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【解説】能登地方で相次ぐ地震 地下の「流体」…断層の“潤滑油” 今後、津波の可能性は

2023年5月6日 2:04
【解説】能登地方で相次ぐ地震 地下の「流体」…断層の“潤滑油” 今後、津波の可能性は

5日発生した石川・能登地方を震源とする地震は、どのようなものだったのか。今回の地震の特徴、地震が相次ぐ理由などについて、地震学が専門で能登半島の地震活動について研究している東京工業大学の中島淳一教授と共にお伝えします。

■今回は震源“浅い” 2020年ごろから急激に地震が増え…

中島芽生アナウンサー
「珠洲市では、5日午後2時42分ごろに震度6強、午後9時58分ごろには震度5強という非常に強い揺れが続いています。今回の地震にどういった特徴があるのでしょうか?」

東京工業大学 中島淳一教授
「能登半島の西部では、2007年にマグニチュード6.9の『能登半島地震』が発生しました。能登半島で今回、地震が発生した場所は、地震活動が比較的少ない場所でした。ただ、2020年の後半から急激に地震活動が活発になり、今回の地震はその一連の地震活動の1つとして発生したと考えられます」

中島アナウンサー
「震源に関しては、どのような特徴があるのでしょうか?」

中島教授
「大きな特徴は、震源が10~15キロと非常に浅いことです」

中島アナウンサー
「能登地方で2015年から今月3日までに発生した震度1以上の地震をまとめると、発生した場所は能登半島の先端に密集しているのがわかります。2020年ごろから地震が急激に増えていて、去年は161回も観測されました。去年6月には、今回と同じ珠洲市で震度6弱の揺れを観測しています。その翌日にも震度5強の揺れがありました。今回の地震と非常によく似ています」

■能登半島の下には広く「流体」が分布 断層の“潤滑油”の役割を…

中島アナウンサー
「どうしてこの地域で地震が相次いでいるのか。その理由として、『流体』というものがキーワードになるということです」

中島教授
「最近の研究により、能登半島の地下には広く『流体』が分布していることがわかってきました。流体とは、“普通の水”をイメージしてもらうと良いと思います。この流体は、沈み込むプレートからしみ出てきます。地下深くから上昇してきて、地震を引き起こしていると考えられています」

中島アナウンサー
「なぜ、流体が上がってくると、地震につながるのでしょうか?」

中島教授
「流体が能登半島の地下にある断層のすきまに入り込むと、いわば“潤滑油”のような役割を果たし、地下の断層面をすべりやすくして地震を発生させます」

中島アナウンサー
「今回、強い揺れが、繰り返し起きています。地下ではどのような現象が起きているのでしょうか?」

中島教授
「能登半島の地下には、大小様々な断層が存在すると考えられています。その断層に下から上がってきた流体が入り込むことによって、大きな地震も含め活発な地震活動が生じています」

中島アナウンサー
「なぜ今回、震度6強という非常に大きな揺れにつながったのでしょうか?」

中島教授
「地震の規模がマグニチュード6.5と大きかったことと、震源の深さが12キロと浅かったことが要因となっています」

中島アナウンサー
「断層はどれくらい動いたと予測していますか?」

中島教授
「マグニチュード6.5ということは、地下でおおよそ10キロ四方の断層が一気にずれ動いたことになります。このマグニチュード6.5という地震は、日本列島で数多く発生する群発地震の中でも、非常に大きくまれな地震と言えます」

■今後“大津波”の発生恐れも どのような場合に?

中島アナウンサー
「今回は津波による被害の心配はありませんでしたが、今後、地震が起きた時に津波の可能性はあるのでしょうか?」

中島教授
「能登半島の沿岸で仮にマグニチュード7クラスの地震が起きて、海底面まで延びる断層が破壊されたとすると、大きな津波が発生する恐れがあります」

中島アナウンサー
「今後は、どのようなことに注意が必要ですか?」

中島教授
「今後1週間程度、特に2~3日は、最大震度6強程度の地震が発生する可能性があります。また、このような地震活動は今後、数年のスパンで続くと考えられるので、今後も強い揺れに注意が必要です」

■就寝前の準備 GW中…「旅先の災害リスク」にも備えを

中島アナウンサー
「多くの人が、非常に不安な夜を過ごしていると思います。就寝する際、どのようなことを準備すれば良いのでしょうか?」

中島教授
「まず、ものが倒れてこない場所で寝る必要があります」

中島アナウンサー
「家具などから少し離れるということですね」

中島教授
「落ちやすいものは、事前に床に下ろしておくことも必要です」

中島アナウンサー
「そして、家具なども固定すると…」

中島教授
「ガラスが散らばったり、停電したりする可能性もあるので、準備しておくと良いのが『スリッパ』と『懐中電灯』です。枕元に置いておくのが良いと思います」

中島アナウンサー
「スリッパなどを非常袋にまとめて、例えば、ベッドにくくりつけておくと散らばらないですね」

中島アナウンサー
「そして今回、ゴールデンウイーク中の地震でした。旅先での災害リスクに備え、次のようなものを準備しておくと安心です」

<旅先でも安心“防災グッズ”>
「モバイルバッテリー」「健康保険証・マイナンバーカード」「常備薬」「マスクや生理用品」「水・非常食(アメやチョコレートなど)」「大きめのゴミ袋」

中島教授
「地震が発生した場合、停電する可能性は非常に高いので、1人1台モバイルバッテリーがあると安心です。薬はプラス数日分、少し多めに持っていくのが良いと思います。大きめのゴミ袋は、雨具や非常用のトイレにもなるので、携帯しておくのが良いでしょう」

■“警報級の大雨”可能性も 地震で地盤が緩み…

中島アナウンサー
「そして、もう1つ気になる点として、被災地では6日から警報級の雨が予想されています」

市村紗弥香・気象予報士(防災士) 
「7日にかけて土砂災害に警戒が必要です。6日午前1時からの雨雲の動きを確認します。これから朝にかけては、一部では降り出しますが、朝方はそれほど強くは降らない見込みです。ただ、昼前からはだんだんと雨脚が強まり、夜になると激しく降る恐れがあります。6日は、多いところで1時間に30ミリの激しい雨が降る予想です。その後、7日にかけて警報級の大雨となる可能性があるとして、気象庁は警戒を呼びかけています」

「地震で地盤が緩んでいますので、わずかな雨でも土砂災害につながる恐れがあります。また、風も強まる予想で、地震で崩れやすくなった屋根瓦などが雨風で飛ばされる可能性もあります。外に出る際は、地盤だけでなく頭上にも注意してください」

(5月5日放送『news zero』より)