2020年も“必ず”来る!豪雨災害
2017年=九州北部豪雨、2018年=西日本豪雨、そして2019年、日本は台風19号など相次ぐ台風に見舞われ、またも甚大な被害を出した。大雨による災害は、もはや毎年のように起き、多くの命が失われる時代になってしまった。2020年も「必ず起きる」と考えておくべきだ。
■データが語る「豪雨災害リスク」
2019年12月23日、気象庁は、日本の2019年の平均気温が1898年の統計開始以降、最も高くなる見込みだと発表した。「二酸化炭素などの温室効果ガスの増加に伴う地球温暖化の影響が考えられる」としている。
日本では1990年代から高温の年が増え、大気中により多くの水蒸気が含まれるようになってきていることから、豪雨災害が起きやすくなっているという。
実際に、気象庁の観測によると、1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨は、1976年~1985年の10年間は、年平均で約226回だったのに対し、2009年~2018年の10年間は、年平均で約311回と、およそ1.4倍に増えている。
また、全国の大河川を管理する国土交通省によると、いつ川の水があふれてもおかしくない「氾濫危険水位」を超えた大河川の数は、2015年は17だったが、2018年は62にまで増加した。
雨の降り方が強まっているだけでなく、繰り返される大雨で、ダムや遊水池、川の底に上流から流されてきた土砂がたまり、以前よりも水位が上がりやすくなっているとの指摘もある。
■「自分の命は自分で守る」
豪雨災害への備えを呼びかけても毎年、多くの犠牲者が出る現実。国は2019年、「避難」の考え方を見直した。強く打ち出したのは「自分の命は自分で守る」ことだ。
一見、突き放しているようにも見えるが、毎年のように豪雨災害に襲われる時代、「次は自分の番だ」と考えて備えることは、ある意味当然と言える。自宅や職場、通勤・通学経路の弱点は何か、そこからどのように避難するか、避難所まで逃げられない時にどう命を守るか。ハザードマップを見たことはあるか?食料や水は自宅での“籠城”に耐えうるか?みなさんは「行動計画」を決めているだろうか。
■大雨警戒レベルの「改善」を
国や自治体、そして私たちメディアは、みなさん一人一人が効果的に避難できるように支援することを目指す。その一環として国が2019年6月に導入したのが、避難のタイミングをわかりやすく示すための「大雨警戒レベル」だ。
「大雨警戒レベル」は5段階あり、最も高いレベル5は、すでに災害が発生し「命の危険」を示す状況。レベル4は、危険なエリアにいる人は「全員避難」するよう求める状況で、市町村が出す「避難指示」「避難勧告」が対応している。高齢者や幼児など、避難に時間がかかる人は、レベル3の「避難準備・高齢者等避難開始」の情報が出た段階で避難することが求められている。
最も重要なことは、レベル5の災害発生を待たず、レベル4のうちに避難をすることだ。「レベル」の考え方が浸透するにつれ、「テレビで警戒レベル4と言っていたから避難した」といった声も聞かれるようになった。
一方で混乱もみられた。一番多かったのが「避難指示」と「避難勧告」が同じレベル4に位置づけられたこと。この2つの情報の違いがわかりにくいという指摘が、情報を出す側の市町村の防災担当者や、情報を受け取る住民側から相次いだ。このため新潟県三条市のように、国の政策に反して、大雨警戒レベルの導入を見送った自治体もあった。
日本テレビでは、大雨警戒レベルの導入に伴い、より危険な状況を伝える「避難指示」は「ただちに避難を!」、一方で「避難勧告」は「すみやかに避難を!」と呼びかけの“切迫度”を変えたが、この程度で違いがわかってもらえたのか、そして住民の避難行動に十分役立ったのか、手応えはつかめていない。
初年度の“出水期”を終え、国は、2019年12月、避難に関する検討会を立ち上げ、議論を開始した。将来的に「避難指示」と「避難勧告」を1本化することも視野に入れている。
避難に関する情報は、複数の機関から多様な形で出される。「どれが重要なのか、わかりにくい」という住民側の不満は強い。
「避難指示」「避難勧告」「避難準備・高齢者等避難開始」という情報が出たから逃げよう、というよりも、「警戒レベル4になったから逃げよう!」「警戒レベル3になったら避難の準備をしなければ!」と、住民が数字を聞いて直感的に避難行動を取れるようになることが望ましい。防災情報の仕組みを根本から見直し、一元化すことが求められている。