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3.6兆円の少子化対策とは?出生率改善は0.1程度?

2023年12月12日 13:33
3.6兆円の少子化対策とは?出生率改善は0.1程度?

政府は、次元の異なる少子化対策の実現に向け、3兆6000億円にものぼる戦略案を示しました。一方、専門家は出生率は0.1上がるかどうかだとの試算を出しました。

次元の異なる少子化対策の実現に向け、政府がきのう示した「こども未来戦略」の案はことし6月に児童手当の拡充などを掲げた「こども未来戦略方針」を閣議決定した際に、詳細な部分の詰めを先送りした*高等教育費の支援*こどもの貧困対策*児童虐待防止*障害児や医療的ケア児支援などに関する政策や財源の具体化を図ったものです。

高等教育費の負担軽減に向けては、2025年度から、扶養するこどもが3人以上の多子世帯の大学、短大、専門学校などの入学金や授業料を所得制限なく軽減すること、(国立、私立、それぞれに免除・減免の上限あり)などが明記されました。

こどもの貧困対策としては、ひとり親世帯などへの児童扶養手当について、所得制限の見直しと多子加算の増額に向け、法案を次期通常国会に提出するとされました。

また、障害児の車いすや義足などの補装具を購入する際の費用の補助制度についても所得制限を撤廃することが盛り込まれ、経済的な負担で、成長に応じて補装具を頻繁に買い替えられないという声に応えました。

ほかにも、保育士の配置基準については、来年度から保育士1人がみる4・5歳児の人数を30人から25人へ見直し、2025年度以降は、1歳児についても1人がみる人数を6人から5人に改善する考えが示されています。

財源については歳出改革に加え、その範囲内で医療保険料に上乗せし高齢者を含む広い世代から徴収する「支援金制度」の案が示され、2026年度に徴収を開始し2028年度までに段階的に構築するとされています。「こども未来戦略」は、今月、閣議決定される見通しです。

■3.6兆円かけても出生率上昇は0.1程度?

こども政策の効果を分析してきた京都大学大学院の柴田悠教授は、今回打ち出された政策について、児童手当拡充など一定の評価はできるとした上で、海外の例なども参考に試算すると、出生率の改善は0.1あるかどうかだと話しています。

そして、もっと効果を出そうと思う場合、児童手当を自民党が当初示していた案のように、第2子に月に最大3万円、第三子に最大6万円として、約1.3兆円積み増し、高等教育費の軽減の対象を多子世帯以外にも広げ、さらに約1兆円、保育士の賃金引き上げ、1歳2歳児全員の受け入れ、配置基準見直しなど保育の充実に約2.1兆円、合計約4兆円を追加すれば、出生率は0.3上がると試算しています。

しかし、柴田教授はこのような巨額を財源を投入しても、お金やサービスの支給だけで、出生率を上げるのには限界があるのではないか、出生率を大きく改善するには、働き方改革が必要だと強調します。男性が夜遅くまで長時間働き、女性が1人で育児家事を担う現状がある限り、女性たちがその苦しさを考えて、結婚、出産に希望が持てないのではないかと、いうのです。柴田教授の試算では、所得を維持したままで、労働時間が週平均6時間減ると、出生率が0.5改善するとみられるということです。男性の労働時間が過去30年、ほとんど減っていない中、柴田教授は、残業代の割り増し率を引き上げる、法定労働時間を短縮するなど具体的な議論が必要だと話します。そして効果が出るには一定の時間がかかるとして、なるべく早く働き方改革に取り組むべきだと指摘しました。