新型コロナで「魚余り」漁師らが取り組み
飲食店の休業や消費者の自粛が続いた影響で、魚などの水産物が売れず、余る事態が起きています。そんな中、自治体と漁師らがタッグを組み、ユニークな方法で消費拡大につなげようとする取り組みが各地で広がっています。
■魚が安くなっている
東京・銀座にある寿司店。大将自らが客の「目の前」で握る寿司。看板の品は、熟成肉に国産ウニをたっぷりのせあぶった創作寿司や、静岡県産金目鯛の握りなど。大将自らが仕入れたその日のおすすめのネタを握ってもらえます。
6月1日から時間を短縮して営業を再開しましたが、客足は思うように戻らぬまま。店主の税所伸彦さんは「今の予約のペースで(売り上げは)前年比30%くらい行けばいいぐらい」と、肩を落とします。
また、再開後に感じているのが、市場に魚が余って安くなっている現状です。
税所伸彦さん「(魚の)値段が通常に比べるとだいぶさがっている状態。(飲食店や旅館などが)ほとんど休業状態なので、結局魚の行き先がない」
東京・築地の鮮魚店でも聞いてみると。斉藤水産の斉藤又雄社長は「例年ですとこのイワシは一尾300円から350円ぐらいしているけど、入荷量も多いので安くなっている」と話します。
「入梅イワシ」ともよばれる旬のイワシが例年より2割安くなっているなど、やはりほとんどの魚が値下がりしていました。
斉藤社長「先月あたりからは原油も下がってきているので、その分漁師も漁にとりにいけると。行った以上は量的にとってくると。入荷量も多いんです」
■魚のために「一肌脱ぐ」
この「魚余り」の状況を打開するきっかけになるかもしれない、ユニークな取り組みが各地で広がっています。
カメラマンにのせられ、肉体美を見せる男性。現役の漁師たちです。
実は青森県では、水産物の知名度アップと消費拡大を目的に、県の職員が「漁師カード」を発案。1枚1枚手作りしているのです。
ホヤをもってニッコリしたり、冬の漁港でサメを持ったり。どれもユニークな写真ぞろい。県のPRイベントなどで無料で配布したところ、大好評だったといいます。
モデルをつとめた漁師は「PRをするために、一肌脱がなきゃだめなのかなと、苦渋の決断。この寒いときに。一番アブラののっているこの体で…」と話します。
県は今後も「漁師カード」の配布を続ける予定で、消費拡大につなげたいとしています。
■20億円分のカンパチが廃棄の危機に
一方、高知県須崎市では、大量のカンパチがいけすの中に。料亭や旅館の休業などで出荷できなくなったカンパチです。その数およそ20万匹。金額で20億円分だといいます。
通常の7割ほどの価格でネット通販をはじめましたが、すべて売り切るのは難しく、いずれ廃棄になってしまうものも。そこで、市と連携し「#20万匹の名無しのかんぱちに名前を」プロジェクトを始めました。
名無しのカンパチに名前をつけてもらうことで、ブランド力をアップし、消費喚起につなげる狙いがあるといいます。
野見漁業組合 西山慶組合長「いろんな意見を出してやってもらっているので、これを機に野見湾のカンパチを知ってもらうことができれば」
現在SNSには約700件の投稿が寄せられ、「かんぱち龍馬」という高知ゆかりの名前や「かんぱち鮮生(せんせい)」など、「先生」とかけたダジャレのような名前も。
見事名前が採用された人には、カンパチまるまる1匹が送られるということです。
2020年6月11日放送 news every.より