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Z世代が持つ、絶妙なバランス感覚【SENSORS】

2023年9月10日 10:40
Z世代が持つ、絶妙なバランス感覚【SENSORS】

デジタルネイティブと呼ばれ、子どものころからインターネットを介した情報収集や交流を前提として生きる、Z世代。常に誰かと繋がっている感覚を持つ人たちも多い。

彼らは、どのように人々との関係性を保っているのだろうか。また、オンラインとオフラインに存在するあらゆる”場”やテクノロジーとは、どのように付き合っているのだろうか。Z世代の起業家たち4人に、話を聞いた。

■Z世代が求める、中距離的コミュニケーション

Z世代の映像監督YPさんは、YouTubeのコメント欄に日記のような投稿が増え、コメント欄自体がコンテンツ化していく現象を興味深く見ていると言う。

「誰かが『私もこんな思い出があります』と書き込むと、それに対してまた別の人が『私もそんなことがありました』と書き込んで、どんどん共感が集まっていくんです。コメント欄が1つのコンテンツとなって、コミュニティを作るようなムーブメントが起きています」

株式会社水星・代表取締役でホテルプロデューサーの龍崎翔子さんも、コメント欄に居心地の良さを感じる1人だ。

「YouTubeのコメント欄は、誰とも繋がっていないSNSという感覚なんです。映像をBGMにして、Twitterのようにコメント欄ばかり読んでいるときもあります」

いつでも繋がることができる現代の若者たちは、近すぎず、遠すぎない、ちょうどよい距離感を求めているのだろうか。銭湯を運営する株式会社小杉湯 COOの関根江里子さんは、 銭湯にも“必要以上に関係性が深まることのない居心地の良さ”を求めて、若者たちが集まっていると分析する。

「今、小杉湯のお客さまの半分は30代以下です。Z世代は、小さいころからすぐにPCの中の人と会話ができて、SNSも身近にあって、知りたいわけじゃなくても同級生のライフイベントをだいたい知っていて。他者が近過ぎる感覚があります」

「銭湯なら、顔は知っているけれど名前も年齢も肩書も知らないような人と、あいさつやちょっとした会話を交わすだけなんです。その人ともう二度と会わないかもしれないし、明日も会うかもしれません。ちょうどいい中距離的な関係性が居心地のよさに繋がっているんでしょうね」

龍崎さんは、中距離を求める若者たちの傾向を、ホテルにも見出している。

「ホテルにもそういった側面があります。ゲストハウスのような距離が近い旅館だとなおさら。一晩一緒に過ごしていても、名前も職業も聞かず、深く詮索せず、ただ『ご飯おいしいね』と言い合って食べる。そんな中距離的な関係性も含めて1つの大きなコミュニティになっている場が増えているなと感じています」

■認知を拡大しない、という選択

今、“適度な距離感”は、人と人の間に限らず、人とコンテンツや、人と場の間においても求められている。近年、消費動向として、UGC(User generated contents)つまりユーザーによって生み出されたコンテンツが重要だとされているが、これには注意が必要だと話すのは、龍崎さんだ。

「いかにバズらせるか、いかにインプレッションを稼いでプロフィールに飛んでもらってマネタイズするかを追求するユーザーが増えました。そのネタとしてホテルを使う人たちも多くなっています。泊まっていないのに、情報を分かりやすく切り取ったり、無断で画像転載する人もいて、本来の価値が歪め(ゆがめ)られているようで、悲しくなるときがあります」

龍崎さんは、こういった悲劇を減らすために、UGCを見据えて、どのように再発信してもらいたいかまでを含めた設計が必要だと考える。

「広く知ってもらうことは大事ですが、同時に、いかに“知られなくていいこと”を、“知られなくていい人に知らないでいてもらうか”をコントロールしなければならない時代でもあるなと感じています」

■アバターの匿名性×マイクロチップの特定性

めざましいテクノロジーの進化の最中、私たちは、ITツールとの距離感や付き合い方にも意識を向ける必要がありそうだ。国や時間を越え、アイデンティティも超え、世界中の人々とアバターを介した会話さえ可能な今、Z世代はどのようにテクノロジーと向き合っているのだろうか。

株式会社 Quwak代表取締役 合田瞳さんは、テクノロジーによる経済社会の発展を感じつつも、匿名性がそれを阻んでいる一面も否めないと感じている。

「たまにVRチャットを使いますが、例えば相手が『普段はカリフォルニアでエンジニアをしている』と言えば、仕事を発注したいなと思うのですが、一体どこの誰なのか本当のことはわからないわけです。入金しても仕事をしてくれないかもしれません」

匿名性が私たちを自由にした反面、ビジネスや経済における信用を築くためには今一度1人ひとりの確かな存在やアイデンティティを証明することも不可欠だ。

合田さんは、個人を特定するテクノロジーとしてマイクロチップの可能性に着目し、自身の腕に埋め込んで生活をしている。

使用しているマイクロチップは横2ミリ縦14ミリの大きさで、簡単に取り付けられるものだ。少し太い針を皮膚のすぐ下に差し込み、抜いて開いた穴にチップを挿入し、自然治癒でふさぐ。生体適合ガラスで、体に害はなく、MRIやレントゲンを撮ることもできる。

「温泉やサウナにも入れるし、飛行機のゲートも問題なく通ることができます。マイクロチップは体がなければ使うことができないので、セキュリティ面でも安心です。それに、家やオフィスや自転車など、チップ1つで複数の鍵が開けられます。マイナンバーカードや交通系ICカードにも対応したら、毎回のカード発行料がかかりませんし、環境面にも優しいと思います」

匿名性と特定性を巧みに使い分け、絶妙に人や場やツールとの距離感を保っている。これは、デジタルネイティブとして育ったZ世代だからこそ、身についたバランス感覚なのかもしれない。そして、いまそれは、どの世代でも身につけなければならないバランス感覚ではないだろうか。