命を賭して子ども救う、女性外科医の生き方
「絶対に(失敗しないと)言わないです」「100%はないですよね、人間の体だから」「カップをできるだけ早く欲しいの、そこで待っていてくれる?」
フリーの外科医・吉野美幸さん(40)。その名も“ドクターY”…医療支援団体“国境なき医師団”のメンバーとして紛争地などで治療にあたっています。
今年4月、イラク北部の町・カイヤラに派遣されていました。ひどいやけどを負って運ばれてくる女性や子供。カイヤラは戦乱によって生活基盤が破壊されたことで、料理中のガス爆発や熱湯による事故に遭う子どもが多いといいます。
一方で、これまでは1年のうち半年は、日本の病院で勤務。吉野さんは医局に所属しないいわゆる“フリーの外科医”として、半年間この病院で勤めてきました。フリーの女性外科医で海外紛争地での治療経験も豊富、その経歴から“ドクターY”と呼ばれています。
ドクターYこと吉野さんは、医師を志した時から、すでに海外での活動を目指していました。
吉野さん「まともに歳をとることすらできない。大人になることすらできない。そこでつまずいちゃってる子がいっぱいいるんだなってことに気づいたんです」
これまで紛争地などに、18回も派遣されています。アフガニスタンでは、アメリカ軍の爆撃を受け、スタッフや患者42人が犠牲に。吉野さんが日本に帰国した後でした。
吉野さん「もしかしたら自分もそこにいたかもしれないというのも恐ろしいですし」「自分が一緒に働いた同僚、友達が本当にそこで命を落としてしまったというのがすごくショックで」
危険な異国の地で働く娘を、日本で待つ父・弘一さんは―
「やっぱり心配は心配ですね」「もうちょっと楽をして、もうちょっといい生活をエンジョイして欲しいなとは思いますけどね(笑)」
命の危険と常にとなり合わせの紛争地での診療。しかし得られる喜びも大きいといいます。以前やけどの治療を担当したこの女性からは――
「あなたは最高の外科医です」「国も家族も置いて、私たちを治療しに来てくれるなんて、感謝してもしきれません」
吉野さん「誰かを笑顔にすることができたっていうところが自分の中で“この仕事をしていて良かったな”っていうやりがいになっていると思います」「多分そのやりがいとか良かったなって気持ちが次の派遣につながる力になっているのかなと思います」
【the SOCIAL lifeより】