悲劇繰り返さぬため噴火予知する“火山屋”
自らを“火山屋”と呼ぶ男。日本を代表する火山学者・井口正人教授。
井口教授「小さい噴火、噴火、噴火、噴火、噴火」「また爆発ですよ。そんな時間かからない」「(Q:そんなことまでわかるんですか?)わかるよ!!その程度は」
噴火を予知するため桜島から、かたときも目を離しません。月に一度、必ず桜島に登ります。
井口教授「桜島を見てると向かっていく気持ちになれる」
火口から2キロのポイント。ここに設置したのは、地震計とGPS。この地震計が、火山屋の耳。波形のわずかな動きから、桜島の変化を読みとります。研究室に戻ると、60秒ごとに送られてくる火口の温度をチェック。
井口教授「命に関わる問題だから。こういうもの(データ)を見ておけば、活動の方向性というのがだんだん見えてくるから」
大正の時代58人の犠牲者を出した桜島。二度と悲劇を繰り返さないために…。その使命感が、井口教授を奮い立たせます。
井口教授「アドレナリンが噴き出すような感覚にとらわれることはある。自分の持っているモノを全部フル回転させるような状態になる」
急な電話。話は1時間以上続きました。
井口教授「熊本の陸上自衛隊」「(Q:そういう所から問い合わせが来るんですか?)来るよ、そりゃ!!そんなもん。当然じゃないですか」
時には海外でも、火山を監視。インドネシアは、火山災害による犠牲者が世界一多い国。この日は標高2460メートルのシナブン火山に。登山部で鍛えた足腰。軽快な足取りで斜面を登ります。シナブン火山の6か所に井口教授の“耳”、地震計を設置しました。
井口教授「(Q:桜島に何か今後の活動に生かせることがあるのかなと正直ちょっと疑問に…)いい質問だよ!いい質問だよ!!今までの経験則だけでいかなくなってしまう可能性がある。そういう時に必ず噴火予知というのは失敗しているわけですよ。桜島のことをやるのに桜島のことだけ調べとったらわからないっちゅーわけですよ」
未来の“火山屋”を育てるため、後進の教育にも力を注ぎます。
井口教授「俺はあんまりあの学術的な講義はやらねーから。あっ、そんなこと言っちゃいけねんだ」
火山災害の恐ろしさと噴火予知の必要性を知って欲しい。それが、切なる願い。火山屋はきょうも、桜島との会話を続けています。
※2011年2月、鹿児島読売テレビで制作したものをリメイク
【the SOCIAL×NNNドキュメントより】