希望持てない日本の若者 その打開策とは
世の中で議論を呼んでいる話題について、ゲストに意見をうかがう「opinions」。今回のテーマは「日本の18歳 希望ない!?」。「起業家」と「投資家」2つの顔をもつ、アルファドライブ代表の麻生要一氏に話を聞いた。
日本財団が中国やインド・アメリカなど世界9か国で、若者を対象に実施した「18歳意識調査」。自分の国の将来について「良くなる」と答えた日本の若者は、わずか9.6%。
さらに「自分で国や社会を変えられると思うか」という問いに関しても「変えられると思う」と答えたのは、日本は18.3%でいずれも9か国中、最下位となりました。
ネット上では、
「夢は挫折に終わることが多い」
「早く日本から海外にいくべき」
「日本の若者は達観している」
などの声がありました。この話題について麻生さんのご意見をうかがいます。
――まずはフリップをお願いします。
「大人が挑戦を」と書きました。
この調査結果、本当にゆゆしいと思っていまして、すごく残念です。ただこれは、若者の意識の調査なので若者の問題というふうに捉えられがちですが、本当は若者の問題じゃないと思っていまして、若者が希望を見いだせていないのは、希望を持っていないような働き方をしてしまっている大人のせい、大人が背中を見せられていないからだと思っています。
――まさに今社会で働いている人たち、ということなのでしょうか。
はい、まさに我々だと思うんですが、我々がちゃんと今社会を背負っている現役世代として、希望を見いだせるような挑戦が日々できているような働き方ができているのか、それを若者に見せられているのか、というところが非常にグサッとくるような調査結果だと思います。
――子供を通じて鏡を見ているような感じなんでしょうね。それに対してどのような打開策があると考えられますか。
僕は企業内新規事業を推進するという会社をやっているのですが、一人一人の企業の中で働く大人が過去の成功事例にとらわれず、新しいことをどんどん仕掛けてこの国を良くしていくんだ、という活動を一人一人から生み出していくということが非常に重要だと思っています。
――過去の事例にとらわれない新しいもの、日本を変えるために何かをするということなのでしょうか。
日本は、この調査結果なんかもそうですが、未曽有(みぞう)の人口減少や少子高齢化で将来が暗いというふうに言われます。でもそれは、一見暗いんですが、世界に例を見ないような課題があふれているから、世界に例を見ないようなイノベーションが生まれる土壌だというふうに捉えられると思います。例えば限界集落みたいなところで破綻していく行政組織をどうやって少ない人数で回していくのか。機械とかAIみたいなものを使いながら、全く新しい社会システムを作るみたいなことも、例えば日本を起点としてグローバルスタンダードが作れるかもしれない。そういうようなポジティブな捉え方をして大人が日々挑戦をして仕掛けられるかどうか。そういう働き方を我々ができるかどうかということなのかなと思います。
――具体的に麻生さんが今やられているプロジェクトにはどんなものがありますか。
まさに僕がやっているアルファドライブという会社で昨年、高知県の土佐町という小さな温泉の町にアルファドライブ高知という会社を本社登記して、子会社を設立しました。そこは約4000人の町で、町役場は60人程度しかいない本当に小さい町なのですが、小さいからこそできる動かし方、行政改革も教育改革も産業振興もひっくるめて、町を元気にするような取り組みの中から新しい社会システムを作ろうという取り組みを昨年始めました。
――具体的にはそこでどのような発見があり、働き方に関してどのような新しい光が生まれましたか。
僕がアルファドライブ高知という子会社で昨年やったのは、高知県内の中小企業の皆さんと一緒に新規事業開発をやりました。いわゆる中小企業の皆さん、12チーム集まっていただいて新規事業が作れるのかということを、本当に「全く新しい事業なんて作ったことがないです」とおっしゃっているような事業者の皆さんと一緒に、半年から1年ぐらいのプログラムを一緒にやらせていただきました。そこで僕も驚いたのですが、新商品が生まれました。
――やっぱり地方はどんどん高齢化という課題もありますけれども、そこからまた新たなプロジェクトがどんどん生まれるわけですね。
僕もやってみてすごい発見だったんですが、例えば大企業の中で新しい商品を作ろうと思ったら、新しい商品ができそうだ、となってから販売開始するまで何年もかかってしまう。一方で、地域の中小企業だったらできたと思ってから販売開始まですぐできたりする。もう新商品を売り始めちゃっている、プログラムに参加した事業者さんもいます。すごいスピードの事業展開でした。
一見すると地域の中小企業は大企業に比較して力がないと思われがちですが、地域の中小企業ならではの予算もしくは動きの速さという強みもあって、そういうものを生かしながら、ネガティブなポイントをポジティブと捉えて、どれだけ挑戦が仕掛けられるかということではないかと思いました。
■麻生要一氏プロフィル
アルファドライブ代表。リクルートで1500を超える新規事業の立ち上げに携わり、2018年に独立。企業内の新規事業を支援する会社と医療レベルのゲノム・DNAを解析する会社の2つを同時に立ち上げました。さらに起業家を支援するベンチャーキャピタルの運営にも参画。サラリーマンを「社内起業家」へと覚醒させ、日本の企業が新規事業を開発する力を備えることで、新たなイノベーションが生まれる社会を目指している。
【the SOCIAL opinionsより】