【解説】この時期に気をつけたい「帯状疱疹」 “失明”合併症の可能性も 若い世代でなぜ増えた?
生活環境が変わったり、寒暖差があったりと、知らず知らずに疲れやストレスをためやすいこの時期に気をつけたいのが「帯状疱疹(ほうしん)」です。誰でもなる可能性があり、発症すると激しい痛みが伴います。
●3人に1人が発症
●若い世代で増えたワケ
●後遺症・合併症も
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
帯状疱疹とは、体の左右どちらかの神経に沿って、痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯状に生じる病気です。その症状の多くは上半身に現れ、顔、特に目の周りにも現れることがあるそうです。
愛知医科大学の渡辺大輔教授によると、帯状疱疹の原因は、子どものころになった「水ぼうそう」です。この2つの病気は、実は同じウイルスによるものです。初めて感染した時には水ぼうそうを発症し、治った後もウイルスは長い間、体内の「神経節」というところに潜伏しています。
普段は、免疫によってウイルスの活動が抑えられているので、症状は出ません。しかし、加齢、疲労、ストレス、病気などで免疫が低下するとウイルスが再び暴れ出し、痛みを伴う帯状疱疹が現れます。
ウイルスが神経に炎症を起こすので、痛みが先行し、その後に皮膚症状が出るそうです。刺すような痛みがあり、眠れないという人もいるようです。また、神経の損傷がひどいと、皮膚の症状が治った後に3か月以上も痛みが続くこともあるといいます。
さらに、発症する場所によっては失明や顔面神経麻痺などの合併症を引き起こすこともあります。
子どものころに水ぼうそうにかかることが多い日本人の成人では、実に“90%以上が体内に帯状疱疹の原因となるウイルスが潜んでいる”と言われています。
過去に水ぼうそうが発症した記憶がなくても、空気感染などですでにウイルスに感染している可能性があるということです。つまり、誰でも帯状疱疹を発症する可能性があります。加齢とともに免疫が下がり50歳を過ぎると発症が増え、80歳までに約3人に1人が発症すると言われています。
しかし近年、20~40代の患者も増えています。宮崎県の大規模疫学調査によると、1997年の発症率に比べて、2014年を境に20~40代の発症率が大幅に高くなってきています。
実は、2014年に子どもへの水ぼうそうワクチンの定期接種が始まったのです。この調査を行った外山望医師によると、これまで子どもたちの間で水ぼうそうの流行が毎年繰り返され、そこから大人も追加免疫を得ていました。それが定期接種の導入で水ぼうそうにかかる子どもが激減したため、大人の免疫も強化されず、小さな子どもの親世代である20~40代の帯状疱疹の発症率が上がっているといいます。
つまり、子どもたちに定期接種したことで、逆に親世代の患者の増加につながっているということです。
親世代が帯状疱疹を発症した場合に気をつけなくてはいけないのが、まだ水ぼうそうになったことがない赤ちゃんやワクチンを打っていない子どもとの接触です。帯状疱疹という病気がうつることはありませんが、ウイルスは接触感染でうつる可能性があります。
子どもがこのウイルスに初めて感染すると、水ぼうそうを発症します。そのため、親や祖父母が帯状疱疹を発症している場合は、乳幼児との接触は避けた方がいいということです。
発症を防ぐには、どうしたらいいのでしょうか。
疲労やストレスなどによる免疫の低下でウイルスが暴れ出すので、まずは体調管理が大事です。バランスのよい食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけましょう。また、音楽を聴く、映画を見るなど、自分なりのストレス解消法を見つけておくのも大切です。
さらに、50歳以上はワクチンを打って、低下してきた免疫を強化することができます。ただし、「任意接種」なので費用は「全額自己負担」となります。自治体や医療機関によって変わりますが、東京都のホームページによると、1回で済む生ワクチンは1万円程度、発症予防効果が高い不活化ワクチンは2回で4万円程度だということです。
ただし、今のところ50歳未満は受けられません。そのため、体調管理に努めることが大事になるわけです。
基本的に治療は抗ウイルス薬と痛み止めの投与です。抗ウイルス薬の7日間投与で皮膚症状は落ち着いてきます。しかし、痛みがどれくらい続くかはまちまちで、60歳以上では約2割の患者は皮膚症状が治まった後も神経痛が見られたということです。
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帯状疱疹の予防には、ワクチン接種が効果的です。自治体によって助成制度もありますので、専門家は「発症率が上がる50歳以上の人は帯状疱疹ワクチンを接種して発症予防・重症化予防に努めてほしい」と呼びかけています。
(2023年4月11日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)