シカが全国各地で増加 農業や森林への被害深刻に…
14日朝、北海道札幌市の住宅街に野生のシカ2頭が現れ、あたりは一時騒然となりました。実はいま、全国各地でシカの生息数が増えていて、農業被害などが深刻になっています。
◇
警察が出動し、通学中の小学生が足を止めてみていた先には、1頭のシカの姿がありました。住宅に植えられた野菜を食べたり、横になったりと周りを気にする様子はありませんでした。さらに、近くでも別のシカの姿が見られました。
14日朝、北海道・札幌市で2頭のシカが出没し、住宅街が一時、騒然となりました。
近所の住民
「はじめて」
近所の住民
「シカはめずらしいわ。最近、クマとかヘビとかはいるけど」
このあたりに出没するのは、珍しいといいます。
◇
実はいま、全国各地でシカの生息数が増えているのです。環境省が推定した、北海道を除いた全国のニホンジカの推定個体数(中央値)は、1989年度に25万頭でしたが、2020年度には218万頭にまで激増しています。ピーク時からは減少しているものの、積雪量の減少で冬でも生息しやすくなったことや、えさ場となる放棄された畑の増加などが要因となり、この30年あまりで約9倍にまで増えたとみられるのです。
◇
広島県でも、暗闇の中で光る目を住宅街でみつけました。公園で、親子とみられる3頭のシカが草を食べていました。
上大毛寺町内会 横田公荘会長
「ここ2~3年、倍増・激増です」
広島県によると、広島県内のシカの推定個体数は、2020年までの20年ほどの間に、4倍以上に増えているといいます。
そのため、家庭菜園のトマトやキュウリ、花などが根こそぎ食べられる被害が出ているといいます。
横田会長
「トマトも食われているの、わかります?」
こうした状況に町では先月、初めてシカ用のワナを設置しました。すると、1週間で2頭捕獲したといいます。
横田会長
「『捕まえるのがかわいそう』という考え方があります。一方で、高齢者の世帯が多いので『怖い、困る』と」
農業への被害も深刻です。広島県によると、2021年度のシカによる農作物への被害額は4773万円でした。2020年度の5299万円に比べ減少しましたが、近年は高止まりの状態が続いているといいます。
こうしたシカなどによる被害を減らすため、安芸高田市では一部の地域で対策を実施しました。モデル地区として、水田の周りをすべて柵で囲う対策などがとられ、効果が検証されれば他の地域へ拡大するということです。
◇
関東でも対策がとられていました。
群馬県の赤城山の山林では、木材に使われる苗木を守るため、あたり一帯をネット状の柵で覆っていました。
しかし、中にはネットの上に木が倒れてしまい、柵が低くなっている所もありました。
群馬県林業試験場 山田勝也主任
「ここの(ネットが)下がってしまって、低くなった部分というのが、シカをはじめ獣の出入り口になってしまって」
群馬県によると、2020年度の森林被害額、約2億3300万円のうち、約1億3600万円(約6割)がシカによる被害だといいます。苗木や木の皮が食べられてしまう食害や、ツノで木をこするなどして、木材として使用できなくなるものもあるといいます。
こうした状況に、県の林業試験場は新たな防護柵を開発しました。
山田主任
「こちらが単木柵という、金網を丸めて苗木にかぶせたものになります」
苗木一つ一つを柵で囲うことで、シカなどの食害を防ぐことができるといいます。林業試験場では、3年ほどかけて効果を検証するということです。