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医療現場で“言葉の壁”に挑む ITも活躍

2019年6月17日 20:29
医療現場で“言葉の壁”に挑む ITも活躍

外国人労働者の受け入れ拡大、観光客の増加など、増え続ける外国人。特に医療の現場では、「言葉の壁」をどう乗り越えるのか課題になっている。取り組みを取材した。

◆誤診を避けるため…「医療通訳」が活躍

神奈川・大和市。カメラが診察室に入ると、フィリピン人の女の子がせき込んでいた。母親が話すのは、タガログ語。

医者「たんが絡んだせきですか?」

通訳「せき、こういう感じです」

女の子がどんな「咳」をしているのか。誤診を避けるためにも、医師に症状が的確に伝わなければならない。その役目を担っているのが、この女性。「医療通訳」だ。

別の診察室では、タイ人の女性が腰の痛みを訴えていた。

医師「あれ?これ両方とも胃の薬だけど」

女性がもともと飲んでいる薬を確認するのも一苦労。

医師「なんていう病気と言われてるの?」

専門用語も必要で、医療通訳でも時にスマホを片手に悪戦苦闘。自然と、身ぶり手ぶりも加わる。

この日、この病院で診療を受けた外国人は、フィリピン、パキスタン、インドなど8つの国籍に。

小林国際クリニック・小林米幸院長「ちゃんと通訳が、先生これはこういう意味ですと、こういう意味でこういうことやっていると教えてくれるので、誤解はなくなりますよね」

医療現場ではいま、「多言語」への対応が急務になっている。急ぐわけは、4月1日から施行された改正入管法だ。外国人に新たな在留資格が設けられ、日本に住んで働く外国人が増える。国籍、言語はさまざまだ。

◆ITで「多言語の壁」乗り越える取り組みも

九州・鹿児島市には、ITで「多言語の壁」を乗り越えようとする病院がある。米盛病院に、胸の痛みを訴えたニュージーランド人観光客が救急搬送されてきた。患者の妻が話すのは英語。そこで看護師が取り出したのは、タブレット端末。医療に特化した遠隔医療通訳システムだ。

 「旅行保険に加入されていますか?」

症状や治療費の支払いだけではなく、こんな質問も。

 「宗教とか文化で、医療を受けたくない行為がありますか?」

宗教や文化、生活習慣の違いも確認。対応言語は10か国語にもおよび、ITの力を使えば、誰でも受付から治療費の支払いまでサポートできる。

米盛病院・水島正樹医師「ここ数年で、特に数倍に(外国人)患者の数は増えてきている。英語でのコミュニケーションはなんとかできないことはないが、なじみのない言語を話す患者にはツールが役に立つんじゃないかと」

今年度予算で医療通訳の環境整備などに約17億円を計上しているが、「多言語の壁」を突破できるのかは、医療現場の努力に任されているのが現状だ。