イラストレーターが認知症病棟で描く理由
福井市の病院が、認知症患者が入院する病棟の壁をカラフルに彩る
新たな取り組みを始めた。壁にイラストを描くのは、かつて、がん患者だったイラストレーターだ。患者の心を癒やすため、壁に絵を描き続ける。
認知症病棟で描くのは、イラストレーターの三木あいさん。今年から福井市の病院で、認知症患者の病棟の壁に絵を描いている。描くのは、空想の世界が広がりそうな風景や生き物たちだ。かつて三木さんはガンの治療のため、半年間の入院を経験した。
三木さん「自分が入院していた時に風がなくて、開いている窓がないのがすごくつらかったので、トイレとかで隙間を開けて息をしていたのですけど、認知症患者さんの窓が開いているわけがない。全てロックされているし、だから外とつながるようにしたい、頭の中だけでも」
これまでは患者が、白い壁を剥がしてしまうこともあったそうだが、絵が描かれてからは、壁を傷つける人はいなくなった。花や虫たちの絵は患者が棟内を徘徊(はいかい)し、自分の部屋が分からなくなった時の、目印にもなっている。
病院職員「患者様にも刺激を与えつつ、精神的な緊張の緩和になったと思う。笑顔が見られるようになりました」
作業中に患者が話しかけてくれた。
患者「なかなか、こう大胆にはできないよ」
患者「大したもんじゃ、きれいな」
三木さんは3時間ほどで、一気に壁一面を彩った。この日描いたのは、カップから世界が広がる夢のある絵だ。殺風景な病棟を、花や虫たちが溢れる世界に変える三木さんの絵は、患者たちの心を癒やしている。
【the SOCIAL lifeより】