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「診療所の後継者不足」をまちづくりで解決

2019年5月24日 18:10
「診療所の後継者不足」をまちづくりで解決

世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見を聞く「opinions」。今回の話題は「診療所の後継者不足」。福井大学・地域プライマリケア講座教授の井階友貴氏に聞いた。

帝国データバンクの調査によると、休業、廃業した病院、診療所、歯科医院を合わせた医療施設は2000年が82件だったのに対し、2018年に400件と約5倍に増加している。そのうち、病床を持たない、ないし病床数が20床未満の「診療所」が305件と全体の4分の3を占めている。

その「診療所」について日本医師会総合政策研究機構のまとめによると2017年の時点で後継者が決まっていない「診療所」は、86.1%に及んでいて、後継者不足から、休業、廃業に至る医療機関が、さらに増加することが懸念されている。


――井階さん、この現状はいかがですか?

私が赴任している福井県の高浜町も地方でありまして、周辺の自治体も含めて、いまのような話題、つまり開業医で後継者がいないということで、閉院を余儀なくされるということが本当に尽きません。

全国的に見ても、特に地方でそんな話題をよく聞きますし、これから日本は急激な高齢化が進みますので、そういう身近なかかりつけの医療を補うべき近しい診療所の先生が求められていくと思いますので非常に大きな問題だと思います。


――そして、この話題について井階さんにフリップを書いていただきました。

「Accessibility ココロの距離」です。

“近さ”とか“近接性”という意味があるのですが、私の研究活動で住民がどういう医療を理想としているのかを聞いてまわる研究をしたことがあります。

例えば、都会の大きな病院が乱立するようなところに住んでいる方でしたら、最新の医療機器があふれているので、安心しているのかなと思ったのですが、意外と聞いてみると離島の方でも都心部に住んでいる方でも医療機関とのココロの距離ですね、何でも相談できたりとか、気軽に受診できたりとか、それがないと理想的な医療ではないというのがすごく印象的だったんですね。

ですので、このような医療を志す若手や学生を高浜町の方でも、非常に現場の視点とか、まちそのものを見ていただくような地域に近い医療などを学んでいただくように色々なきっかけを出させていただいています。


――今年で12年目ということですけど、今までやってみて実感としてはいかがですか。

かつて町内の医師が5人くらいまで減ってしまったことがあるのですが、今はまた元通りの水準の12~13名のレベルまでになりました。私が赴任した11年前が一番、厳しい時期でした。


――そういったなかでお医者さんたちへの働きかけや地域のみなさんを巻き込んでやることが大切になるのですかね。

医療というのは、まちのものであり、住民のものと思っています。本質的に医療問題を解決していこうというときに医者や医療に携わる人だけで解決するのではなく、地域ぐるみの活動、医療や健康に関心を持っていない方々にもかかわっていただけるようなまち全体の取り組みをしています。

健康をあえて伏せたような…例えば、先日はギネス世界記録、世界最大のちらしずしを作ろうというイベントをまちのみなさんと一緒にやりました。そういったつながりをつくるなかで、おのずと健康に意識が向いたり、地域に参加する中で健康になっていくというそういうところを目指したいと活動しています。

【the SOCIAL opinionsより】