コスト「100円」増でも値上げ「44円」しか――中小企業“価格転嫁”進まぬワケ 給料も上がらず…“負の連鎖”断つには?
多くの商品やサービスに値上げの波が押し寄せていますが、中小企業などはコスト上昇分を十分に価格転嫁できていない現状があります。値上げできないと給料アップや消費促進にも影響しますが、価格転嫁できない背景には2つの大きな課題が横たわっています。
■15.3%の企業「全く転嫁できず」
有働由美子キャスター
「値上げラッシュが続く中、『44.3%』という数字に注目したいと思います。帝国データバンクが8日公表した、企業が価格転嫁をどのくらいできているかを示したものです」
「原材料費などのコストが100円上がったとしても、約44円しか値上げできていないことになります。つまり、半分以上は企業が負担していることになります」
小栗泉・日本テレビ解説委員
「帝国データバンクによる1635社の中小企業などへの調査結果では、『コスト上昇分を全く価格に転嫁できていない』企業が15.3%あることが分かりました」
有働キャスター
「消費者からすると安い方がありがたいですが、企業にとっては大変です」
■中小企業を悩ませる「2つの課題」
小栗委員
「経済評論家の加谷珪一さんによると、本体きちんと価格転嫁できていれば企業の利益が上がり、従業員の給料も増え、消費をさらに促進することができます。つまり、価格転嫁できないということは、私たちの給料も上がらないということです」
有働キャスター
「なぜ価格転嫁できないのでしょうか?」
小栗委員
「加谷さんによると、今の日本には2つの大きな課題があります。1つがデフレマインドです。日本は、少しでも高くなると買い控えしてしまうというマインドが浸透しています。もう1つは、大企業に下請けの中小企業が逆らえないという構図です」
「実際に中小企業からは『受注時での価格競争が激しい』(電気機器製造業)、『代わりの運送会社はいくらでもいると言われ、価格転嫁してもらえない』(貨物自動車運送業)など、切実な声が上がっています」
■経済評論家「まずは賃上げを」
有働キャスター
「何とかしたいですが、どうすればいいのでしょうか?」
小栗委員
「加谷さんによると、この負の連鎖を断ち切るには、企業はまずは思い切って賃上げに踏み切ることが大事です。そして『いいものを安く』という考えから、『いいものは適正な価格で』というビジネスモデル自体に転換する必要があると言います」
有働キャスター
「価格転嫁が進まない現状をどう考えますか?」
辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「例えばアパレル業界でも、今はいいビンテージがなかなか日本に入ってこなくなりつつあるようで、日本だと高価格帯でいい品質のものが売れなくなってきているからではないか、とバイヤーから聞いたことがあります」
「どの業界でも起こりつつあるのかなと感じます。給料アップも大事ですし、同時に終身雇用や年功序列の文化も変えていく必要があると思います。ただ一企業だけではなかなか限界もあるので、まずは政治からのアプローチが何よりも大事ではないかなと思います」
有働キャスター
「これはずっと『どうにかしないと』と言われてきたことです。それを新しい発想で示してくれるのが(岸田首相の)『新しい資本主義』かと思ってはいましたが、その新しさが何なのかは、ちょっとよく分かりませんでした」
(6月8日『news zero』より)