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被災地に届けたい!「ユニホームの縁」で宇都宮の高校吹奏楽部がチャリティーコンサートを開催

2024年2月3日 19:30
被災地に届けたい!「ユニホームの縁」で宇都宮の高校吹奏楽部がチャリティーコンサートを開催
今月3日・栃木県庁
栃木県宇都宮市にある私立校、作新学院高等学校の吹奏楽部などの生徒らが3日、能登半島地震の被災地を応援したいと、栃木県庁でチャリティーコンサートを開催した。そこには2010年、統合により閉校した石川県立珠洲実業高校吹奏楽部とのユニホームを巡る「縁」があった。
部員たちの「届けたい」という思い。手助けできればと、筆者も会場へ足を運んだ。

■「ユニホーム」がつないだ珠洲市との「縁」

作新学院高等学校は生徒数がおよそ3500人。ほかに幼稚園や小学部、中等部もある総合学園だ。野球部は春夏の甲子園の常連校で、今年の春の選抜高校野球大会にも出場を決めている。一方の珠洲実業は2010年、隣接する高校との統合により閉校した。吹奏楽部はマーチングバンド北陸大会で何度も金賞を受賞し、全国大会でも銀賞に輝くなど、石川県でも屈指の強豪校だったという。閉校後、晴れ舞台に出ることがなくなったユニホームは10年近く倉庫に保管されたまま、処分される時が近付いていた。困った同校の元顧問・喜多忠男さんが相談したのは、石川県マーチングバンド協会理事長・山田正俊さんだった。その結果、2019年、生徒たちの思いが詰まったユニホームは栃木県の作新学院高に寄贈されることとなった。相談を受けた山田理事長は、実はその年の春まで24年間、作新吹奏楽部でマーチングドリルの指導に携わっていたのだった。

■様々な場面で着用のユニホーム、去年は「里帰り」も

遠く離れた栃木県に渡ったユニホーム。作新学院吹奏楽部の部員たちが袖を通し初めて立った舞台は、翌2020年11月の同部の定期演奏会だった。その後も年2回の定期演奏会やイベントに呼ばれた際の演奏、そして野球部の応援で甲子園のアルプススタンドでも、作新学院の吹奏楽部員が珠洲実業のユニホームを着て演奏した。去年の11月には石川県で開催されたマーチングバンドの演奏会に出場、前日には「故郷」珠洲市での特別公演が実現した。「ユニホームの里帰り」に会場は大きな盛り上がりをみせたという。もともとこのユニホームは、珠洲実業が海外の演奏会に出場する際、地元の方々の寄付で作られたものだという。きっとこの「ユニホームの里帰り」は、珠洲市の人々の心に温かいものを残したに違いなかった。

しかし…

そのひと月と少し後、石川県は強い揺れに襲われた。

■北陸を襲った激震、「今できることをやろう」

「震災直後は喜多さんの安否が確認できず、心配でした。」そう語った作新学院吹奏楽部の顧問・三橋英之さんは、その後、喜多さんの無事が確認でき安堵したという。同校の「地球環境クラブ」は災害が発生したときに被災地へ支援物資や義援金を送る活動をしていて、ウクライナなどへの支援も行っている。今回の震災でも、すでに支援物資や義援金を送っているという。「今すぐにでも行きたい」、「まだ現地入りできる状況じゃない」…吹奏楽部の部員たちは顧問や学校と相談した。「今できることをしよう。」と、地球環境クラブや野球部、生徒会、そしてチアリーディング部などと共に、募金活動と併せて、このユニホームを着てのコンサート開催を決めた。

■「町も人も温かい。その温かいものがすべて壊れた」

3日午前、会場となった栃木県庁のエントランスには、保護者はもちろん、子ども連れの人やお年寄りまで500人を超える人たちが集まっていた。同校の幼稚園や小学部の児童、中等部の生徒が会場の人たちに募金を呼び掛け、地球環境クラブの生徒が募金箱を持って会場を回った。そして、吹奏楽部が「珠洲実業」のユニホーム姿で演奏を始めると、会場は大きな拍手の渦に包まれた。珠洲の日の出をイメージしたという真っ赤な生地。右肩から斜めに金色の帯があしらわれたユニホームに黒のスラックス。珠洲実業の思いをまとった部員たちの演奏は坂本九さんの「上を向いて歩こう」で始まった。この曲の歌詞には「涙がこぼれないように」とある。被災された方々に届いて欲しいと願っての演奏。続いては童謡「ふるさと」。「自分たちのふるさとはとっても大切な場所で心のよりどころ、心を込めて演奏できた。」と顧問の三橋さんは振り返る。中島みゆきさんの「糸」や、去年5月に能登地方を襲った地震(珠洲市で震度6強など)の後に作られたという珠洲復興応援歌「HOME」が、復興への思いを乗せて力強く演奏された。コンサートの最後は、チアリーディング部や応援部なども加わり、総勢120人あまりでマーチングドリル(舞台上で演奏しながら様々な形を見せる)を披露した。

今後も折に触れ、支援活動をしていきたいという作新学院高校吹奏楽部・部長の宮田心春さんは「珠洲の皆様に直接お会いして、演奏見ていただけるのが一番。またそういう日が実現するのを、わたし達は待っています。」と笑顔で話した。「このユニホームを着て?」との問い掛けに、宮田部長は「もちろんです!絶対これで行きます!」と力強く答えてくれた。

この日集められた寄付金は全額被災地に送られる。

(宇都宮支局 清水彰)

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