中づり広告の“言葉”に批判の声 なぜ?
電車の中づり広告に書かれた“ある言葉”に批判の声が上がり、鉄道会社が広告を撤去する事態となった。働く人にエールを送る目的で作られたというこの広告。何が問題となったのか。
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大阪、京都、神戸をつなぐ関西大手の私鉄、阪急電鉄。都市間を走り、通勤通学の多くの人が利用している。その阪急電鉄の取り組みが、ある批判にさらされた。
「お年寄りが暮らしやすい国は、みんなが暮らしやすい国だと思うのです。」
「いま、47歳。3度目の思春期がきています。」
これは、今月1日から、神戸線、宝塚線、京都線で始めた中づり広告。その名も「ハタコトレイン」。働く人にエールを送る目的で、様々な企業で働く人などが発した、80種類の「はたらく言葉」を中づり広告に掲載した。
この掲載に、思わず「今日は念願のハタコトレインに乗れました!ずらっと並ぶ光景は圧巻です」とSNS上に歓喜の声が上がった。
しかし、問題となったのは、80代の研究者によるこの言葉。
「毎月50万円もらって毎日生き甲斐のない生活を送るか、30万円だけど仕事に行くのが楽しみで仕方がないという生活と、どっちがいいか。」
この「はたらく言葉」に対して、SNS上で、批判の声が上がった。
「月15万ももらえず、生きがいのない生活を送ってる人がいることを理解できないのだろう」
「仕事が楽しみな人はほんの一握りしかいませんよ」
この言葉をどう受け止めるか、街の人に聞いた。
20代会社員「一般の僕のような年齢の人だと30万ももらえるなんてなかなかない。楽しいもつらいもないよね(という感じ)(広告は)何も特に思わないです。響かないです」
30代主婦「人によって価値観が違うから、数字(金額)を出したのは、賛否分かれちゃったのかなと思う。30万円でも多いと思う人がいれば、少ないと思う人がいるので」
30代会社員「率直に(広告は)良いのかなと思います。そんなこと(広告への批判)言ったら、何も書けなくなっちゃいますよね。世間一般でいう正論だけを広告するというか、そういうせまっくるしい世界になってしまうと思う。ぜひ掲載してほしい」
様々な意見があった。
阪急電鉄と共同で広告を制作した会社に聞いた。
パラドックス広報担当・内村寿之さん「実際の方々の立場や環境に立ったコミュニケーションでなかったんだろうと。書いたもの、作ったものに関して、不快な思いをされた方がいらっしゃるのは間違いないので、本当に申し訳ないということです」
阪急電鉄は「様々な業界や世代の方の“言葉”を紹介することで、働く人を応援したいという趣旨で行った企画でしたが、公共交通機関の車内広告として、事前に十分な配慮が至らず、一部の内容が不適切であったことを反省しています」と、コメント。
広告を外す作業などを行うため、「ハタコトレイン」の車両の運行は中止しているという。