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『近所の犬の鳴き声に困った どうすれば』在宅ワーク中に吠え続けられ、仕事に支障

2023年12月27日 11:00
『近所の犬の鳴き声に困った どうすれば』在宅ワーク中に吠え続けられ、仕事に支障

今月、日本テレビの情報提供サイトに、騒音計を記録した動画とともにこんな投稿が。「近所の犬がうるさくて困っています。役所や警察に相談しても改善されません」。動画には絶え間なく吠える犬の声。騒音計の数値は、セミの鳴き声にも例えられる70デシベルを時折超えています。

在宅ワークが定着しつつある今、近所の犬が吠える音に悩む人が増えているともみられます。そんな時、いったいどうすれば。
(報道局 調査報道班)

■在宅ワーク中に30分以上も

横浜市の住宅街のマンションに住むゲームプログラマーの50代の男性。8年前に入居しましたが、コロナ禍の2021年から在宅ワークに。すると近くの戸建ての家で飼われている犬の鳴き声に悩まされ始めました。

家の庭で外飼いされているのは1頭の中型犬です。男性によると、家の前を人が通ると吠え、飼い主が止めに入ることもあるものの、飼い主が外出中だと30分以上吠え続けていることもあるといいます。

「その犬はずいぶん前からいたんですが、在宅になってうるさいのに気づいたんです。仕事で集中したい時にずっと鳴かれると本当に妨げられるんです。オンライン会議中にも響いてきますから。気分が悪くなります」

男性が収録した鳴き声を聞かせてもらいました。牧羊犬のようなやや高めのよく通る声で「ワンッワンッ…ワンッワンッ」と吠え続けています。男性はこのために騒音計を買い、音の大きさを測っていました。20メートルほど離れた場所で最大70デシベルを示しています。

「飼い主に苦情を伝えに行ったこともあるんですが、申し訳ないの一言もなく、犬が吠えるのは当然じゃないかといった態度で…」

記者が現場を訪ねた際には犬は鳴いておらず、様子もわかりませんでした。以前に通報を受けて訪問した自治体職員のアドバイスもあり、飼い主は、犬小屋から家の前の人通りが見えないよう向きを変えるなどの対応を取ったといいます。

■「夜起きた」「飼い主に言いづらい」

環境省が公表している音の大きさの目安によると、犬の鳴き声は90~100デシベルで、ピアノ(80~90)、掃除機(60~76)より大きくなっています。

東京都で区などに寄せられた動物の鳴き声についての苦情は、2019年に年間900件以上にのぼっています。また10年前に大阪府が行った「生活騒音の中でどのような音が気になるか?」というアンケートでは、30%近くが「犬などのペットの鳴き声」と回答し、「自動車・バイクの空ぶかし音」に次いで2位でした。

今、SNSにも、近所の犬の鳴き声に悩んでいるとの書き込みが多く見られます。

「向かいの家の犬がずっと吠えてるから起きたわ。2匹のうち1匹だけ、うるさい犬を外飼いにしているようだ」
「犬は室内で飼ってほしい。犬好きな私が思うぐらいだから犬嫌いな人は耐えられないと思う」

外飼いで鳴き声が響くケースが多いようです。そして…。

「犬が吠え通しで、在宅してる身としてはなんとかならないかと思う」

在宅ワークをしていて気になる人も。さらに…。

「どこに相談したらいいんだ? 直接会わない方がいいんだよね…」

飼い主に直接苦情を言いづらい心情もあるようです。

■「10分吠え続ければ違反」な国も

欧米では過度に犬が吠える音を「騒音」だとして法律や条例で規制する傾向にあります。

騒音の規制に厳しいドイツの法律では、昼過ぎや夜間に「静けさを保つべき時間帯」が設けられ、無許可で騒音を立てることは処罰の対象になります。土日祝日は終日、平日も「午後10時から午前6時まで」と「午後1時から3時まで」は「静かな時間帯」で、この間に近隣に響く音で犬を10分以上吠えさせるのは違反とされています。さらに10分未満だとしても、頻繁に犬が吠え続け、それが1日のうちに計30分を超えると違反になります。

これは犬に規制をかけているのではなく、犬の飼い主への規制です。背景には、犬が吠え続けるのは病気や虐待など何らかの異常のシグナルであり、飼い主はそれを放置してはならないとの考えがあるといいます。

日本の騒音規制法は、主に事業者を対象に音を規制する法律で、隣人などとの騒音問題を解決することはできません。また環境省は騒音に関わる環境基準を示し、人の健康のためには、一般的な住宅地域で昼間は55デシベル以下、夜間は45デシベル以下の音の大きさが望ましいとしています。犬の鳴き声も対象です。でも超えても罰則はありません。

では、鳴き声に困ったら誰に相談すればいいのでしょうか。

動物愛護管理法では迷惑な飼い主に対する指導、勧告などの権限を各自治体に与えています。これを受けて各市区町村が犬などの鳴き声の苦情や相談を受け付けて対応しています。

神奈川県相模原市の生活衛生課では昨年度67件の鳴き声相談に対応したといいます。担当者は…。

「通報があったら、複数の職員が直接訪問して苦情があることを伝え、実際にどうなのかを確認します」
「飼い主自身も困っているケースもあります。問題があれば、何がきっかけで鳴くのか、車が通るからか、散歩に行く機会が少なくストレスがたまっているからかなど、原因を見つけ出して一緒に解決策を考えます」

一方で、東京都の区の担当者は対応の難しさをこう話します。

「同じ鳴き声でもうるさいと感じるかどうかは人によって違います。多頭飼育が崩壊しているようなケースだとこちらも介入できますが、鳴き声だけでは飼い主に強くは出られず助言する形になります。実際にこれまで勧告など強制措置を行ったことはありません」

■手紙で伝える手も

一方で、虎ノ門桜法律事務所の伊澤大輔弁護士は、まずは飼い主に直接上手に伝えることだ話します。

「困っていることを高圧的にならないよう率直に伝えることです。騒音を野放しにしている飼い主の場合、まわりの迷惑に関心がない場合もあり、対応してくれないことも想定する必要はあります。恐れずに話ができるかどうかです」
「初対面ということもあるでしょう。会って話すのが心理的に難しければ、手紙を書いてポストに投函するのがいいでしょう。こういう時に鳴いているようだといった具体的な内容を伝え、改善策を示唆するのがいいでしょう」

集合住宅などでは、管理会社や大家さん相談するのも有効な方法だといいます。

でも改善されないケースも…。

「最初は対応すると言っていても時間がたつと繰り返され、やがて飼い主が開き直るケースは多いです。被害にあっている方も感情的になり、関係が悪化していくこともあります」

そうならないよう、最初に飼い主側に率直にこちらの思いを伝えられるかどうかがカギになりそうです。


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