元客室乗務員がバレエダンサーに転身 “遅咲きの新人”夢の舞台へ
この秋、28歳のバレエダンサーが夢の舞台に立ちました。彼女は去年、コロナ禍をきっかけに航空業界から転身した遅咲きの新人でした。
今年9月。開場25周年を迎えた東京・新国立劇場では、シーズンの幕開けを飾る注目のバレエ「ジゼル」の準備が始まっていました。
この日、稽古に励んでいたのは、根岸祐衣さん(28)。プロになってわずか2年目のダンサーです。
実は根岸さん、たった1年前までは、世界中を飛び回っていた大手航空会社の客室乗務員でした。そんな彼女が、なぜ異例の転身を遂げたのでしょうか?
18歳のとき、世界的ダンサーを多く輩出する「ローザンヌ国際バレエコンクール」のセミファイナルに進出。プロを目指し、海外へバレエ留学しました。しかし…。
根岸祐衣さん「甘くはない世界なので、頑張れない自分がいて。バレエダンサーは無理だなって」
留学から2年、プロの道を断念。帰国して短期大学へ進学し、就職しました。バレエは、あくまでも趣味の世界に。
こうした中、転機となったのは、新型コロナの世界的な感染拡大でした。フライトのない日々が続き、バレエ教室に通う時間が増え…。根岸さんはある一大決心をします。
根岸祐衣さん「人生1回しかないですし、本当にやりたいことやれないと損だと思う」
去年、数百人が受けるオーディションを見事突破。国内最高峰「新国立劇場バレエ団」の一員となりました。10歳ほど年下の同期もいる中、遅咲きの新人プロダンサーとしての道を歩み始めます。
根岸祐衣さん「(年齢的に)遅いっていうのは分かっていたから。だから不安要素全てあげ始めたらきりがなかったんですけど」
バレエ団の練習を終え、向かったのは、ピラティスのスタジオ。長年のブランクを埋めるためには、体のケアにも人一倍、気をつかいます。
こうした努力が実を結びました。この秋注目の公演で、物語の鍵を握る重要なキャストに抜てきされたのです。
根岸祐衣さん「(衣装を着て)ウエディングドレスみたいな感じでうれしいです」
大舞台で求められるのは、高い演技力。連日、厳しい指導を受けます。
根岸祐衣さん「演技の部分と跳んだりしてない部分がこれからの課題になって、そこをどう詰めていくか」
本番まで2週間。休みの日も、ひとりで稽古場へ。動画に撮って何度も自分の踊りをチェックします。
本番当日。キャスト表には、大きく根岸さんの名前がありました。舞台袖に現れた根岸さん。緊張が伝わってきます。
根岸祐衣さん「本当にやりたいことだったら、諦めずにやっていったらチャンスだったり巡ってくるのかな」
課題となっていた演技も堂々と表現できました。
根岸祐衣さん「過去のこととかあまり思い出している暇もなく。(一度バレエをやめるとき)すごくつらかったので、自分が頑張れないって思って。そういう日々を経て今があるっていうのは、本当に周りの人たちにすごく感謝です」