元山さん「県民投票を全市町村で実施できるように体をはるしかないんじゃないかなと」
ハンストは5日目でドクターストップがかかり、中断されたが、最終的に県議会で調整が行われ、県民投票は「賛成」「反対」に「どちらでもない」を加えた3択で実施されることになった。
一方で、県民の中にはこんな意見も。
沖縄県民「普天間の問題にしても(沖縄県民の意見が)通ったことがないので。ちょっとあきらめています」「(投票には)行かないと思います(Q:なんでですか?)あんまり正直、興味がないので」「(投票結果は)あんまり役に立たないと思うんだよね、はっきり言って。政府の力が強硬なので」
実は県民投票には法的拘束力がなく、政府も、「辺野古移設が唯一の解決策である」として投票結果にかかわらず工事は続ける方針だ。それでも元山さんは、県民同士が議論することにこそ大きな意味があると考えている。
元山さん「これを機に賛成だと思っている人も、仕方ないんじゃないかと思っている人も、反対だという人も、いろんな立場の人からぜひ意見を聞いたり話をしてみて、正直な思いを投じてほしいと思います」
10日後(2月24日)の投票日、沖縄県民はどのような答えを出すのだろうか。